第 42 話 反撃の狼煙⁉︎ 4
「……いきなりでこの様な事を聞かされて信じられないと思うだろうが、これが今現在起こっている事のすべてだ……。特にヴェスターの事は……私の言葉だけで信じる事は難しいだろう?」
「…………」
重苦しい沈黙が首領の心根を表している。今彼の頭の中では彼自身の知っている事と知らされた事、それと王弟殿下から聞かされた事を冷静に分析し、どちらがより整合性が取れているか計算しているところなのだろう。そうゆう事ができてこそ、国の上に立つ者なのだから。
王弟殿下の落ち着きは、どこかでそんな計算がきちんとできる自分の学友を信じているから生まれてくるものなのだろう。
「物的証拠では無いが、ヴェスターともう1人悪巧みをしていた人物……」
俺が目撃?した、太った金持ち臭バリバリの男の風体を、通信先に伝えた。
「……それは……商業ギルドの会頭と考えて間違いないな」
ため息交じりの返答が魔道具から返ってくる。
今殿下の居るこの高級宿の持ち主が、その商業ギルドの会頭らしい。
「決まりだな。だからこう大ぴらにこの部屋に攻撃を仕掛ける事ができるわけだ」
殿下は今も続く外の廊下から響いてくる、攻撃魔法が結界に当たる派手な爆発音を魔道具を向けて相手に届く様にした。
「いくらこの国掛かりであったとしても、この宿の持ち主が絡んでいなければ難しいと考えていた。それが商業ギルドの長でることまでは想像できなかったがな」
リアルな攻撃音を聞いて殿下の言葉の真実味が増した様だ。大きなため息が聞こえてきた後に、少し吹っ切れた様な、先ほどまでと比べて力がある声で返答があった。
「殿下はこれから如何なされるか?このままこの国に滞在されてもお互い良い事が起きるとは思えませんからな」
これからの行動は殿下の方は簡単で、皇女殿下達の身柄が夫君に引き渡された事を確認したら直ぐにでも、俺の転移で一気に飛ぶことにしている。
それに引き換え、サイラス首領の方はと言えば、一番信頼していたとも言える義理の兄に裏切られているくらいだ。はっきりいって誰が敵だか味方だかわからない位詰んでいる状態だと言えるだろう。
危うく命を利用される所だったこちらとしても、首領達にコケられると今回は何んとか厄災から逃れられたとしてもこの次にまた、と考えるのも(俺が)面倒くさいので、俺が探ってわかっている完璧に首領と敵対している奴等を伝えることにする。鑑定はレベル2までしか持っていない事にしているが、王弟殿下に対しては今更なので、自重しない。
『もしかして、解析のレベル上がったかもしれない?』
そう、自重しない事を意識したからか、今までサーチでその居る位置位しか表示されなかった、十分離れた所に居るはずの皇女殿下達を拉致監禁している奴等の名前が赤い光点と共にマップに浮かび上がる。取り敢えずわかった所から紙に名前を記入していき、それを殿下に渡した。
今さっきまで、『太ったこう言う格好の〜』や『瘦せぎすの〜』とか、その風体で何とか目撃した人物の事を伝えていた奴が、いきなりでその人物の名前を書き出し始めたら、それはもう胡乱気にこちらを伺うのは仕方ないことだ。俺自身なんでこんなことまでできるのか、我がことながらびっくりしているのだから。
『名前がわかることは、まぁ、解析のレベルが上がったからと言う、魔法ファンタジーで納得という形の棚上げをしておくこととして、敵か味方かの判断はどの様にしてくだしているのか?……ケイさんなので何があっても驚きませんけど!』
心の中でそう念仏の様に唱えてみる。
ケイ曰く、解析でわかる個人の情報と今の政治的状況を鑑みて、そう難しくない分類を何種類か掛けて答えを出しているとの事。
例えば、その個人又はその家の出身。大きく分けてグラオザームかムーティヒ(帝国)かそれ以外か。
宗教に熱心か、熱心でないか。
根本的な問題度して人間かそれ以外か。これはほんの一滴でも人間以外の者がその血、つまり先祖にいる場合種族の欄が人間とはならない程、今のクソ女神は人間至上主義らしい。
など、いくつか重ねがけして行って分類した上に、称号からわかったことと今現在の政治状況などケイなりの分析をさらに加えて、結構精度の高い敵味方分布マップができたと自画自賛している。
だから、紙に書き込むのは、ケイのお墨付きのついた赤(敵)と緑(味方)の光点のみ。
殿下も知っている様な人物もいる様子で、書き込んでいく名前を確かめる殿下の顔色も徐々に悪くなっていくのがわかる。
赤は今回この国に我々と共にきた騎士や魔術師を筆頭に、グラオザーム上層と繋がっている大物商会関係者やそれに繋がる貴族。それと、敵対するはずのムーティヒ帝国にルーツを持つ商会や貴族。こちらの方の者には種族が人間となっていないものが少なくない。
今の首領はグラオザームの皇女と婚姻関係を結んだことで、グラオザーム側の人間と思われているからな。
グラオザームは人間至上主義の女神リュゼルリジオンを信仰する宗教国家。これ以上かの宗教の勢力が増大することは、種族が人間として現れない者にとっては死活問題だ。
だから、敵の敵は味方とばかり今回の謀反劇に参加した者も少なくない様だ。
首領の居る邸宅の中にまで赤い光点がある事が、この国がもう終わりかけである事を如実に表している様に感じるのは俺だけか?
グラオザームも結構腐っているし、この世界自身が終わりに近い事は、まぁ知ってはいたけどな。
それも十分問題だが、今は首領に対しての緑の光点、つまり味方の数があまりにも少ない事が喫緊の大問題だ。
味方として伝えることのできる人物の数の少なさと、敵と思われる人数の多さに大きなため息をひとつ漏らして、殿下自身の我が身を削った調査の結果であると前置きしてから、淡々と味方と思われる人物と、敵と思われる人物の名を伝えていった。




