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「ねえ、ご飯の準備出来たけど。さっさと起きてよ」


「……んん……」


 肩を揺さぶられて目を覚ます。目をこすると、イナリさんがいた。


「ごはん……」


「早く起きてって。僕、お腹空いたんだけど」


 のそのそと起き上がり、もうそんな時間? とわたしは窓の外を眺める。寝起きの頭では情報を処理できなくて、思考が停止してしまった。

 窓の外はすっかり暗い。ウィルフさんが三人を集めて話を始めたのがお昼過ぎだったはず。えっ、どれだけ寝ちゃったの?


 自分が随分と寝ていたことを理解すると同時に、段々と頭が覚醒してくる。


 この部屋、別室といっても実際はウィルフさんの私室なので、流石にベッドの上は……と、ソファを借りたはずなのだが。寝入るつもりがなかったから、というのもソファを選んだ理由のはずだったのに。

 ぐ、と伸びをするが、ソファで寝たにしては、思ったよりも体が痛くない。


「そのソファ、そんなに寝心地いいわけ?」


 イナリさんが呆れた様にいった。

 なんでも、四人で集まってお酒を飲むとき、大抵、一番に潰れるイエリオがここでよく寝かされるのだという。むしろイエリオが寝るために置かれたまであるらしい。

 そのイエリオも、このソファで寝るときはちょっと寝起きが悪いらしい。あの人はいつもそんな感じだと思うけど……。


 まあ、確かに、物があまり置かれていないこの家にわざわざ置かれたソファは、イエリオが寝るために用意されたのだろうし、それなりに寝心地がいいものを選んだのかもしれない。

 立ち上がって、パパと服の乱れを直す。髪は……うーんダメだな、洗面所借りよう。この部屋に鏡はない。顔も洗いたいし。


「わたし、ちょっと顔洗ってから行くので。先に食べてて貰っても……」


「は? 呼んだ意味ないじゃん」


 突き放すような声音だったが、わたしを置いて先に食べる、という選択肢はないらしい。


「……分かりました! ササッと済ませて行きますので」


「早くしてよね。フィジャの料理、冷めるから」


 呆れたようにイナリさんが言う。

 それにしても、フィジャの料理! 久しぶりだなあ。すごく楽しみ。


 わたしはわくわくしながら洗面台に向かい、サクッと身支度を整え、ウィルフさんたちがいるであろうリビングに足を運ぶ。


「あ! マレーゼおはよ!」


「お、おはよう……」


 フィジャはいつも通りにこにこしていて。イエリオもイナリさんも、普通にウィルフさんと話しながら何かを飲んでいる。えっ、それお酒だよね?

 三人がウィルフさんを非難することはないと思っていたけど、わたしが思う以上に、普段通りの光景が広がっていた。

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