表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

白球にかける恋2

ガラッとドアを開けて先生っぽい人が入ってきた。

たぶんこのクラスの担任だろう。


「あー、俺がこのクラスを受け持つ・・・」


先生の自己紹介はいらない、トータ君のが聞きたい。


「よーし、それじゃあまずは全員自己紹介をしてもらおうかー。」


よしキター!


「藤正・・・藤太です。・・・皆さんよろしく。」


んん!終わり?

チャ、チャラいよりは断然いい、クールなのね。

・・・寡黙で素敵。


「本多 拓巳で〜す!趣味はマンガ、ゲーム、アニメでー、特技は・・・・・」


チャラいのがいるな。

・・・イケメンだとは思うけど、あんたに用は無い。


「弓原 静葉です。中学の頃は野球部のマネージャーをやってました、高校でもやるつもりです。よろしくお願いします!」


私の自己紹介が最後だ。


「えー、君達はこれから高校生として・・・・。」


担任教師の話が長い。

私は早く入部届けを出さなきゃなんないの!

トータ君と一緒に!


「あー、それから明日部活動の説明会がある。もう入る部を決めてる奴もいるだろうが、それが終わってから入部届けを受け付けるようになるからな。」


・・・なーんだ、今日はダメなのか。

じゃあ早く帰りたいな・・・漫画も描きたいし。

この趣味はトータ君にはバレない様にしなくちゃいけないから、今日が描き納めでしばらく封印しよう。


「よーし、今日はこれまでだな、明日からは早速授業とテストがあるぞー。」


・・・そう言えば新入生学力テストとかいうのがあるって、入学パンフに書いてあったな。

うー、受験終わってから何にも勉強してないからなあ〜。

でもまあ、みんなも似たようなもんでしょ?


「じゃあ今日はこれまで、えーっと・・・藤正、帰りの挨拶を頼む。」


おお、いきなり日直みたいな事をさせられるとは、さすがはトータ君!

滲み出る頼もしいオーラというヤツだね。


「・・・はい。起立・・・礼・・・着席。」


やっと終わった。

早速今日はうちに帰って描き納めだ、描くぞー!


「ねえ、弓原・・・さんだったよね。」


む?なにか用ですか、本多何とかくん。


「弓原さんは野球部のマネージャーをやるんだよね、俺も自己紹介で言った通り野球をやるんだ。」


そんな事言ってたっけ?聞いてなかったな。


「俺ってばシニアでやっててさー、自分で言うのも何だけど結構やるんだぜ!俺が君を甲子園に連れてってやるよ・・・何つってなー。」


いや、シニアとか知らないし。

甲子園?初対面で何言ってんのコイツ?

聞いてもいない自分語りとかキモっ!

甲子園にはトータ君に連れてってもらう予定だから間に合ってるよ。


「そ、そうなんだ・・・うん頑張ろうね。」


としか言えない。

あっ、トータ君にサヨナラの挨拶を・・・ってもういない!?

そんな・・・せっかく隣の席なのに挨拶もしてくれないなんて・・・。

な、何か用事があるんだよね、急いでたんだよね。

よーし、明日からもっと仲良くなるぞー!挨拶して貰えるくらいには。


という訳で翌日。

トータ君に会えるのは嬉しいけど、今日は学力テストがある。

あー、やだなー。

でもそれが終われば部活説明会で、その後に晴れて野球部のマネージャーになれる!

まさかマネージャーを断られはしないでしょう。


そして放課後、無事と言うか当然と言うか、入部届けは受理された。

よし、これで正式に、大手を振ってトータ君と話す大義名分が出来た。

でも今日もトータ君とは碌に話は出来なかった・・・手強い。

あと本多君がうざかった。

何でか知らないけど、やたら私に話し掛けてくるんだよなあ・・・。

まあ私が初日に、中学からマネージャーやってたとか言っちゃったからかなあ・・・変に悪目立ちしちゃったかな。


さらに翌日・・・。

今日から部活も始まる。

そう、これからよ、これから。


「ようトータ!お前も野球部入ったんだよな、まあ頑張ろうぜ!」


「本多・・・君だったね、シニアをやってたって話だけど、頼りにしてるよ。」


「ふ、俺はリトル、シニアとクリーンナップを打っていた男だぜ!俺の力でこの無名校を有名にしてやる。」


だから本多君、君の事は別にイイノデスヨ。

私がトータ君と話したいのに・・・私もトータって呼んでも大丈夫かな?


「何ならピッチャーだって出来るぜ!弓原さんも見ててくれ、今日から俺の伝説が始まるのさ。」


「うーん、でもトータって凄いピッチャーだよ?本多の出番は無いんじゃない?」


キャー!言っちゃった!トータって呼び捨てにしちゃった!

別に大丈夫だよね?クラスメートでチームメートなんだから。

本多もトータって呼んでるし、私がダメな道理はないよね・・・当然本多にも君付けなど必要無い。


「出番無しとは酷えなあ〜、でもそうなんだ。こっちこそ頼りにするぜトータ!」


「ああ、一緒に甲子園を目指そう。」


あ、それ入学式の時に私が言ったことだ・・・。

本気にしてくれてたんだ、嬉しいな。

その“一緒に”に私も入ってると思うと、舞い上がっちゃうよ!


「ふふ、二人とも頑張ってね!」


「おおー、弓原さん、任せてくれよ!でも俺の活躍見たら惚れちゃうぜ。」


「・・・マネージャーにも期待してます。」


うわー!ついにトータ君が会話してくれた!

最初に挨拶してくれて以来だよー!


そしてまた翌日・・・。

学力テストの結果が返ってきた。

五教科合計320点・・・まあ・・・勉強して無かったしね、しょうがないよね?


「しずー、結果どうだったー?」


同じ中学だった舞が答えたくない事を聞いてきた。


「うん、まあ・・・まあかな?・・・マイは?」


「あたしもまあまあ、平均70点ちょっとってとこかな。」


う、私よりだいぶ良い。


「おーすげーな!俺より平均で10点ぐらい高けーじゃん!」


くっ、私は本多と同レベルか。

ってか話に入ってくんな。


「トータはどーよ、何点だった?」


おっ、ナイス本多。

私もチョットだけ気になる。


「・・・いや、俺は・・・。」


「なんだよいいじゃん!見してくれよー!ってうわ!」


「何々?トータ何点だったの、私にも見せてー。」


!?500点・・・全教科満点・・・え、何、本当にそんな人いるんだ・・・初めて見た。

トータって・・・凄すぎるでしょ。

本当に何でこんな学校に来たの?個人の事情に立ち入るのは良くない事だと思うけど、気になるなあ。


「うっわ!トータ君すごっ・・・もっといい学校行けたんじゃん!?」


マイの疑問ももっともだけど、そんな事されてたらトータと違う学校になっちゃうじゃん。

それは困る、気にはなるけど。


・・・そんなこんなで三ヶ月・・・。

トータの事がずいぶん分かってきた。

トータはやっぱり凄いピッチャーだった。

これまで練習試合を五試合やったけど、その全部で先発完投。

まだ一点も取られてないし、ヒットだって二桁も打たれてない。

私だって一応中学から野球のマネージャーをやってたんだから、これがどれほどの事かくらい分かる。

1年生ピッチャーが上級生相手に、それが例え強豪校ではなかったにしろ、破格の成績だ。


オマケに全試合でホームランを放っている。

コレ絶対どっかからスカウトとかされてるよね?

本当に何で?何でうちの学校に?謎だよなあ。

あ、本多も言うだけあって結構上手かった。

でもトータとは比べるまでも無い、と言うと言い方が悪いかな。

トータが凄すぎるだけだよコレは。


たぶん本多もトータがいなかったらうちでエースで四番とかなのかもしれない。

少なくとも同級生はおろか、先輩達の誰よりも上手い・・・可哀想に、相手が悪かったね、チョットは優しくしてやるか。

たぶん勘違いじゃないと思うけど、本多は私の事が気になってるんだろうな。

実際中学の時に三人から告白された事があるし、男子からは私は可愛いと思われてるんだろう。

趣味の事は隠してるしね。


でもゴメンね、到底釣り合わない気がするけど、やっぱり私はトータの事が好きなの。

全然相手にされてない感じだけど。

・・・そう、この三ヶ月で分かった最大の事。

トータは女子に興味を示さない、話さない、顔を見ない。

野球の話にしか反応してくれない。


当然私以外にも、トータの事が好きなんだろうなって()がいるけど、喋っているのを見たことが無い。

もちろん、話し掛けられたら返事くらいしてるけど、それは喋ってるとは言えないよね?

つまり、今の所トータとまともに会話している女子は私だけなのだ。

・・・野球部関係の話ばっかりだし、名前じゃなくマネージャーとしか呼んでくれないけどさ。

でも、女子の中では何歩もリードしてる。

釣り合いがどうとか考えるより、もっと自分をアピールする事の方が大事だよね!

さあ、来週から夏の大会だ!トータ、頑張ってね!私も全力で手伝うからさ!

あと、まあ・・・本多も頑張ってね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ