表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふ~ふ~  作者: 辰野ぱふ
4/7

4.

 菅生の結婚式から半年経ったったころ、菅生からメールがあった。

『黒澤様

 お疲れ様です。

 突然ですが、後藤さんってご存知ですか?

 恭介さんに聞いたところが、知らないということですが…。

 私たちの学校の出身で、2年先輩です。

紀衣子さんとは郷里もご一緒だとか

大手アパレルの幹部になられているそうで、連絡がありました。

つきましては、一度お話ししたいということなのですが、

ご都合がつきましたら、調整したいと思います。

予定表を見たところ、1日、8日くらいがいいかと思っています。

いかがでしょうか?』

 後藤さん?

 一人思い当たる人がいた。後藤慎吾か? 高校の先輩で、先に東京に出て来ていた人だ。高校時代、あたしの仲のいい友達と付き合っていたのだ。同じ各種学校に進学したとは聞いたことがあったけれど、学校時代に会ったことはなかった。

 話っていったいなんだろう?


 家に帰って、恭介に聞いた。

「ねえ、スガオからメールがあって、後藤って人が会いたいみたいだけど、キョースケも行くでしょ?」

「え? 知らねえよ」

「でも、同じ学校だって」

「てか、メール自体きてないよ」

「え? だけど、キョースケに聞いたら、知らない人だとか…、スガオが書いてたけど」

「そう? スルーしたかな? どっちにしろ、おれ、学校行ってねえだろ。キーコだって。それで会いたいって、意味わかんないね」

「そうかな」

 そんな感じで、菅生に返事をしようにも、はっきりわからない。

 気持ちが悪かったので、次の日に直接菅生に聞いた。

「後藤さんって人だけど、一人思い当たるのだけど、慎吾って人ですか?」

「あ、そうですよ」

 と菅生が名刺を出した。すごい、全国展開でやっている大手アパレルチェーンの部長ってなっている。

「北村さんに直接連絡があったのですか?」

「そうなんです。あの人、年齢的には先輩って知らなかったです。同じ学年にいましたから。時々いっしょにコンパとかした覚えがあります」

「へえ」

「あの、うちの量産とか、外国に発注する時、今お願いしている会社ありますけど…、後藤さんの会社では自社工場があるようで…。そこに入り込めそうなんです」

「それ、北村さんが話だけ聞いて来てくれないかしら。あたしの方針としては、今のまま続けたいわ。長くやっているし、人の関係もできているから」

「社長、綿ニット始めようってお話しでしたよね。その方面でも強いみたいですが」

「うーん、それもタカギで続けて行こうと思ってるの」

 タカギというのは、海外の量産を取継ぎしてくれている会社だ。

 正直、その後藤さんの口利きで製品を少し安くできたとして…、どの程度の製品管理をしてくれるか、とかは現場を見ないと安心できないし、走り出してみないと見えない部分もあるし、改めて話を進めるのはしんどかった。他社との取引関係とか、そういうことはもともと苦手だった。だって、今うまく行っているんだから、わざわざ触りたくない。あたしは、中身で勝負したい派だ。

 それに、間に菅生が入っているというのが、また面倒だった。菅生はけっこう外面が良くて、変に話を進めていたりすると、間に挟まっていい顔しなければならなくなったりして、そういうのが、なんかいやだった。遠隔操作の方が、きっぱり答えを出せることもあるのだ。

「8日の方がいいと思うんで、8日にしようと思いますが、いいですよね?」

 と菅生が話を詰めて来た。

 なんか、しっくりこない。断りたい。だけど、話だけ聞いてみてもいいのか? わからない。まあ、菅生が進めることを全部否定するような感じになるのも、どういうものなのか? 一応、あたし上司だし、今回は従ってみるか。

「う、わかりました」

 と半煮えの気分であたしは了解を出した。


 8日が来た。

 その日は後藤さんに会うために、あたしは6時で仕事を上がった。

 恭介が

「あれ? 何? 今日もうおしまい?」

 と聞いてきたので

「前に言った、後藤って人と会うの。菅生がコーディネートしてくれて」

 と答えると、

「ふうん」

 と、不服そうにあたしのことをじっと見て

「でかい会社の偉い人になってるって、あの話か。スガオ、権威に弱いから、気を付けろよ」

 と言い、続けて、

「キーコ姉ちゃんがおうちにいないんだったら、ぼくちゃんもつまらないから、遊びに行っちゃおうかな」

 と口をすぼめた。「ボケか?」とあたしは心の中で突っ込みながら、

「お風呂くらい掃除しておいてよ」

 とびしっと言うと、

「は~~い」

 ととぼけた返事をして、ウィンクした。

あたしは、「ボケか?」とまた心の中で突っ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ