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序章
序
ミステリ小説とはなんだろうか?おそらく最低限の必要十分条件として、解くべき「謎」がある事、そしてその謎が小説内で、論理的な推論をもって解決される事だろうと僕は思う。少なくともそう思ってミステリ愛好家の末席を汚し、素人ながらミステリ作家を志したりもしたのだ。
しかし―
これから語る話は、とてもミステリの範疇とは言えないかもしれない。少なくともあの事件当時、異世界より集った彼らは、それはミステリではないと口を揃えて言うだろう。
謎を解く必要などないと云う者
謎などそもそも発生しようがないと云う者
謎は力業で解決しようと云う者
その他さまざま、誰一人として同じ定義はなく。彼らに物事について聞く度に、僕の定義や常識の境界をあやふやにしてしまうに違いない。
そう、思えばあの日。僕は『世界』を踏み越えてしまった。ならば慣れ親しんだミステリの定義なんて、消し飛んでしまって当然なのかもしれない。