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「ちなみにイエリオさん、一妻多夫の場合、送るものはそろえた方がいいとか、逆に変えた方がいいとかありますか?」
「そうですね、デザインに関しては、一緒でも別でも、あまり重視されませんが、金額はなるべくそろえた方が好ましいです」
まあ確かにそうか。一人だけ高いもの、となれば、明らかに差がある様に見えるし、それならそいつとだけ結婚しろよ、という話になる。
これ四つ……うん、買えない値段じゃない。
「あの、これとかどうです?」
ショーケースの上からチョーカーをさし、イエリオさんに聞いてみる。
「私たちは貴女から送られるものならなんでも喜びますよ」
にこにことそう言うイエリオさんは、本心からそう言っているようだった。
うーん、何でもいい、と来たか。せっかくなら喜んでもらうものがいいが……ま、いいか。
「すみません、あの、これを四つ欲しいんですけど……。あ、宝石のバリエーションとかありますか?」
店員に話かけ、あれこれと決めていく。無事にみんなの瞳カラーの宝石を手に入れることが出来た。
わたしが買う分は終わった。ちなみに、このあと魔法付与をするので、ラッピングを断ったら、店員さんはちょっと顔を赤らめたし、イエリオさんは顔を真っ赤にしながらも、ちょっと期待したような目でこちらを見てきた。うーん、なにかやらかした気がするぞ! なんだろう、分かんないな……。多分、ラッピングしないのは一般的じゃなくて、なんかこう、深い意味があるのかもしれない。
こういうとき、文化の違いをはっきり思い知らされるというか。今後、一人で外出するのは一通り、こっちの常識を頭に詰め込んでからにしよう。絶対そうする。
「ラッピングしないでいいっていうのは、すぐにでも使うから、って意味で、転じて、結婚する相手がめちゃくちゃ好き、みたいなアピールになるんだよ」
やりとりを見ていたらしいフィジャが、こっそりと教えてくれた。なるほど、盛大な惚気みたいなものだったか……。そんなつもりはなかったんだけど。
「マレーゼの分はボクらで決めるから。よかったら、ちょっと待ってて?」
フィジャは、ソファの方を指さした。わたしは相談に乗ってもらったのに、と思ったが、フィジャが「折角結婚できるなら、ボクらだけで決めたい」というので、折れることにした。
「首輪だけは、首輪だけはやめてね……!」
そう伝えるのだけは、忘れなかったけど。




