表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

白球にかける恋

野球部マネージャーの弓原 静葉物語です。

二年前、中学二年になったばかりの頃だった。


「シズ!聞いて!」


親友の悠里が凄いテンションで話しかけてきた。


「朝から元気ね、何よ?」


「あたし野球部のマネージャーになりたい!」


んん?・・・まあ、なりたいならなれば良いんじゃないのかな?

私に断りを入れる必要なんてないでしょうに。

いくら親友とは言え、そんな事を束縛するつもりはないよ?

中学の部活にマネージャーって珍しいけど、別にそれは止める理由にはならないし。


「シズも一緒にやろうよ!」


・・・なんでよ。

悠里がやりたいなら止めないけど、どうして私まで・・・。


「ゆりりんがやりたいならやれば良いじゃん、私はヤダよ。」


時期も中途半端だし、興味も無いし、帰って漫画描かなきゃなんないし。

それにしても“ゆりりん”は呼ぶ方が恥ずかしい。

最初に会った時に『あたしのことは“ゆりりん”って呼んでね。』とか言われて、言われるままにそう呼んできたけど、一年経った今でも慣れない。

本人はきっとなんでもない・・・どころか喜んでるんだろう、『私は弓原 静葉、よろしくね。』と言ったら、『じゃあシズちゃんだね!ヨロシク!』とか言っちゃう子だからなあ・・・チョットだけ羨ましいかも。


「えー、お願い!あたし一人じゃ恥ずかしいし心細いし・・・親友でしょ?」


うわっ、ずるっ。

こういうタイミングで親友とか持ち出すなんて。

これで断ったら機嫌悪くなるんだろうなあ・・・面倒くさいなあ。


「そりゃあ、ゆりりんは親友だけど、私もいろいろやる事あるんだよ?」


「やる事って、あの変なマンガのこと?」


変・・・変だとおお!

私が描いてる漫画は純愛ものだ!変なものでは断じて無い!

ただちょっと性別が・・・男同志ってだけで・・・変かな?・・・変だね。

しょうがないじゃない、趣味なんだから。


「へ、へ、変とは何よ!良いでしょ別に!」


「ねえお願い!あたしの恋を応援して!」


聞いちゃいない・・・んんん!恋?・・・え!?


「ちょ、ちょっとゆりりん!それって・・・ええええ!?」


「ダメ!シズ!声が大きい!」


あんたも声大きいよ。


「え、嘘・・・ゆりりん好きな人が出来たの?」


「う、うん・・・まあね・・・。」


おお、しおらしい。

いつもこうならカワイイのに。


「誰誰誰?うちのクラス?・・・あっ!ひょっとしてマネージャーって・・・。」


「そう、野球部のね・・・・・・。」


こうして私は悠里と一緒に野球部のマネージャーをやる事になった。

決して野次馬根性からでは無い。

何か漫画のネタでも落ちて無いかと期待した事は否定しないが、純粋に悠里の好きな人が誰だか気になったから・・・あ、それが野次馬根性か。

結局、悠里は恋破れた。

いろいろあったのだけど、中学生とは思えないくらいドロドロしてたので、思い出したくないし語りたくない。


悠里は残念だったけど、私にとっては幸運だった。

最後の大会の試合相手、県内でも有名なピッチャーがいる学校と試合する事になり、チームの誰もが絶望していた時に、私だけはドキドキしていた。

一目見てカッコイイと思った。

二度見しても見間違いじゃなかった。

漫画のキャラに使おうという気持ちすら湧いてこないぐらいの一目惚れだった。

チームはノーヒットノーランで負けたけど、それはどうでもいい話でしょう?


あれから約一年・・・今日高校生になった私の隣の席にその彼がいる。

藤正 藤太・・・それが彼の名前だった。

もちろん、試合でスコアをつけた時に知っていた名前だったけど。

あれほどの凄いピッチャーが何でこんな普通の学校に?

いや、そんな理由なんかなんだって構わない。

今ここに彼がいるという事実こそが大事だ。

当然彼は野球部に入るだろう、そして私は野球部のマネージャー経験者。

実に自然に彼との接点ができる・・・ありがとうゆりりん!


「・・・藤正君って、某中のピッチャーだったよね。」


うおお、は、話しかけてしまった!


「・・・」コクリ。


首だけで返事をされた。

くっ、でもここで話しかけるのをやめる訳にはいかない。


「中学の時、私の学校は藤正君にノーヒットノーランされちゃったんだよね、覚えてる?私そこのマネージャーだったんだ。」


あ、こっち向いてくれた・・・けど、なんか凄い申し訳無さそうな顔してる。

ち、違うの!嫌味とか恨み言とかじゃ無くって、私の事を覚えてくれてたら嬉しいなって・・・思っただけなの。

ああーっ!!第一印象最悪じゃない!

待って!慌てないで!まだまだ挽回できる。


「ふ、藤正君はもちろん野球部に入るんだよね!私も高校でもマネージャーやろうと思ってるんだ、一緒に甲子園目指して頑張ろう!」


ってしまったああ!いきなりこんな普通の学校で、甲子園目指しては言い過ぎだったあああ!引かれちゃったらどうしよう・・・連続自爆は取り返しがつかない!?


「こちらこそ・・・よろしく。」


え!?え!?・・・まさかの好反応!

ちょっとぎこちないけど、笑いかけてくれた!

何だろう、甲子園が良かったのかな。

そうか、きっと何か事情があってこんな学校に入っちゃったけど、あんなに凄いピッチャーなんだから、それでも甲子園目指すぞ!って感じで燃えてるんだね!

熱い!熱いよ藤正君、いやトータ君!

よーし!私も頑張るぞー!

・・・私、今テンションやばいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ