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その後も、たびたび魔物と遭遇しながらも、無事に屋敷へとたどり着くことが出来た。
流石にあのファンリュル並みにヤバい魔物が出ることはなかったが、ジグターさん曰く、いつも出没する魔物よりはランクの高い魔物ばかりだったらしい。
「癪だけど、俺一人だったら無事にたどり着かなかっただろうね」と言われてしまうと、ヴィルフさんがついてきてくれて本当によかったと思う。
でも、前回二人でここに来るまでは、たいした魔物、見なかったんだけどなあ……。流石に一度も遭遇せず、なんてことはなくて、遭遇率自体はそんなに変わらないと思うが。きっちり数えているわけじゃないから、体感だけど。
魔物を初めて見るわたしでも、あんまり強そうじゃないな、と思う魔物ばかりだった記憶なのだが……まあ、たまたまそういう日に当たったんだろう。
「ほら、イエリオ、調査は明日から!」
「折角目の前に遺跡があるんですよ!? 早く調査を……うう……」
屋敷に着くなり、興奮して車から飛び降りたイエリオさんを、オカルさんが捕まえる。あの速さ、イエリオさんが飛び出すことが分かっていたかのような早さだ。
魔物との遭遇回数はおおむね予想通りだったものの、個々が想定より強い魔物だったので、予定時刻よりも到着するのが遅くなってしまった。もう半分くらい日が沈んでいる。
「早くテントの設営をしないと、日が暮れたらもっと大変になるっすよ」
今日はテントを張り、明日の午前から調査、ということになっている。ヴィルフさんとジグターさんが交代で辺りを見張って警戒、わたしとイエリオさんが屋敷の調査、オカルさんはその補佐、という感じの役割分担で、明日から三日間この屋敷を探索する。
調査は主に屋敷の間取りと何かめぼしい物があるかを調べるそうだ。調べる価値があるか調べる……そんな感じらしい。まあ、イエリオさんたちの仕事は、歴史的な物の保護、というよりは、それらを使って新しい技術に変換できないか、という研究が主のようなので、最低限大事に扱いはするだろうけど、価値がなければ……ということだろう。
もし、なにか発見があって、本格的に調査することになるようなら、専用のチームが組まれて、細かく検分するようで。
わたしとヴィルフさんが訪れたとき、一階は全く探索しなかったし、二階も二階で目的の物を探すのみで、廊下の方は何も見ていない。
あの謎の間取りの理由が分かるのかな、と思うと、わたしもちょっと楽しみである。
屋敷を見上げながらそんなことを考えていると――。
「――ってことでいいっすよね? マレーゼさん」
オカルさんが話しかけているのに気が付かなかった。
わたしもあんまりイエリオさんのこと馬鹿にできないな、と思いながら聞きなおす。
「すみません、聞いてなかったです。なんですか?」
「テントの割り振りなんすけど、イエリオと一緒になっても平気っすよね? って」
……えっ?




