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そもそも、わたしの生まれ自体がちょっと異質なのだ。この世界での父と母は、ハッキリ言ってしまえば、子供が出来ない、作れない体だった。
それでも、どうしても子供を諦められなくて、奇跡に縋ったのだ。
で、その結果、異世界の記憶を持ったわたしが誕生したのである。
そう考えると、子供が出来ない体質が遺伝しててもなんら不思議ではない。両親ともそうなのだから。別に確実に遺伝するわけじゃないだろうけど、確立で言ったら高いイメージがある。医療に詳しくないので、あくまでイメージだけど。詳しかったら、あんなに苦労してしろまるを産みださなかったし、しんどい思いをしてまで無理にしろまるに頼ることはない。
これはもう、本格的に『試す』しかないのでは……?
いや、でも、本当に早いって。確かに結婚してるけど。結婚しようという話が持ち上がって一年くらいは経過してるけど。
でも、彼らを意識し始めたのは、少なくともつい最近の話なので。どれだけ振り絞っても、そんなことを言って誘う勇気は出ない。流石にそこまでは出来ない。
今、こうして好意を伝えるだけで一杯いっぱいなのに。
そもそも、ウィルフとイナリに、まだ、わたしの想いと考えを伝えてないんだから。フェアじゃない。
全員に全て伝え終わってからじゃないと。
じっくり考えた結論としては、とりあえず、動物を獣人にした魔法の解析をしたい、というものだ。そして、同時進行で、ウィルフとイナリにも話をしたい。
全て終わっているころには、流石に試そうか、という話ができる……はず……多分、おそらく……。
でも、ここまで来て、自信がない、とか言っている場合じゃないのだ。
「イエリオ、獣人の起源の魔法について、なにか資料は残ってる? 獣人がどれだけ人間に近いか調べたいんだけど……」
研究書だったら、シーバイズ語で書かれていないとどうしようもないが、魔法陣さえ書いてあれば、なんとなくではあるが、効果等は分かる。文字が読めればもっと詳細に分かるけど、最低限は読み取れる。
というかそもそも、人間がいなくなって、動物から人を作ろうとしたなら、交配出来るように魔法を作ると思うけどな……。なにせ、その魔法を使った誰かは、まぎれもなく人間なのだから。当人が、友人が欲しいのか恋人が欲しいのかは知らないけど。
少なくとも、わたしがもし同じようなことをするなら、一人で生きていかなくても済むように、子供は作れるようにすると思う。よっぽど難しくて不可能じゃない限りは。
そう考えると、思ったよりも未来は明るいのかも。
ほんの少し希望を見出したわたしは、イエリオにまた新たな文献を探してもらうことを約束するのだった。




