表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/493

204

 ――頭がふわふわする。


 なんでかなあ、と考えてみても、ふわふわした頭では全然思考がまとまらない。

 確か、「俺は料理なんて出来ねえ」って言われて、じゃあ外で夜ごはん食べよっか、ってなって、それで……それで、なんだっけ?


「――……おい、お前それ何飲んでんだ」


 目の前で豪快にステーキを食べているウィルフさんが、わたしの様子に気が付いたのか、怪訝そうに聞いてきた。こんなに頭がふわふわしてると、端からも変に見えるのかな。


「何――何かなあ。うーん、お水じゃない」


 くぴっと自分のコップに入った飲み物を飲んでみる。味がついてるから水じゃない。


「あ」


 がっとコップを奪われた。思わず、「こぼれちゃうよ」って言ったけど、無視されてしまった。酷いねえ、こぼしてもどうせ拭いてくれないくせに。


「お前、これ酒じゃねえか。こんな度数の高いやつ、いつ頼んだんだ」


「えー? 分かんない」


 お酒かあ。お水じゃなくて、お酒だったかあ。じゃあ、こんなにも頭がふわふわしてるのは、酔ってるからなのかなあ。

 お酒は弱くないつもりだったけど、度数が高いなら、酔ったのかも。


「ほら、これはもうやめて、こっち飲め」


 そう言って、ウィルフさんはテーブルに置いてあった水差しを使って水をついでくれる。わたしが元々飲んでいたお酒は没収されてしまった。


「……間接キス?」


 空っぽのコップなんてあったっけ、と思って、もしかしてウィルフさんが使ってたコップかな、って聞いたら、ウィルフさんは盛大にむせていた。


「わ、大丈夫? お水いる?」


「げほ、いらねえ。それはお前が飲め。後、それはテーブルに元から置いてあったやつだ」


「じゃあ間接キスじゃないのかあ」


 持っていたコップを差し出したけど、いらないって言われてしまったので、おとなしく飲んでおく。水が冷たくておいしい。


「お水おいしい」


「……そうかよ」


 思ったことをそのまま口にすると、思い切り溜息を吐かれてしまった。むむ、溜息はよくない。


「幸せ逃げちゃうよ」


「は?」


「ほら、溜息つくと、幸せが逃げるって言うじゃん」


 折角説明したのに、バッサリと、「言わねえよ」って言われてしまった。言うもん、と言い返そうとして、そう言えばこれは前世の、日本での言い回しだったな、って思い出して、言い返すのをやめた。


「ウィルフさんは何をしてるときが幸せ?」


 代わりに、そんなことを聞いてみた。溜息を吐いても幸せが逃げないっていうことは、その程度でどうこう出来ない幸せが彼の中にあるということだ。

 わたしにはそっけないけど、彼にもそういうところがあるのかな、と思ったら、つい、聞きたくなってしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ