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 あのローヴォルがよほど暴れながら東の森に行ったのか、帰りは行きよりも魔物をよく見かけた。ローヴォルがいなくなった後、隠れていた魔物が戻ってきたのかもしれない。


 勿論、ウィルフさんが怪我をしているので、なるべく戦闘は避けたけれど。おかげで無事にシャンベルまで戻ってくることが出来た。今は報告のため、冒険者ギルドへと向かっている。ちなみに、道中で魔力が回復したので、再び変態〈トラレンス〉をかけなおすことが出来た。

 わたしが魔法の発動を止めても効果が残るタイプの魔法が得意だったら、いや、せめて並み程度の能力があれば、こんな羽目にはならなかったんだけど。効果を残すために魔力を送らないといけないのは、わたしのように魔法の発動を止めても効果が残るタイプを苦手とする人間だけである。……まあ、結構いるんだけど、こういう人。


 閑話休題。


 冒険者ギルドより先に病院、と、ウィルフさんに怪我の治療を進めたけれど、このくらいどうってことない、と断られてしまった。冒険者だと、このくらいの傷はよくあることなんだろうか。

 ……しかし、繁殖期がどうの、という話を行きにしたけれど、ウィルフさんが元々魔物だったというのなら、わたしがなんとなくでした生物学的な雑談も、ウィルフさんにとっては猥談に感じたのかもしれない。そりゃあ、あれだけ動揺もするわ。

 現にわたしも、本人たち的には愛情表現なのであろう、「子供が欲しい」という言葉に動揺しまくったわけだし。価値観の違いって凄い。


 うーん、魔物の文化にもわたし、適応できるだろうか? 獣人の文化や、この千年後の時代にも未だに馴染み切っていないのに。

 差別がどうとか、そういう心配はしていないけれど、そこはちょっと不安である。いや、まあ、ウィルフさんだってそれなりの年月獣人として過ごしてきたんだろうし? それなら獣人文化に慣れればなんとかなる……かなあ。


 ――なんてことを考えながら歩いていたからだろうか。


「おいっ!」


「え、うわぁ!」


 冒険者ギルドの床のへこみに足を取られる。これ前回もここで転んだな!?

 しかし、今回は、わたしが転ぶ前にウィルフさんが支えてくれたので、転ばずに済んだ。はずみでぎゅっと絞めてしまったのか、抱えていたペロディアが「キャン」と小さく声を上げる。


 結局わたしたちについてきてしまったペロディアを、冒険者ギルドなら里親を探せるということで連れてきていたのだ。


「……お前、学習能力ないのか?」


「えへへ、すみません……」


 言い方に棘があるものの、同じように考え事をしていて、全く同じ場所でつまづいて、同じように転んでしまいそうになるのだから、実際、学習能力がない。

 それよりも、前回はわたしが転んだのをそのまま見るだけだったウィルフさんが、こうして転ばないように手を出してくれたことが嬉しくて、へらり、と笑ってしまうのだった。

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