219
作物を守るための、畑なんかにかける、動物避けの魔法があるのだ。家畜の小屋にも使える魔法で、保護したい対象が、小屋や家など、中にいるときに使えるもので。
魔物が動物から派生した生き物なら、なんとかなるかもしれない。ただ、虫はまたちょっと魔法陣が違くて、そっちの方は習得出来ていないので、スパネットみたいな虫から派生した魔物には効かないかもしれない。
この森に出る魔物を聞いてみたが、聞いてから名前だけでは判断出来ないことに気が付く。ウィルフさんにいかにも、面倒くさい、みたいな視線を向けられつつも、魔物の詳細を聞く。聞いた限りでは、どれもこれも動物の派生のようだ。
虫がいないならできるかな、とわたしは「造形〈クリンドール〉」と呟いて土で檻を造り、その中にペロディアを入れて、動物避けの魔法をかける。造形〈クリンドール〉は特定のものから何か別の物を作る魔法だ。わたしは土から何かを作ることしか出来ない。でもこれ、畑耕す時にすごく便利なんだよね。シーバイズにいた頃は、農家に頼まれてよくやったものだ。
「ここでお利口に待っててね」
わたしがそう言うと、やっぱりぺロディアは不思議そうにあざとく頭を傾げる。
「街に帰ったら里親でも探しましょうか」
わたしがそう言うと、ウィルフさんは「勝手にしろ」と言い捨てた。わたしが責任を取れるなら、邪魔はしない、ということだろう。ちょっとづつ、この人の言い方にも慣れてきた。
ペロディアやイヌを飼う街の人なら、きっと飼いたい、と言う人もいるだろう。勿論、一番いいのはわたしたちがここを離れるときに自分の住処に戻ってくれることなんだけど。
とはいえ、今はいつまで経ってもウィルフさんの後を追うので、調査の邪魔にならないようにしておかないといけない。
「あ、ペロディアってなに食べるんですか?」
そう言えば餌の問題をすっかり忘れていた。わたしの食料を多少わけてもいいし、まあ、そもそもこの辺りに生息しているならこの辺りで食料も調達できるだろう。
「雑食でなんでも食う。どちらかと言えば肉食だがな。保護してくれる魔物の食べ残しが主な餌だ」
「なんでも……」
試しにその辺に生えている草をちぎってペロディアの口元に持っていく。流石に適当すぎるか、と思ったけれど、なんでも食べる、というのは嘘じゃないようで普通に食いついた。
確かに弱いと言われている魔物が、餌をえり好みしていたら、生き残る可能性も低くなる。とはいえ、なんでも、が過ぎる気がするわ。今食べてるの、その辺の雑草だもん。
でも、これなら餌のことはそこまで心配しなくても大丈夫そうだ。




