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 太った。誤魔化しようのないくらいに太った。つい先日まで、城壁外で魔物の調査をして、一か月くらいサバイバル生活みたいなことをしてたのにどうして太ったの……?

 ウエストはちょっぴり増えた程度で、まあこのくらいは誤差、くらいだったけど、太ももとおしりの数値がちょっと誤魔化せないくらいに増えていた。本当にどうして?


 採寸を終えて、わたしは一人、ソファに寝そべり、いじけていた。

 この辺の脂肪を落とすには何をするべきなんだろう。土足文化だから、床に寝そべってやるような筋トレやストレッチはちょっと厳しいんだが。


「……そんなにショック受けるような数値?」


 イナリの言葉に「太っちゃったからね……」と力なく答える。

 前世ではもちろん、シーバイズでも痩せている人がモテたのだ。痩せている、というよりは、引き締まっている人、というべきか。シーバイズでは、スレンダーな働く女性が人気なのだ。そういう国なのだ。


「この程度、太って何か問題でもあるの」


「問題っていうか……みんなだって、痩せてる方が可愛くていいでしょ」


 男の痩せていると女の痩せているは違うが、同時に、男の太っていると女の太っているもまた違うのだ。痩せているに厳しいのは女の方で、太っているに厳しいのは男のイメージがある。完全に偏見だけど。


「君は十分――」


「えっ?」


 イナリがなにか言ったが、もごもごとしていて聞き取れなかった。独り言みたいな声量だったけど、わたしに何か言ったのは分かる。


「――……君は、僕たちのことを醜くないって言って褒めるくせに、僕たちの美醜観は信用しないの?」


 ぐうの音もでない。散々価値観が違うと言ってきたのは他でもないわたしだ。


「この程度、誰も気にしないでしょ。っていうか、服飾系の仕事の僕ならまだしも、他は気が付かないと思うよ。ましてや君、丈の長いスカートばっかり着てるんだから」


「気がつかれなきゃいいっていう問題ではないというか……」


「じゃあどういう問題?」


 どういう問題、と言われて、わたしは少しばかり言葉に詰まる。まだまだ実感はないが、一応既婚者になったわけで、そうなると夫以外からモテる必要はない。

 そうなると、やっぱり、自分が気にするから、ということになる――と思って、わたしはふと、気が付く。

 もしかして、四人も、この悩みにぶち当たるんじゃないか、ということに。


 わたしはわたしで、イナリたちをかっこいい部類の人間だと思っているから、釣り合うかが心配だ。だからこそ、今回の体形の数値の増加でここまで落ち込んでいるわけで。

 でも、その逆も、可能性としてはあるのだ。

 そこを、価値観が違うからと、言うのなら、わたしもこの悩みを受け入れないと行けない。


「価値観の違いって……難しいね」


 思わず呟けば、「そんなに深刻な問題なの、この程度太ったっていうのは」と、少し呆れたようにイナリが言った。

 あれ、これ本当に、獣人の美醜って人に近いかどうかで、顔や体形の美醜はないのか?

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