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ふ~ふ~  作者: 辰野ぱふ
7/7

7.

 家に帰ると、恭介は起きていて、ゆるい格好で居間でゲームをしていた。

「あ、おかえり。どうだった?」

 と聞いてくる。

「どうもこうも…」

 と言いつつ、あたしはクサクサしていた。

「ちょっと! レモンちゃんおめでただって! あんた知ってたのに、なんであたしに言わなかったの?」

「あれ? キーコは知らなかったんだ…」

 と恭介はシレっとしていた。

「あんたには言ったって、スガオが言ってたけど」

「ああ、言ってた」

 と恭介にゲームをやめる気はなそうだった。

「仕事の話はどうだったんだよ」

 と恭介は仕事人間のふりをしてきた。

「仕事って言っても…、ただ、なんか、大手のアパレルの自社工場を使えるとか、それで量産の時には安くできるとか、それで、そっちの会社でうちの製品に注目してて、コラボしないかとか、そんな話」

「コラボ?」

「そう。ほら、あそこ、いろいろなパターンのもの置いてるから、おたくのデザインも取り上げてあげましょうか…、そうすればお得ですよ、みたいな…、上から目線の話」

「ありがちだな」

 と言いつつ「お、やった!」と恭介がゲームの中のゾンビを倒した。

「ね、そんなことやって、おもしろいの?」

 と言うと、

「そこそこな」

 と言って、あたしのことをじっと見つめた。

「その、後藤って人、キーコの友達とつきあってたってほんとだった?」

恭介の中の悪魔がずるそうに笑う。

「うん。そうだよ。あんまり顔は覚えてないけど、会ったことあるんだ、あたしは」

「ふうん。大手のやり手ってことは、エスコートもうまいんじゃない?」

「さあ?」

 とあたしはとぼけた。

「肩とか、はらって来なかった? 何かついてるとか言って」

 おいおい、皆同じ手を使うってことなのか?

「さあ?」

 とあたしはまたとぼけた。

「な、おれ、ずっと子どもでいるから、ずっとおれのことを愛せよ。それなりに仕事もするし」

 唐突に恭介が言い、あたしは恭介の目をまっすぐに見ることができなくなった。

 今日はあたしが猫になって、恭介のとなりに寄り添おう、そう思って恭介のとなりに座って寄りかかかろうとすると、

「おい、シャワー浴びて来いよ。酒くせーよ」と言われて、

「はいはい、あたしは酔いどれですよ」

 と、あたしは立ち上がった。

「キーコ姉ちゃんの言いつけまもって、ちゃんと掃除しといたぞ!」

と言って、ジロリとあたしの方を見て

「今日、部屋の鍵かけ忘れろよ。あとでとろとろしに行くから」

つい目と目がからみあいすぎるくらいからんで、あたしはいやらしい気持ちになった。

「おれのために、ピカピカに磨けよ!」

 恭介の声を背中で聞いた。

 天才バカボンのお父さん、あんたは偉い! これでいいのだ。あたしと恭介は。

 あたしたちは、そうやってかわりばんこに猫になって、トロトロしながらやっていこう。なんたって仕事はあるんだし、生活はできているんだから。

 あたしは、今日までたまった汚れとかアカとかを、全部流すぞ! って意気込みで、入念にシャワーを浴びた。

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