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 なんにしろ、こんな罠があるということは、誰かが出入りしていることは確実だ。


「あ、もしかして、ペロディアを生け捕りにするためにこんな罠を仕掛けたんですかね?」


 ペロディアだったら弱いらしいから、生け捕りにしたい、という気持ちは分かる。シャルベンの街ではイヌと一緒にペロディアが飼われることもあるらしいし。

 となると、謎の肉食の魔物に食べられた説と、誰かに捕まえられてしまった説で、彼らはこの森から数を減らしたのだろう。


 そう思ったが、あまりウィルフさんの表情は明るくない。


「可能性としてはあるだろうが、こんな不確実な罠を仕掛ける必要があるか? これだったらペロディア以外も引っかかる」


 まあ、現にわたしが引っかかっているしね。

 そしてもし、ペロディア以外が引っかかったら、罠の解除が大変そうだ。くくり罠だから、ある程度身動きが取れなくなるとはいえ、自由が一切きかないわけじゃない。ルイシヴォカの様に角がある魔物だったら、体をよじる様に暴れられるだけで近付けないだろう。

 殺してから罠を解除するにしたって、骨が折れる。


 それなら、こんなくくり罠じゃなくて、箱罠の方がいいだろう。箱をペロディアのサイズに合わせて置けばペロディアより体がでかければ引っかからないし、別の魔物が引っかかっても、くくり罠より対処がしやすいはずだ。


「まあ、なにはともあれ……これ、どうやって外すんですか?」


 バチン、と、結構大きな音を立ててわたしの腕を捕まえただけあって、結構な跡になってしまっている。普通に痛い。

 しばらくは紐の跡が残るだろう。

 紐はワイヤーに似ているだけあって、簡単には切れそうもない。


「……確か、こう、だったような」


 若干心もとない手つきだったが、罠をいじり、やや乱暴に罠を外してくれる。外された後の右手をさすったり、手首を動かしたりしてみて、傷を確認した。

 痛いけど……まあ、我慢出来ない程度ではないかな。手当はしたいけど、わざわざ拠点に戻る程でもない。夜に拠点に戻ったら手当する、とかで大丈夫だろう。


 わたしは腕をさすりながら、ウィルフさんにお礼を言った。


「ありがとうございます。それにしても、くくり罠の外し方なんてよく知ってましたね」


 シーバイズ時代、姉弟子に野生児というか、森で狩りや採集をするのが好きな人がいて、罠の種類をいくつか教えてもらってはいたものの、仕掛け方も外し方もわたしは知らない。

 ましてやこの時代は、肉は鳥しかないようだから、こんな罠なんて主流じゃないだろうに。


「駆け出しの頃使ってたんだよ。初心者が素材を取る魔物を狩る場合、罠を仕掛けて身動きが取れなくなってから仕留めた方が損傷箇所が少なくて済むからな」


 なるほど。確かに、こんな危険な場所じゃなくて、冒険者なりたての人が行くような場所だったら、魔物もたいして強くなくて、くくり罠を有効活用できるだろう。


 それにしても、ウィルフさんの初心者時代か。

 そりゃあ、誰にだって初心者な時期はあるわけで、ウィルフさんにも当然そう言う時期はあっただろうけど、どうにも変な感じがする。想像がつかない。


 昔のこと、あまり話してくれないからだろうか。

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