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「この事件で怪我をして引退することになった冒険者ギルドのギルド長、僕の叔父だったんだよね。僕にギルド長を引き継いで欲しかったみたいで、しつこくて困ってたんだ」


 曰く。元々、やりたいこともなく冒険者職を叔父に勧められるがままに就いたイナリさんは、そこそこの出世をしてしまい、彼の叔父も後継として本気で考えていたそうだ。

 でも、イナリさんは、冒険者になってから、冒険者用の服飾や防具に興味を持ち、そっちの道へ進みたくなってしまったらしい。


「何度も『僕は跡を継がない』って言ってるのに、しつこくて。結局、あの事件が起こって、ギルド長の椅子から逃げ切った、ってわけ。僕としてはあの事件のおかげで就きたい職に就けたわけだし。むしろ僕としては、魔物を狩る獣人の方が恨まれてそうなものだと思ってたけど」


 元冒険者、というのなら、確かにやりかえされる覚悟があったのかも。普段、自分たちが魔物を討伐――殺しているのだから。

 それにしても、イナリさんが妙に魔物に詳しかったのは、冒険者用の防具店に勤めているからだけじゃなくて、元冒険者だったからだったのか……。


「それに関しては弱肉強食だろう。強い奴が食うし、弱いやつは淘汰される」


 ウィルフさんの言葉は、実に自然界で生きる者らしい言葉だった。


「で、イエリオに関しては――」


「わたしはなんとなく気が付いていましたよ、ウィルフが魔物なことに」


 イナリさんの言葉を引き継いだイエリオはとんでもないことを言った。


「まあ、より正確に言うのであれば、魔物の血が混ざっているだろうという予測を立てていた、でしょうか。見た目もそうですが、ウィルフの寝姿を見ているので、おおよそ、近くに魔物と交わった者がいるのだろうな、と。だから、魔物だと言われても、驚きより納得の方が大きかったのです」


 ローヴォルは、深く眠るときにぐるる、と喉がなる習性があるらしい。わたしは寝ているウィルフさんがそばにいるときは野営だから知らなかった。冒険者としての彼がいつでも起きれるように、浅くしか寝ていなかったのだろう。

 でも、友人のイエリオと寝ているときは気が抜けて、深く眠っていて、その習性がたびたび出ていた、ということのようだ。


 あのソファで眠り、酒が抜けてうっすらと目が覚めたとき、たまにベッドで眠るウィルフが唸っているのを、イエリオは見かけたらしい。

 それで、ウィルフの正体に、薄々気が付いていた、ということか。


「あの一件に関しては、事件で駄目になった研究の埋め合わせをしてくださるとのことなので、不問にします」


 むしろにこにこと楽しそうである。これからかなり彼の前文明の研究に付き合わされるのだろうか……。

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