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第 44 話 久しぶりの…… 1

 黒猫に移していた意識を何となく広範囲のサーチに切り替えると、城壁の外に設けられている転移の魔法陣に繋がっている城門から、リューグナーの中心街に向かっている黄色い光点を見つけた。


 光点には名前が貼り付けられていて、既に俺が知っている者であることを表している。


『エーバー・トレント?って……東支部のギルマス?それと……ファルケとリーリエって……兄貴と姉さん?』


 なぜかグラオザームの冒険者である彼らがリューグナー(この国)に来ているのかわからない。


 俺が少し難しい表情を浮かべていたのだろう、静かにお茶を飲んでいた殿下が気遣わしげな声をかけてきた。


「何か不都合な事が起こったのか?」


 王弟殿下が心配するのも最もで、今は何もできずにサイラス首領の守備を待っているだけなのだから、その様子をどのようにしてか理解はしていないまでも、把握している俺の表情が優れなければ心配もするだろう。


 もしかしたら、と言う思いを頭に浮かべながら、今サーチにグラオザームのギルドマスターがヒットした事を伝える。


 すると、殿下は少し眉毛を上にあげ、満足そうな表情を浮かべた。


「もう着いたのか、さすがA級以上になると魔法陣の使用制限も一般人とは違ってくるものなのだな」


 殿下の呟きから、彼らをこの国に呼んだのが殿下本人だったという事が推測できる。


「殿下が彼らをこの国に呼んだのですか?」


 確認のためにも殿下に問うと、何の躊躇いも見せずに頷いた。


「この国に到着する前日に周りの者の目を盗んでちょっとね……。まだ3日経っていないし少し難しいと思っていたが、言ってみるものだな」


 小さく頷きながらしみじみと語る王弟殿下。彼らと殿下が知り合いであるという事はこれで確認できたわけだが……。


「殿下は今回の騒動を治める手段の一つとして、彼らを冒険者としてこちらに招いたのですか?」


 ギルマスを冒険者として指名依頼を出せるのかは知らないが、少なくともファルケの兄貴は現役のA級冒険者であるから指名はできるのだろう。


 俺の問いかけからも、俺が彼らの事を知っている事がわかったか、殿下の俺を見つめる瞳に好奇の光が灯ったような気がする。


「君は彼らの事を知っているのだね。あぁそうか君は冒険者だったね、もしかして東支部の所属かい?」


 冒険者はきっちりと何処に所属という事はないが、一番初めに登録した所に所属意識を持つ事が強い。俺は心のなかであまり自分が冒険者である事に重きを置いていないが、あえて何処に所属しているのか問われれば、グラオザームの東支部であると答える事になるだろう、と言うか答えないとここに向かっているらしい彼らに殴られるかもしれない。


 隠す必要もないから彼らとは顔見知りである事も、殿下の推測通り冒険者としては東支部の所属のようなものであると伝えた。


 この世界で俺が知っている人物はほんの少ししかいないが、考えてみれば俺が知っている人物は殿下と関わりがない三の曲輪の人々以外ほぼ全ての人物が殿下の知り合いである事に気がついた。王や姫巫女は親戚だし、近衛騎士たちは部下?その上王城の外部の人物のごく少ない知り合いである東支部の人達も殿下の知り合いであるとか……。


 これが女性であったなら『運命の人ですね』とかになるのだろうか……、うん、気持ち悪い……。


 殿下は俺のそんな心の中の葛藤も知らず、何かイタズラでも考えついた子供のようにキラキラした瞳で俺を見ている、何だか背中がゾクゾクする……。


「知り合いであるなら話は早いな。東支部のギルドマスターであるトレラント卿は、私が信じるに足る僅かな人物の一人だよ。元々貴族でない事も含めてね。この前の勇者お披露目の会の事も彼から知らされて、今回の騒動の元になったリューグナーからの帰国もできたおかげで、君とコンタクトも取れたのだから、彼は命の恩人になるのかな……。また頭が上がらない事が増えたな」


 薄っすらと口元に笑みを浮かべながら話すその姿に、ギルマスに対する信頼感まで滲み出ている感じがした。


 確かに始めて会った時の押しの強さと言うか図々しさは、その配下と言える二人ともども、王族に対して敬意を払うとか何とかしそうもない事は想像がつくことだが。


「泊まっているこの宿の事も伝えてあるので、この国に着けば真っ直ぐここに向かってくるだろうが、私のこの身を生贄のように祖国が使おうとしている事までは伝えていないから、彼らが堂々とこの宿に来るのは余り上手くないかな」


 ゆったりとソファーに座り、肘掛に立てた腕にあごを置いて、少し眉に皺が寄っている姿も絵になる王弟殿下を目の前にしながら、俺もこのまま何も知らせる事なく、この場にギルマスたちを招き入れるのは、やはり随分とマズイ気がする……色々と……。


 殿下にはこの場で例の通信用魔導具を使ってとりあえず直接この場には来ないように伝えてもらう事にする。


 それと、グラオザームの冒険者が(特にギルマスで貴族だし)グラオザームの騎士や勇者(笑)と対峙するのはよろしくないだろうから、ギルマス達に相手をしてもらうのは皇女殿下達に直接手を出したリューグナーの不届き者達になるのだが、その囚われている場所を伝えなければならない。


 俺が直接目の前に転移してこれからの作戦を伝えるのが一番いいのだろうけど……顔合わせたくないんだよね……。


 しかし、そんな事も言っていられないのもわかっている。ちょっと偽装を駆使して俺だとわからないようにして会ってみるのも……と考えたが、後がもっとややこしくなりそうなのでやめた。ギルマス達が何とかなっても、こちらの御仁が何ともならない気がしたからだ。


 殿下にはギルマスと、サイラスさんと両方に通信を入れてもらう。繋ぎがついたらすぐにでもサイラスさんの手駒になってもらわないといけないから、誘拐犯のいる末端貴族の屋敷街の近くにある宿屋にとりあえずギルマス達には行ってもらう事にする。



 それと、殿下にはもうこの国には居ないんだよという事を匂わせてもらう事にする。念には念を入れて。殿下はもう例のダンジョンの近くにまで行っている事にしてもらわないと後の辻褄が合わないからね。その辺りはギルマスも深く聞いてはこないだろうけど、あの人も貴族であるのだし、言わずもがなの所には突っ込んでこないだろう、王弟殿下が相手であれば……。


 サイラス首領にも連絡を取り始めた最初から、王弟殿下はこの国にいない事として話をしてもらっている。あちらもおかしいなと思いながらも、深くは聞いてこない。ただ、王弟殿下の優秀な手駒(俺)が、今行われている事に対して親切にもサイラス首領側に手を貸しているというだけ。


 差し迫って、俺の今のステイタス偽装の数値をどのよう改竄してギルマス達に会おうかな、と黄色から緑色に変化した光点を見つめながらその事に腐心する俺だった。


何とか一月空けずに投稿できました。まだストックができません……。

こんな時に来週は6日間の京都旅行。思いっきり幕末に浸ってきます。それと刀……。

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