表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

394/493

388

 自分の心臓が痛いくらいに早く動いているのが分かる。鼓動の音ばかりがわたしの頭に響いて、現状を飲み込むのに少しばかり時間がかかる。

 当然、そんなわたしよりも、フィジャたちの方が早く動くわけで。


「えっ、マレーゼ大丈夫? どうしたの」


 エプロンをつけたフィジャが、キッチンの方から様子を見に来てくれたらしい。イエリオもいる。

 脳内の処理が追い付いていないわたしは、「あ」とか、「えっと」とか、そんな中身もない声をあげることしか出来ない。


「もしかして話聞いてた?」


 フィジャが首を傾げながら聞いてくる。とくに焦った様子は見られない。ただの質問のようだ。

 誤魔化すことも考えたけれど、内緒にするつもりがないのなら素直に言った方がいいかな……と、わたしは素直に「て、手伝いに来たんだけど、なんか話に入りにくくて、それで、それで……」と白状した。


「あー、そっか、成程ね。で、ウィルフはどうしたの」


 フィジャの視線がウィルフの方に向かう。わたしもつられてウィルフを見ると、少しばかり気まずそうに目線をそらし、後頭部をかいていた。


「こんなところでただ突っ立ってたら気にするだろ。……驚かせるつもりはなかったけどよ」


 わたしが勝手に驚いただけなのだが、でも、心臓に悪かったのは確かである。とはいえ、フィジャとイエリオの会話に夢中になっていたので、多少大きな足音で近付かれたとしても気が付かなかっただろう。

 なのでそこまでウィルフに過失はない。


「あの、さっきの……」


 さっきの話、聞いちゃっても良かったの? と言おうとしたとき、シュウシュウという音が聞こえてきた。「わぁー!」とフィジャがにわかに慌てだす。ばたばたとキッチンに戻ってしまった。

 なにか拭きこぼしたのかな。中断させてしまったけど、よくよく考えればフィジャは夕飯の準備をしていたのだ。ウィルフが帰ってきたってことは、イナリもすぐに帰ってくるだろう。


 話し込むのはあとにした方がいいかな。


 緊張なのか、驚いたのが尾を引いているのか、どっちなのかは分からないけど、少しだけまだ力の入らない指先で袖をまくりながらキッチンに入る。


「手伝うよ」


「ありがとー! もうすぐ出来るから、イエリオたちは向こう行ってて」


 けろっとした様子のフィジャに、わたしは何故だか、ちょっとだけ、むっとしてしまった。話を盗み聞いていたわたしがそんなこと思える立場じゃないのに。


 ――わたしは昼間にあんなことをメルさんに言われて、こんなにも、もやもやしてたのに。


「――……」


 ふと思い浮かんだ感情が、なんとも、決定打になってしまった気がした。


「マレーゼ、お皿を……あれ、どうかした?」


「な、なんでもないよ!」


 誤魔化すように言った声が、酷く上ずってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ