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プロローグ




 わたしが高校生だった時、ある約束をした。

 三人で、大切な約束をした。

 大好きな友達と輪っかになって、小指同士を結ぶ。子供の約束をするかのように、三人で口を揃えて唄う。


 指切りげんまん

 嘘ついたら針千本飲ます

 指切った


 でも、今は誰とどんな約束をしたのか、全く覚えていない。思い出そうとしても、頭の中に靄がかかったように、なにも見えなくなる。

 覚えていることは、約束した場所が小さな木にピンク色の花が咲いていたということ。五枚の花びらを持つ花は、そこでしか見たことがない綺麗な花だった。

 その花の名前は、


午時葵ごじあおい


 と、友達が呼んでいた。

 あまりにも可愛かったので、わたしが花を摘もうとすると、友達は酷く焦った様子で止めてきた。


「花を摘んじゃうと、死んじゃうからやめてあげて」


 花が死んじゃうの? と聞くと、


「人が、死んじゃうの」


 と、言った。

 花を摘むことが命を奪うことになるって、どういうこと?

 首を傾げながら口を尖らせていると、違う友達が口を開いた。


「あっちにクローバーがあったよ。誰が早く四つ葉を見つけるか、競争しようよ」


 そう言って走りだす。

 追いかけるように、わたし達も走りだした。

 馬鹿みたいになにも考えずに、友達と一緒になにかをすることが、一番楽しかった。それがどんなに子供っぽい遊びでも、くだらない遊びでも、笑い合えた。こんな時間が一秒でも長く続けばいいと、強く思った。

 ただただ、幸せな時間を守りたい。

 でも、ずっと続くことはできない。

 どうやったら、守ることができたんだろうか。

 分からなかったから、目を背けた。

 分からなかったから、一人で逃げた。



 この記憶も、約束も、いつの間にか妄想だと塗り潰して、忘れていった。


 

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