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転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第四部

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 そんなに難しいことを聞いたつもりはないのに、ウィルフさんは黙ってしまった。大層な幸せを想像しているんだろうか。

 でも幸せなんて、ささやかなものが積み重なって、大きな幸せになると思うのだ。


「わたしはねえ、美味しいご飯食べてるときとかあ、大雨の日にお休みで外に出なくてもいいときとかあ、二度寝するときとかあ――」


「――四人でいるとき」


 指折り数えながらひとつひとつ、わたしの幸せを上げていると、それをさえぎるようにウィルフさんが言った。


「四人で馬鹿騒ぎしているときが、一番楽しい」


 四人。そんなの、誰、って聞かなくても決まってる。フィジャと、イエリオと、イナリさんと――ウィルフさん。


 そこにわたしはいない。


 彼ら四人の付き合いが長くて、わたし一人だけが後からポッと出てきただけなのは、十分、理解している。

 分かっているはずなのに、ふわふわした頭では、「さみしい」という感情だけが先行して――気が付けば、ぼたぼたと涙がこぼれていた。


「う、うぅ~」


「な、なんで泣くんだよ。質問にちゃんと答えただろ」


 無視してない、とウィルフさんが少し慌てた様子だった。でも、ぼやけた視界では、どんな表情をしているかまで、ハッキリ分からない。


「だって、さみしいもん」


「――は?」


「『みんな』に入れてくれないのがさみしい」


 ぐずぐずと鼻をすする。

 こんな泣き言、ウィルフさんが面倒くさがるだろうな、と思っても、ゆるゆるになった涙腺では、焦りが余計に刺激になって、涙を形づくる。


「別に――俺らみたいな男たちの中に入れなくたっていいだろ。イエリオはともかく、見た目で差別されてきたような奴らの集まりだぞ」


「そんなことない!」


 価値観が違うんだって、言ってきたのに。そりゃあ、最初は諦めからだったけど。希望〈キリグラ〉じゃどうしようもないって。

 でも、こうして皆と過ごして行くうちに、彼らと仲良くなって、大切にしていけたらいいって、思うようになったのに。


 どうして伝わらないんだろう。


「…………」


 わたしはすっと立ち上がり、ふらふらとウィルフさんに近付く。


「ちゅーします」


「――……は?」


 わたしはそのまま、座っているウィルフさんの胸倉を掴んだ。そして、「ちゅーを、します」ともう一度宣言した。


「おい、おいおい待て待て酔っ払い! どういう思考回路でそこに行きつくんだ、一旦落ち着け!」


 わたしの腕を引きはがそうとするウィルフさんに抵抗するため、身体強化〈ストフォール〉を使う。そのうえで、ぎりぎりと、これでもかとばかりに力を込めて胸倉を掴む手を握りしめた。絶対に振りほどけまい。


「わたしは、みんなのことを、大事にしたいと思ってるけど、恋愛感情があるかは分かんない。でも、この状況でも、ウィルフさんにキスするくらいなら抵抗がないよ。つまりわたしにとって、ウィルフさんは差別するような見た目ではないということ。証明終了」


「証明終了、じゃねえよ、お前、この、この酔っ払い! 本当に待ってって! くそ、指かた――、っ!」


 ちゅ、と、鼻先というか、口の先というか、その辺をめがけて、わたしは唇を押し付けた。

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