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「な、なんでも……」


 ないよ、と、最後までは言えなかった。実際、なんでもなくないからである。

 今、話してしまうか、フィジャの言葉を守って、昼間にしきりなおすか。


 ……わたしが変われたきっかけは、大体、フィジャがきっかけだ。まあいっか、ってすぐに諦めないで努力するようになったのも、一妻多夫を本当の意味で認められるようになったのも。

 でも、いつまでもフィジャの言葉をただ丸のみにしているだけで、いいのだろうか。

 フィジャを信用しないわけじゃない。夜に話さない方がいい、っていう提案は、わたし自身納得している。


 でも、だからこそ、わたし自身でも判断しないと、ダメ、なんじゃないだろうか。少なくとも、フィジャだけに肩入れしているように見えてしまうんじゃないだろうか。わたしは全然そんなつもりはないのに。


 イナリだって、彼自身仕事が忙しくて大変なのに、わたしを看病してくれて、今、こうして心配もしてくれている。

 だからこそ、さっきまで体調不良で寝ていたわたしに、手を出すなんて、しないと思うのだ。


 フィジャだけじゃなくて、イナリも信じているのなら、きっと、話せるはず。


 ――……なんて、考えてはみたものの、話してもいいかどうかのタイミング、というものは確かに存在する。確かに、丁度二人きりで、話すのには丁度いいかもしれないが、別にそれだけが『タイミング』を構成するわけじゃない。

 フィジャは徹夜明けで、仮眠をとって仕事に行って、帰ってきたばかりなのである。普通に考えて、疲れ切っているに違いない。


「あ、あのさ、仕事、忙しいって言ってたけど、大丈夫なの?」


「ああ、少し予定が変わって、今日で終わり。明日は休みだし、明後日からまた元に戻るよ」


「そ、そうなんだ……お疲れ様……」


 ……なんだか、本当によさげなタイミングじゃない? わたしは翌日が休みだと、多少疲れていても頑張れるタイプだけど、イナリはどうなんだろう。


「じゃ、じゃあ、あの、明日、時間少し、もらえるかな。話が、あって……」


「話? それなら今聞くけど。どんな話?」


 イナリもわたしと似たようなタイプなのか、あっけらかんと言う。


 ……これは、本当に、今、言うチャンスなのだろう。

 わたしはごくりと唾を飲み込み、きゅっと自分の手を握りこんだ。

 大丈夫、言える。


 緊張をほぐすように、言葉がするっとでるように、唇を軽く舐め、口を開いた。


「か、覚悟が決まった話」


「覚悟? なんの――」


「イナリたちに、好きだって言う、覚悟」

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