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転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第五部

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 わたしの持つフォークから野菜が消えて、こくりとイナリの喉が動くのが見えた。たった数分のことなのに、酷く疲れた気がする。

 わたしもご飯食べちゃお、と運ばれてきたパスタに目を移したところで、ふと気が付く。


 ――フォーク、どうしよう。


 元より食べまわしや飲みまわしを気にしないタイプだ。いやまあ、名前も知らないような赤の他人だったらためらうけど、それでもやれと言われれば出来る。親しければ友人間でも家族間でも、問題はない。

 それでも、何故だか今、急に緊張してきてしまった。緊張してきた、というより、ここまでくれば緊張の延長である。


 でも、今ここでフォークを変えるのは、なんか、違くない? イナリが変えろ、と言ったのなら、まあ、おかしくはないけど、彼は何も言っていない。

 それなのに変えてしまったら、あの二人組にも、イナリにも「ああ、やっぱり」って思われてしまう。それじゃあ、あんなに緊張してバカップルを演じた意味がない。


 むしろここで動揺しておろおろする方が恥ずかしい、とわたしはそのままフォークを使って食べることにした。

 緊張も、意識も、してない、と自分に言い聞かせながら。

 前にルーネちゃんと来たときは美味しい料理だと楽しめたのに、今は全く味がしなかった。というか、そんなの気にしてなんて――いや違う、だから違うって。緊張してないってば。


「しゅ、く、集祭って、どんなことするんですか?」


 空気を変えようと口を開いたのに、声が裏返ってしまって、余計に妙な間ができてしまった。しかもまた敬語に戻ってるし。

 それでもイナリはわたしをからかわず、わたしの質問を拾ってくれた。――まだ少し、顔が赤いまま。


「……街中にいろんな屋台が並ぶんだ。大体は食べ物か、花屋が多いかな。あとは伝統的な衣装を着る人が多くなる。特別な服を着て、家族で集まって、近況報告なんかをしながら屋台をめぐるんだ。半月くらい、ずっとそんな感じ」


 特別な衣装に並ぶ屋台。わたしの中では夏祭りが思い浮かんでいた。あれは夜がメインの祭りで、日中からお祭り騒ぎだというならちょっと雰囲気は違うだろうが、イメージ的にはそう遠くはないだろう。


「楽しそうだけど、花屋も多いの?」


 食べ物屋が多くなるのは必然だろうが、花屋が多い、というのはちょっと意外だ。


「伝統的な衣装に、花がいるんだ。髪飾りや服の飾りに使うけど、当日その場で買った方がいいからね。……魔法使いっていうのは花が好きなものだと思ってたけど、違うの?」


 違うの? と言われてしまってわたしは思わず首を傾げた。どこでそんな話が言い伝わったんだろうか。


「今の時代を作ったとされる魔法使いも花が好きと言われているから記念祭があるわけだし、おとぎ話に出てくる魔法使いも、大体花が好きだよ」


 なるほど……? そういう言い伝えがあるというより、花と魔法使いがセットだと思って育ってきたのか。

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