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転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第六部

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 わたしがびっくりしていると、そのまま腕を引っ張られる。急なことに、されるがままだ。イナリに抱き寄せられる。

 さっきまで開いていた距離は、なくなってしまった。


 どくどくと、部屋中に響いているんじゃないかと錯覚するほど早く動く心臓は、わたしのものなのか、イナリのものなのか、分からない。――いや、両方なのかも。


「スキンシップは僕の勝ち?」


 声音は少しいたずらっぽいのに、見上げて見える、イナリの顔は真っ赤だった。なんだか、すごく見てはいけないものを見ている気がする。


「――……ありがとう、マレーゼ」


 イナリが、ささやくように言う。

 今のわたしは、人間のように側頭部に耳がついていなくて、頭の方にあるから、そのささやきが直に当たってこそばゆい。


「僕が、僕自身を許せる努力を怠らなかったら、いつかは、一緒にいて、愛し合うのが当たり前になってるのかな」


「当たり前になっても、ゴールじゃないからね」


 イナリが、自信をつけて、彼自身を許せるようになっても、わたしが、皆と当たり前に愛し合えるようになっても。それこそ、子供が出来て、孫も出来たりして、それだけ先の未来になっても、一緒にいたいと思うようになってしまったのだ。


 なら、誰にも取られぬよう、努力するのが当たり前なのである。


 もう少しくっついていたいという心地の中、イナリに寄りかかっていると、ぐうう、とわたしのお腹が鳴った。

 丁度二人とも話していないタイミングだったので、すごく、際立って聞こえた。

 雰囲気台無しである。


 確かに、今日は一日寝ていて、朝も昼も食べてないけど! だからって、このタイミングで鳴ることある!?

 イナリが笑いを堪えているのか、振動が伝わってくる。ひっついているから、余計に分かりやすい。


「だって――」


 ――くうぅ。

 わたしが言い訳をしようと口を開いたタイミングで、またわたしのお腹が鳴った。つい咄嗟に、お腹を押さえてしまった。


「……ふ、そうだよね、一日寝てたんでしょ」


 分かってるよ、と言いたげなイナリではあったが、明らかに笑っている。


「ご飯、ちゃんと食べなね」


 そう言いながら、イナリが立ち上がる。


「フィジャには元気そうだった、って伝えておくよ。一日眠っていたなら眠くないかもしれないけど、ちゃんと寝なよ」


「――……うん」


 行っちゃうのか、というさみしさがあるが、それはそれとして……お、お腹は空いた。

 わたしはイナリを見送って、一度、ベッドに横たわる。なんだか、ふわふわとしている気分だ。


 ドキドキしすぎて、緊張の糸が切れたんだろうか。

 のそのそと起き上がり、フィジャが用意してくれたのであろうパン粥を食べる。

 すっかり冷めきっているのに、すごく、甘い味がした。

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