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 頭がくらくらして、目の前がちかちかとぶれる。なんとか肩の傷は治したが、既に満身創痍だ。扉にかけた動物避けの魔法は意地でも効果が切れないように気にかけているが、身体強化〈ストフォール〉はとっくに切れてしまった。


 このままでは、動物避けの魔法が切れるのも時間の問題である。

 前回、フィジャの腕を治したとき以上の疲労感と、魔力の消費量。魔力が枯渇して死ぬ、ということはないし、ゼロになったところでまた休めば回復していくのだが、ゼロになった時点で意識を保つのは、ほぼほぼ不可能である。


 こんな状況で気絶したら、どうなってしまうか、なんて考えたくもない。


 フィジャはそもそも、後遺症を治すというのが目的で、怪我の治療自体はされていたのだ。しかし、今回はなんの手当もなしに、そのまま治療魔法を使ってしまった。

 スタートラインが違うので、魔力の消費量が違う、というのも分かるのだが、こんなにも持っていかれるとは。


「――、ウィルフさん、立てますか」


 わたしは彼に声をかける。


「もっと奥に逃げましょう。このままだと、あの扉が突破されて終わりです」


 彼を持ち上げられたら良かったが、今のわたしには肩を貸す力すらない。むしろこっちが貸してほしいくらいである。怪我人相手なので、そんなことは言えないが。


「――、腕の怪我は自分でなんとかする。移動には問題ねえ」


 そう言って、ウィルフさんは彼のポーチから応急手当の道具を取り出した。表情はまだ険しいが、さっきよりは幾分か回復しているように見える。というか、回復してくれないと困る。


「扉は、――魔物避けの魔法は、後どのくらい持ちそうなんだ?」


 どのくらい。その答えに、わたしはなんと返したらいいか、分からなかった。

 わたしの根性が続くまで、としか言えない。


 魔法の発動を止めても効果が残るものは、発動を止めたって、定期的に魔力を送らないといけない。発動の間効果を発揮するものはずっと送り続けなければいけないので、それに比べたら遥かにマシなのだが、ふとしたときに忘れたり、補給する魔力が足りなかったりすると、パチン、と簡単に効果は消えてしまう。


 流石にこの状況で補給するタイミングを忘れたり逃したりはしないが、魔力が足りなくなる可能性は十分にある。いっそ、変態〈トラレンス〉も切ってしまおうか。

 最悪、ウィルフさんが人間の姿であるわたしを担いで街まで戻らないといけなくなる可能性はあるが、命には変えられない。


「わたしが頑張れなくなるまで、としか。人間の見た目に戻っていいなら、もう少し長く頑張れます」


 とりあえず、態勢を立て直すにしても、奥に行きましょう、と立ち上がって、ふらふらとしながらも、わたしは別の部屋に続くのであろう扉を開いた。キッチンのような場所を経由して、寝室のような場所へ。流石にクローゼットに入ってしまったら逃げ場はないか、と思いながら、わたしは扉に動物避けの魔法をかける。

 外の扉にかけたものより、効力は弱そうだが、なんとかなるだろう。同じものや、もっと強力なものをかけるだけの体力と魔力がない。


 ふらふらとした頭で、とにかく奥に逃げて動物避けの魔法をかけねば、と考えていたからだろう。

 後から来るウィルフさんのことも考えず、わたしは先に部屋に入って魔法をかけてしまった。


 ――バチン、と音をたて、ウィルフさんが弾かれた。

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