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 数日後。わたしはルーネちゃんと会っていた。ルーネちゃんとは、可愛い雑貨店やカフェをめぐることが多い。彼女の趣味なんだろう。わたしはとくに何がしたい、ということもないので、彼女の趣味に付き合う形になっているが、これはこれで楽しい。


 定期的にルーネちゃんの休日に会って遊ぶのだが、それに合わせて彼女に冒険者の資格の永久剥奪のこととかを相談していた。彼女の休みだから、あんまり、彼女にとって仕事の話になってしまう冒険者については聞きたくなかったけど、許してほしい。

 こっちも結構切羽詰まっているので。


「うーん、まあ、資格の永久剥奪は出来なくはない……です、一応。本人の意思で、本人から直接の申請があれば。ジェルバイドの一件は、特別なケースですね。基本的にはギルド長という立場で会っても、本来は冒険者になる資格を奪うことは難しいんです」


 意外にも、やろうと思ってやるのは不可能じゃないようだった。しかも、自己申告で永久剥奪を望む人もいるらしい。冒険者として働いて大金を稼いで、それを元手に起業をしたりギャンブルをしたり、失敗して借金を背負ってそれをまた冒険者になって……と負のサイクルを繰り返す人とかが、自分の意思ではどうにもできないと判断して永久剥奪を申し込む、みたいな事例が一番多いらしい。


 しかし、そう説明してくれるルーネちゃんの表情は、あまり明るくなかった。

 可能、と言っても難しいものなんだろうか、と思って聞いてみたのだが。


「……なんというか……言っていいのかなあ、これ。でも変に誤魔化すのもいやだし……。えーっと、あの、永久剥奪の手続きって、すごく……面倒なんですよね」


 言いにくそうにルーネちゃんは言う。


「書く書類は一杯あるし、領主様にお伺いたてないといけないし、とにかく時間がすごくかかって……。だからうちでは勧める職員が誰もいないというか……本当は、等しく告知しないといけないんですけど」


 なんでも、冒険者になる際に書く書類の注意事項の中に、小さく書いてはいるようだが、わざわざ説明する職員はいないらしい。……となると、イナリも読み飛ばしたんだろう、注意事項。


「本当はちゃんと言わないといけないんですけど……する人自体が少ないので、どうしても、めんど……いえ、なんでもないです」


 ルーネちゃんはもごもごと言葉を濁した。


「でも、永久剥奪なので、本当に二度と冒険者にはなれません。……まあ、抜け道はありますけど」


 抜け道。そのワードに、わたしは少しだけ嫌な予感を感じる。

 あのシャシカさんのことだ。抜け道なんかあったら、そこを突いてくるに違いない。

 一応説明を聞いておこう。

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