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説明すれば、びっくりするくらい分かりやすくイエリオさんが落ち込んだ。今まで、すぐそばにトバラルが生えていたことに気が付かなかったのがよっぽどショックだったらしい。一つでも前文明の情報を逃したくない、
「ほら、でも、コルテニアの布はちゃんと再現できてるんですから……。あっ、そうだ、この調査が終わったら一緒に改良しましょう、ね?」
あんまりにも可哀そうなほどしょんぼりしているので、励まそうと、わたしは思わず言ってしまった。布の作り方なんて詳しくないけど、原材料が違うだけならそう難しくないはず。……多分。
一緒にやろう、と言うと、イエリオさんは一瞬、ぽかん、とした顔を見せた。
「え、い、いいんですか……?」
「まあ、作り方を知っているわけじゃないので、わたしが隣にいても試行錯誤の繰り返しなのは変わらないと思いますけど……それでよければ」
そうわたしが言えば、イエリオさんの、ぽかんとした顔が、どんどんと笑顔になっていく。
喜色に顔を染め、わたしの両手掴んで喜びを表現するかのように上下にぶんぶんと振り、「是非、是非!」と笑う。
こんなにも喜ばれると、適当を言ってしまってちょっと後悔。一緒に改良をするのは全然いいんだけれど、本当に作り方を知らないので、彼の期待に答えられるか不安になる。
「あんまり期待しないでくださいよ」
釘を刺してみても、嬉しそうなのは変わらなくて。うさぎの獣人のはずなのに、犬のようにしっぽを振っている幻覚が見える……。
「と、とりあえず体拭いて寝巻に着替えますから。出てってください」
いつまでもこうしていると、どんどん就寝時間が遅くなっていくので、切り上げないと。
「ああ、すみません、そうですよね、失礼しました。では、終わったら声をかけてください」
そう言って、イエリオさんがテントを出ていく。ザリザリと、テントから足音が離れていくのを聞いて、わたしは服を脱ぎ始める。
なんだかこういうところで服を脱ぐのはちょっと抵抗がある。サッと終わらせてイエリオさんと交代しよう。
トバラル製の布が上手くいかなかったときは何かフォローした方がいいかな、なんて考えながら服を脱ぎ、下着に手をかけたところで――。
「マレーゼさん、これはなんですか!?」
「だからテントの入口開けるときは声かけてって言ったじゃないですか!」
わたしは脱いだ服で体を隠しながら叫んだ。絶対やらかすと思ったけど、それでも一回目で来るとは思わなかった。こんなに早くやらかすなんて!
興奮したように何かを持ってきたイエリオさんに、わたしは近くにあった、何かの資料と思わしき本をイエリオさんに投げつけた。




