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転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第三部

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 正直、二人で無傷のまま、ここを逃げ出す光景が全く見えない。

 一番いいのは目の前のグリエバルがそのまま諦めてどこかへ行ってしまうことだが、まだ執拗にわたしたちを探しているようだし、あんまり期待が出来ない。


 隠伏〈ロネス〉から切り変える様に転移魔法が使えたら無傷で逃げ出せるかもしれないが、元より転移魔法が苦手なわたしはそんなにパッと発動させることが出来ないし、なにより――失敗するのが怖い。

 希望〈キリグラ〉の魔法――『嫁が欲しい』という望みの元わたしがここにいる以上、たとえ失敗したとしてもよっぽどのことにはならない……はず。


 ただ、とんでもない場所に出てしまったらどうしよう、とか、千年も時が流れることはないにしろ、一年後とか二年後とか、そのくらいの時は流れるかもしれない、とか、そういう不安が頭をよぎって仕方がない。

 現に、転移魔法に失敗してわたしはここにいるので。


 ――だとしたら、もう、成功のラインを引き下げるしかない。

 無傷で逃げることを目標にするのではなく、多少傷を負ってでも逃げる。逃げるので脚を怪我するのはまずいが、最悪、腕とかならどうにでもなる。死ぬような致命傷じゃないかぎり。

 とにかく、死なないで逃げることを目標に。送電〈サンナール〉だけでしとめられたらいいが、この状況でそこまで言ってられない。


「……イエリオ、今からわたしたちを隠してくれる魔法を解くよ。そうしたら、送電〈サンナール〉をグリエバルに打つので、ひるんでいる間に逃げるの。もし、やれるようなら仕留めるから」


 達成目標は無傷で逃げることではなく、とにかくこの場を死なずに離脱すること。


「……出来る、んですか……?」


 自信はない。でも、やるしかない。

 イエリオだって身長があって、一般的な男性の中だったら戦闘力はある方かもしれないけど、それはあくまで対人の話。今は、魔法を使えるわたしのほうが、戦う術を持っている。


 やれるのは、わたしだけだ。


「怪我をするかもしれないけど、とにかく、死なないでここから逃げ出すことを考える。……分かってください」


 方法がどうしようもないことは、イエリオも重々承知のようで。いい顔はしなかったが、反論もしなかった。

 わたしは立ち上がりながらイエリオの前へ出るように動く。隠伏〈ロネス〉は動けば勝手に魔法が解除されるので、わたしは送電〈サンナール〉を打つ為に意識を送電〈サンナール〉へと向ける。


 わたしが口を開くより先に、グリエバルがこちらに気が付き、口を開けた。

 見た目はほとんど豚と変わらなかったのに、口の中は剣山のように、短いものの鋭そうな牙がびっしりと生えている。しかも、豚とは思えないほどがぱりと大きく口が空いている。あごの可動域どうなってんだ、それ。


「――っ、送電〈サンナール〉!」


 予想外の口に驚いたが、ひるまずにわたしはグリエバルの口から体全体に電流が流れるイメージで送電〈サンナール〉の魔法を使った。わたしが使える、最大の電流量でもって。


 わたしの腕に噛みつこうとしていたグリエバルが、ぷすぷすと音を立てて黒焦げになった。口がほとんどわたしの腕にかぶさっている状態で、腕に多少牙の跡がついて出血したものの、完全に噛みつく前に仕留められたようで、大惨事にはならなかった。

 あんな口内をした生き物に噛みつかれたら、少し噛みつかれただけで腕がちぎれてもおかしくない。


「よかっ――、っ」


 予想以上に軽傷でここから逃げ出せそうだ、と、イエリオがいる背後を振返ろうとしたとき、どん、と、軽い衝撃に見舞われる。

 イエリオが、わたしを抱え込むように抱き着いてきたのだ。


「何――え?」


 勢いに負けたわたしは、数歩、軽く足踏みをしてしまって――ずるりと、血だまりを踏んでしまった。


 頭が真っ白になる。

 確かにわたしは怪我をしたけど、こんなにすぐ血だまりが出来るような怪我じゃない。


 じゃあ、誰の――。


 わたしがその正解にたどり着くより先に、ぐらりと、イエリオの体が崩れ落ちた。

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