表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

422/493

416

 お弁当のようなものを作るのは、それこそ前世ぶりで、なんだか楽しくなってしまい、あれもこれも、なんてフィジャとはしゃぎながら作っていたら凄い量になってしまった。

 ウィルフは体格がいいし、食べる方だけど、それでもこれ、食べ切れるのかな。


 フィジャもやりすぎたかな、とでも言いたげな表情で、「まあ、なんとか食べるでしょ」と言っていた。大丈夫、と言わないあたり、本当に多く作りすぎてしまったのが分かる。


 重いお弁当を持って、わたしたちは民間警護団の支所に来ていた。外からは前に一度見たことがあるけれど、中に入るのは初めてである。

 小綺麗で、イエリオの研究所の入口と似たような造りになっているのに、雰囲気は冒険者ギルドに似たものを感じる。努めている人が元冒険者ばかりだと、やっぱり備品の配置とかが、冒険者ギルドに寄って行くものなんだろうか?


 入口でウィルフにお弁当を届けに来たことを伝えると、受付の人は驚いたような表情を見せた。

 話が通ってなかったのかな、と、不思議に思っていたのが表情に出ていたらしい。「多分、ボク一人しか話が行ってないんじゃない」と小声でフィジャが教えてくれた。


 確かに、今朝、急にわたしも一緒に行くことになったしなあ。元々、フィジャだけに頼んでいたようだし、ウィルフも、そのつもりで受付に言っていたのかもしれない。


「ええと……こちらを。許可証は一つしかないので、必ず一緒に行動してくださいね」


 そう言って、受付の人が入館証を渡してくれる。イエリオの研究所でも渡される、首からぶら下げる紐がついているタイプの奴だ。

 やっぱり、フィジャだけがくるものだと思われていたらしい。でも、断られないってことは、わたしも行っても大丈夫、ということだろう。


 とりあえず、はぐれないように注意しないと。場所が場所だし、不審者だと思われたら一瞬で捕まりそう。それはウィルフに凄い迷惑がかかりそうなので、気を付けないと。


「今の時間だと、訓練場にいると思うので、そちらへどうぞ。その廊下をまっすぐ行って、突き当りを右に曲がってずっと行けば訓練場が見えてきます」


 まあ、流石にこのくらいは迷子にならないか、と思いながらも、わたしはフィジャに手を伸ばす。

 はぐれないように、と裾を掴もうとして、ちょっと迷って指先を握った。


「ま、迷子にならないように……」


「マレーゼ、方向音痴だもんねえ」


 あ、フィジャのこの表情、本当に迷子防止の為に手を繋いだと思ってる。スキンシップ好きで、よくしてくるくせに、こういうところ、少しだけ変に鈍感だよな、なんて思いながら、わたしはフィジャと手を繋いで歩いた。

 方向音痴じゃない、と反論出来ないのが、また辛いところである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ