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「いただきまーす!」
わたしは元気よく挨拶をして、フィジャの作ったパスタ……らしき麺料理を口に運んだ。
ウィルフさんを連れ戻し、彼とイナリさんが仲直りしたのを見届けて。丁度お昼時だったので、お昼ご飯を食べながら今後のことを決めよう、ということになった。
お昼ご飯はパスタっぽい麺料理とサラダ、それからスープ。サラダはわたしが前世でもシーバイズでも食べていたものとそう変わらない。ドレッシングという概念がないのか、それとも単純に彼らの好みなのかは分からないが、生野菜を綺麗に盛り付けたものである。ちょっと物足りない気もするけど……、まあ、これはこれでおいしい。野菜、嫌いじゃないしね。
パスタはフィットチーネのような平べったい麺で、載っているソースは見た目がミートソースっぽい。味はピリ辛で中華よりだろうか。
スープは、一瞬ポタージュかとも思ったが、どうやら卵スープらしい。失敗したのかな、と一瞬思ったが、彼らは何も言わないので、こういう料理なのだろう。
しかし、それにしてもめちゃくちゃおいしい。普通にお店として出せるレベルだと思う。
話をしよう、ということになっていたはずなのに、夢中になって食べてしまった。
ハッとなって、話のことを思い出したのは、半分くらい食べ進めてからである。がっつきすぎたかな、と思いながらもわたしは咳払いを一つした。
「えっと……ここの、何国だっけ」
「フィンネルです」
イエリオさんの言葉でようやく国名を思い出す。カタカナ名称覚えるの苦手なんだよね。
「フィンネル国だと、結婚ってどんな風にするの?」
「そうですね、種族によってもやや違いがありますが、基本的には装飾品を送りあいます」
結婚指輪とか、そういうものかな?
「それで?」
「それだけです」
「えっ、それだけ?」
わたしはびっくりして、思わずスープの入ったお椀を落としそうになった。
説明してくれたイエリオさんは、わたしが驚いているのに対して不思議そうにしているので、それが当たり前なのだろう。
「双方の親に挨拶へ行ったり、届のようなものをだしたり、とかは……」
「ないですねえ。……あ! もしかして、シーバイズではそのような形式をとっていたのですか?」
イエリオさんの目が途端に輝きだす。なにか突っ込まなくていいとこをつついてしまった感がある。
ずず、とイナリさんがわざとらしく音を立ててスープをすすった。ちらり、と彼の方を見れば、余計なことを、と言いたげな目をしている。ああ、話が長くなるやつなんですね……。




