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 フィジャってば愛されているなあ、と思いながら、わたしは、お客さんから注文を取っていた。


 ――今日はフィジャの店のプレオープン日。今月末まで、つまりは約二週間ほどはランチタイムのみの開店になり、来月から本格的なオープンとして、ランチもディナーもやるようになる。

 ちなみに、開店祝い、と、店の制服はイナリが用意してくれた。シンプルながらも可愛らしいデザインで、やっぱりイナリはセンスがいいなあ、と再確認させられる。


 わたしとフィジャが二人でやる店なので、広くはないが、代わりにすぐに店内を見渡せて、気配りが出来る。カウンター席が四つと、テーブル席が二つの、小さなお店だ。

 そんなお店だが、開店してすぐ、あっという間に席は埋まってしまった。どうやら、以前フィジャが勤めていたお店の常連さんや、仕事仲間の人が様子を見に来てくれたらしい。フィジャの結婚を喜んでいた、あの刈り上げと鱗がいい感じにマッチしているおじさんや、フィジャが以前勤めていたお店の店長など、わたしも知っている人がちらほらといた。――メルさんはいなかったけど。


 メルさんがいないことに少しだけ安堵したのは、フィジャに内緒である。もしかしたら、伝わってしまっているかもしれないけど。

 来てくれた人は皆、おめでとうと花束をフィジャに渡していた。フィジャ本人は人懐っこいというか、愛嬌のある性格をしているので、こう、先輩とか、年上の人に可愛がられやすいタイプなのかもしれない。

 来てくれている人は皆、年上の男性ばかりだし。


 楽しそうに会話をしながら料理をし、提供しているフィジャを見ると、こっちまで嬉しくなってくる。


「マレーゼ、これ、テーブル席の方にお願い」


「はぁい」


 フィジャに呼ばれ、わたしは出来上がった料理を運ぶ。飲食店で働いた経験はあまりないが、前世で少しだけバイトをしたことがあるので、全くできないわけでもない。慣れてないから緊張はするけど。


 慣れないながらも料理を運び、注文を取り、お客さんが食べ終えた皿を片付けて、テーブルを拭いたり会計をしたり……。

 せっせと働いていると、プレオープン期間中の営業時間なんてあっという間だった。


 客入りは上々。客席数があまりなく、営業時間も長くないとはいえ、ずっと店内に客がいた、ということを考えれば、初日にしては成功だろう。時折、外で待つお客さんもそれなりにいたことだし。

 楽しそうに皿洗いをするフィジャを見て、上手く行けばいいな、と思いながら、わたしも後片付けに戻るのだった。

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