表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/493

102

「――っと、……ちょっと! 生きてる?」


「……なに……おはようございます……?」


 目をあけると、イナリさんがいた。

 いつの間にか寝ていたらしい。転生特典なのかたまたまなのか知らないが、魔力量の多いわたしでも、魔力を使い切ることはあるわけで。

 まあ、魔法の習得に夢中になると、寝食を忘れることは、ままある。難しい魔法相手だと、特にそう。


 今回も忘れてしまっていたようで、気が付けば床の上で寝ていたようだ。

 わたしが、くあ、とあくびをすると、イナリさんが少し怒ったように言った。


「……っ、流石の僕でも、頭から血を流して床に横たわってたら、びっくりするんだけど」


「……血?」


 なんのこっちゃとわたしは自分の頭をさわる。後頭部や頭頂部には異変がなかったが、右の側頭部を触った瞬間、ぬるっとした感触が指先に伝わり、同時に痛みが走った。


「痛っ!? なんですかこれ!?」


「僕が聞いてるんだけど?」


 もう一回恐る恐る触ってみると、耳の辺りに傷が出来ているようだ。……ん? 耳?


「ああー……やらかした」


 魔法陣の方に夢中になっていたせいで、変態〈トラレンス〉が解けてしまったらしい。それに気が付かないで、なんかかゆい、と無意識にかいてしまったんだろう。この魔法も、言語理解〈インスティーング〉じゃないにしろ頭が痛くなるので、かいているときには気が付かなかったようだ。

 試しに頭の上の方を触ってみれば、猫耳が消えている。しっぽもない。完全に人間に戻っていた。

 でも、しばらくはこのままの方が逆にいいかもしれない。また変態〈トラレンス〉を使うのもいいかもしれないが、この様子だとまた勝手に解除されるかもしれないので。


「……ところでイナリさんは何故ここに?」


「様子見に行って欲しいって、フィジャに頼まれたんだよ」


 ……そう言えば、あれからフィジャのお見舞いに行けてない。早くなんとかしなくちゃ! という気持ちだけが先走っている。


「……魔法で、なんとかなりそうなの?」


 イナリさんも、やっぱり気になるんだろう。少し、不安そうに目線を落としていた。


「大丈夫です、あと、少しのところなので」


 ようやくあと一歩のところで寝落ちしてしまったが、魔力さえ回復すれば魔法を発動し、言語を習得することが出来る。

 ここからがむしろ本番なのだが、でも、どうにもならないと思っていたあの頃よりも、確実に前に進んでいる。


「とりあえず、耳の手当をして、もうひと眠り、しっかり寝てから再度チャレンジします。……今度こそ、成功させますので」


 本当は今すぐに続きをしたかったけれど、寝落ちするくらい魔力が枯渇しているなら、一度寝た方がいい。

 魔力がなくなっても、死ぬことはないのだが、いかんせん眠くなる。無理につづけたところでろくな結果にならないだろう。

 しかも、タイミングを計ったように、くるる、とわたしのお腹が鳴った。寝るのを忘れていたのなら、食べるのも忘れていたので、まあ、当然の悲鳴なのだが。


 時間を見れば、少し早いけれど夕食時の時刻だった。今から作れば、いい感じの時間になるだろう。なにせわたしは手が遅いので。


「何かイナリさんも食べていきますか? ……わたしの作ったご飯になりますけど」


 わたしは言いながら、救急箱を取り出し、耳の手当をする。

 ちょっと飲み会のときの当てつけみたいになってしまったが、まあ意識しないで言ったわけじゃない。

 イナリさんも分かって、少し気まずいのか、目線をそらされた。


「……貰うよ」


「そうですか、それはよかった。家ができた暁には、わたしの料理にも慣れてもらわないと困るので」


 そう言うと、イナリさんはちょっと驚いたような顔をした。

 おっ、今喧嘩売られたか?


「何ですか、その顔」


「いや、その……君も作るんだなって。悪い意味じゃない。フィジャの腕が治るなら、フィジャにまかせるのかとばかり」


 ホントか? 本当にそう思ってるのか?

 ……まあ、ここで喧嘩しても意味がないので、ちょっとむっと来たことは黙っておく。


「フィジャばっかりに任せたら、かわいそうでしょう。分担しようって約束してるので」


「……そうなんだ」

「フィジャよりまずいかもしれませんが、食べられないものは作らないので。しっかり慣れてくださいね?」


 わたしはそう言って、手当の道具を片付けてキッチンへと向かう。ちなみに、フィジャから入院中は、自由に使っていいと許可は得ている。


 予想通り作るのに時間はかかってしまい、その間に、同じく様子を見に来たイエリオさんがやってきて、三人で夕食を取ることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ