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一年目


 私は中学の時はバカだった。テストもいつも平均点にいかない。そんな感じだった。そんな私がかわったのが彼女との出会いだった。

 中学2年のある日、私は前期期末テストで酷い点数を取って家に帰れなくて公園に一人で落ち込んでいた。そんな私に声をかけてくれた人がいた。彼女は私の答案用紙とそこにある点数をみると苦笑いをした後にこういった。

「わたしね、今高校生だけど小学校も中学校もあんまり行けなかったんだ」

私は彼女が発したその言葉が理解できなかった。小学校も中学校も行ってないなんてあり得るのか?私が「どうして?」と聞くと彼女はこういった。

「実はわたし、病気でね。今は治ってるけど、その病気の治療で入院ばっかりしてて学校に行けなかったんだ。」

そうなのか。素直にびっくりした。

でも、それ以上にびっくりしたのが彼女の着ている制服だ。さっきから見たことがあるなーと思っていた。よく思い出してみるとこの制服はお王蘭高校のものだ。失礼だけど、学校に行ってない人があんなすごい学校になぜ行けるのか。それがすごく気になった。その気持ちがおさえきれずに私はきいた。

「その制服って王蘭高校のものですよね?」

私がそう聞くと彼女は胸を張っていった。

「そうだよ」

「どうして学校に行ってないのにあの学校に入れたんですか?」

やってしまった。ストレートに聞いてしまった。もっといい言い方があったのに…。彼女もさっきまでに笑っていたのに、いまは困ったような顔をしている。さすがに謝った方がいい。いくら私でもこれだけははっきりと分かった。

「ご、ごめんなさい。その、失礼なこと聞いてしまって…」

「いいよいいよ。えっとね、わたしね、好きな人がいるの。」

「はぁ、好きな人ですか…」

好きな人がいる?これがどう意味なのか私にはさっぱりと分からなかった。そんな私を気にせずに彼女は話をつづけた。

「そう、好きな人。その人がね、王蘭高校を受験するって聞いたから、まだその時は病気が治るかどうかも分からなかったのにわたし必死になって勉強したんだ。」

好きな人と同じ高校に行くため、それがこの人の原動力になったんだ。そう思うと胸が締めつけらあれるようだった。私も王蘭高校を目指せば何かが変わるのだろうか。

 「王蘭高校を目指すんだったら私が勉強を教えようか?」

「えっ?は、はい。お願いします」

「うん、あっそういえばまだ私名前言ってないよね。私の名前は藤沢美雪。よろしくね、柏木友美ちゃん」

あれ?私名前いった?

「あの、美雪さん。私、なまえいいました?」

「さっき答案みたときに見えた」

そういえば答案を見せたんだった。忘れてた。この後にちょと美雪さんと話した後に家に帰った。

家に帰るとお母さんがいた。私が王蘭高校を受験するというとお母さんは驚いていた。でも、「自分でそう決めたんだったら頑張りなさい」そういってくれた。

テストのことを忘れているようなのでお母さんと話した後に部屋に行こうとすると、お母さんに呼び止めらた。

「それでテストはどうだったの?」

何だこの母、テレパシーでも使えるか?でもさすがにあの点数は見せられないので嘘をつく。

「まだ返ってきてないよ」

「ダウト‼それは嘘よ。早く出しなさい」

あーやっぱりこの母テレパシー使えますね。というか何で私の母はこんなにいきいきしてんの?何なの?そんなことを思いながら、点数の高い教科から出していく。途中、「今日の晩御飯何にするの?」とか「なんか今日暑いねー窓開けて」なんて言いながら必死に話を逸らそうとしたけど、無理だった。知ってたけど怒られた。30分くらい怒られた。でも、成績に関してじゃなくてテストを隠そうとしたことを怒られた。正直めんどくさい。そんなことを思っていると。「めんどくさがらないでちゃんと聞きなさい」明日は親ってテレパシー使えるよねトークをしようなんて思いながら、怒られた。

 最後にこれから勉強をどうするか聞かれた。お母さん曰く私が本気で王蘭高校に入りたいなら塾にも入れてくれるらしい。でも、美雪さんに教えてもらえるからいいというと、お母さんは、「その人に教わって次のテストで全教科平均よりも10点以上取れたらそれでもいい」といった。もちろんそのつもりだ。というかそのくらいしないと王蘭高校なんて到底入れるわけがない。

 次の日から私は美雪さんに勉強を見てもらった。正直言うと、学校の先生に聞くよりも美雪さんに聞いた方が分かりやすかった。そのことを美雪さんに言うと美雪さんはちょっと赤くなって「わたしは先生に教わったり、教科書に書いてあることしかわからないけど先生たちはもっと詳しく知っているらしい。」でも、テストには教科書に書いてあることしか出ないんだから美雪さんって頭が物凄くいいのでは?そう思って、美雪さんに「美雪さんはいつもテストで何点くらいとるんですか?」と聞いてみると、「全教科90点はいくよ」と言われた。これでも順位は一桁いくかいかないかぐらいらしい。王蘭高校に入るのがどれだけ難しいのかを改めて実感した。

 後期中間テストに私は美雪さんに教えともらったおかげで自分に自信をもって臨めた。やってみた感じだといい感じだった。ある教科を除いては。そのある教科というのは私が一番苦手で嫌いだった数学だ。最近は美雪さんに教えてもって最近できるようになったのに。なんだか美雪さんに申し訳なかった。

美雪さんに採点をしてもらうと数学以外はいい感じだった。お母さんに数学だけ平均から10点以上ではなく平均以上にしてもらえないか言ってみたけどだめだった。5点もだめだった。本当に美雪さんには申し訳がない。美雪さんは「今回の数学は難しいから、大丈夫だよ」といってくれたけどだめな気がする。

後日、テスト返却があった。数学が最後に返される時間割りだった。美雪さんの採点はほとんど間違えてなかった。そして、一番自信があった社会では学年最高点の96点を取ることができた。今のところは4教科すべて平均より10点以上だった。

問題の数学の返却。点数はやっぱり美雪さんが採点してくれたくらいだった。でも、今回の数学は美雪さんの言ったとうり難しかったらしく平均点も低かった。私は希望を胸に自分の点数から平均点引いてみる。すると結果はなんと9だった。それでもあきらめきれずに私は今までにないくらい解答例と自分の答案を見比べる。だけど、先生の採点に間違いはなかった。あと1点。あと、1点分頑張ればよかったのに。そんな後悔ばかりしていると、クラスが一気に騒ぎ出した。何事かと思いまえを見ると、回答に間違えがあり、先生が間違えて丸を付けていたらしい。そして、これによって平均点が少し下がったらしい。そして、自分はこの問題を外していた。つまり自分の点数が平均点よりも10点は上になった。ほんとにうれしかった。

私は初めて笑顔でお母さんにテストを自分から出した。お母さんもこの点数にはとても驚いてくれた。

次の休みに美雪さんにもこの結果と答案を見せるとすごく喜んでくれた。まるで自分のことのように。美雪さんはテストはどうだったのかと聞くと、いつもどうりだったといってすべて90点以上の答案を見せてくれた。この人は優しいのだろうか、それともちがうのか。

でも、これでこれからも美雪さんに勉強を見てもらえるんだと思うととても嬉しかった。

この日は少し話した後、すぐに帰った。

 次の日、私は今までと同じように美雪さんに勉強を見てもらう。でも、今日はいつもとは違う。私が美雪さんと会ったあの日、私は本当にバカだった。でも、今の私は違う。少なくとも普通くらいの頭にはなった。美雪さんにもこの調子でやれば王蘭高校に入学もできるといわれた。そして、私はその言葉を胸に今日も勉強をする。

そして、私はそこから今までのように美雪さんと勉強をたくさんした。そのあとにあった後期期末テストではかなりいい点数を取り、学年でも上の方の順位になることができた。

なのに、私は先生に呼び出された。そこで私は先生に真顔でお前、カンニングとかしてないよな?と真剣に聞かれた。ひどい。私は自分が王蘭高校を目指していて、そこの成績がうえの方の人に勉強を教えてもらっている。そう話すと、先生は私への容疑を晴らしてくれた。というのは私の勝手な妄想で、先生はまだ私を疑っている。

ということで、私はもう一度テストを受けることになりました。先生の前で…理不尽だ。そして私は無事いい点を取りこの先生と一対一という地獄から抜け出しました。その時に携帯を見てみると美雪さんから電話が数回とメールが一件来ていて、そこには「大丈夫?今日は友美ちゃん遅そうだから明日テスト見せてね」とそう書いてあって、私は「すいません先生に呼び出されてました」と送り家に帰った。

 そして、家ではお母さんが玄関で待ち構えていた。そしてそこで放った第一声は「はい、テスト」そこで私は自信に満ちた表情でテストの答案を渡すとお母さんはえっという表情をして、がんばったねとだけ言って自分の部屋にいった。そしてその日の夕食は今までにない豪華さだった。次の日私は美雪さんに答案を渡すと、正直ここまですごいとは思ってなかったといわれた。そして、そのあとにどうして昨日先生に呼び出されたのかを聞かれた。私は昨日のことを言うと、美雪さんは本気で笑った。すごく恥ずかしかったけど、私は美雪さんがこんなに笑うのを初めて見た。こんなに長い間一緒にいたのに私は美雪さんが笑ったところを見たことがなかった。そのせいか、美雪さんが笑っているところを見ているとなんだかとても幸せな気分になった。

やっと美雪さんの笑いが止まった。三分くらいは笑い続けていた気がする。途中止まった時はあったけどそのたびに思い出して笑っていた。そして、今日は勉強のことは忘れていろいろなことを話した。でも、やっぱり美雪さんが笑ったのは一度だけだった。


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