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 その表情で、相当時間がかかることが分かる。東の森でウィルフと一緒に彼女に出会ったとき、彼女もまた、それなりに怪我を負ってしまっていたはず。それでも、イナリの家で再会したときには結構元気そうだったので、回復力が早い方だと思うのだが、それでもなかなか治らない程の怪我、ということか。


「……しろまるにサクッと頼んで治してもらう?」


 わたしの提案に、イナリは驚いたように目を丸くした。


 いやまあ、わたしだって、極力魔法を使いたくはない。ここでしろまるを呼んだら、魔力の回復力が落ちているからと、なるべく使わなかった魔力が一気に減る。今まで力をセーブしていたのが、水の泡となる。


 でも、だからといって、このまま彼女の回復力を待っていたら、彼女にイナリのことを知って、認めてもらうまでに、時間がかかってしまう。ただでさえ、既に説得に失敗して、ここまで執着されているのだ。

 サクッと終わらせてしまうに限る。


 わたしがそう説明してみるも、イナリはいい顔をしないままだった。


「確かに、君に治して貰えれば、すぐにでもシャシカに防具を渡すことが出来る。でも、それだと、君に――マレーゼに、ほとんど手を貸して貰うことになっちゃうだろ」


 その言い分に、わたしはドキっとした。確かに、これはイナリの問題。わたしが手伝えることはもちろん手伝うつもりだが、根本的には彼自身が解決しないといけない。


「そんなんで解決したって――僕は、自分に自身が持てないままだ」


 イナリは、強く言い切った。

 その表情を見て、わたしはしろまるを呼ぶことをやめる。しろまるを呼んで、シャシカさんを治しても、イナリの為にならないのは、彼の顔を見れば、明白だった。


「それに――防具を選ぶのが僕のメインの仕事だけど、それだけでもないから」


 イナリは、彼なりに考えたのであろう、作戦をわたしに教えてくれる。

 それは、防具を見繕うよりもかなり難しい話のように思えたが――でも、イナリなりに、勝算はあるようだった。


 彼がそこまで考えて言うなら、わたしにもはや口出しは出来ない。


「わたしに出来ることがあるなら、手伝うから、言ってね」


 とりあえず、手伝う意思がある、ということだけは伝えておく。すると、イナリは、「もう、十分だよ」と緩く笑う。


「マレーゼが僕を認めてくれたから、僕もシャシカと本気で向き合うつもりになったんだ。どうせ言っても分かってくれない、認めてくれないって、諦めてたから、背中を押してくれただけでも十分だ」


 と、イナリは言った。

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