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第 27 話 王弟殿下 1

 俺は列の最後尾から出演者すべてがシリアスを演じているつもりでもコメディー にしか見る事ができない群像劇を笑いを堪えて見ていた。


 なんだかんだと立派な御託を並べても、グラオザームは女神から与えられた勇者(オモチャ)を使って、前々から気に入らなかったリューグナーを手に入れたいだけなのだ。


 真実は、政略結婚と言えども非常に仲睦まじいと言う噂が他国にまで聞こえる、共和国首領と第一王女の仲を捻じ曲げてでも……。


 折角手に入れた勇者(秘密兵器)ならば、態々公表する事なく隠密裏に作戦を決行すれば成功率も格段と違うだろうに、リューグナー(相手国)の間諜が含まれているかもしれないこのような場を設けてこれから行おうとする事を大々的に公表するというのは、まるでオモチャを自慢したい子供のようだ。


 それがこの世界(箱庭)では常識なのか、納めている王のレベルを表しているのか、それとも女神のレベルがこれくらいなのか……。


 正面の舞台の上では真面目くさった顔をした大根役者達が面白くもないが可笑しい寸劇を続けている。


 今舞台の上では恭しく捧げ持たれたやたらとキラキラしい聖剣?が勇者に渡される場面が繰り広げられている。


 あれはこの国ができたとき女神の有難い言葉とともに下げ渡された聖剣で、この国の国難の折遣わすであろう使者に与えるよう国宝として大切に…云々…。


 態々分けなくて、使者を遣わすときに一緒に渡せばよくねぇ…?


『聖剣 無名 Lv,1 通称 姫巫女の涙 初代神託の巫女姫の歓喜の涙から生まれた聖剣と言われている。 レベルはひくいが一応女神が遣わした剣であるので聖剣。光魔法が幾分か増強される』


 解析してみた。俺の方がもっとましな物造れねぇ?って聞いたら、ケイがソウデスね、と軽く答える。


 あんなにゴテゴテとした実戦にそぐわない剣もないだろう。それらも全て女神の本質を表しているのだろうな……。


 それに比べて柏木が腰に差している日本刀もどきの方がレベルは上かも知れないな……。


『片刃刀 無名 Lv,4 ムーティヒ皇国在の亜人であるドワーフ族の刀鍛冶が鍛造したもの 風属性と土属性に適応 使用者のレベルに合わせて増強』


 《亜人存在許すまじ!》とか謳っていながら、利用するときには利用するんだね……。合理的って言えばそうだけど、それを正義を掲げる勇者に使うというのはどんなものかな……。


 勇者達を個別に紹介することはしないようだ。


 きっと王族以外の貴族に勇者の力を一切使わせたくないからなのだろうが……。


 セコイ……。


 なんかやる事なす事全てこの言葉に集約できるような気がするんだよね〜。利用価値がありそうだからと俺を生かしておくのもその一環だから、王族というかこの王国の根幹を成す考え方がそれで俺は助かった(?)のかもしれないが。


 そんな事をボーッと考えながら見るともなしに眺めているうちに一連の茶番劇は終わったようで、いつの間にか勇者達は王族と同じ壇上に上がり、こちらを睥睨する様に立っていた。


「今この場である見た事聞いた事をこの部屋から退出後一切話題として上げる事を禁ずる。言葉としても書簡としても一切だ。これは王と成す誓約である。これに違反した場合は、一族郎党全てを持ってその呪を受けるものと心得よ。魔術師長!」


 宰相がそれまでとは何音か落とした様な重々しい声でそう言葉を発すると、傍に控える様に立っていた黒いローブを着ている如何にも魔法使いと言う面持ちの白い髭を蓄えた老人が、背丈よりも長い杖を振りかざして何事か詠唱し終わるとともに杖を振り下ろした。


 精神に呪を含んだ状態異常を起こす魔法か、広間全体に効果が広がっていくのが察知できる。元々のユニークスキルもあるし、優秀なケイも居るので全く動揺する事はないが、部屋中に目には見えない不安や不満の波動が満ちていく気がする。しかし、これは王命であるから表立っての反抗を表す者は居ない。


 こんな多人数で裏切者が居るかもしれない面前の中、結構国にとって重要な情報を晒すのは如何なものかと思ったが、流石魔法のある世界俺の常識では計れない手段が有るものだ……一族郎党全ての生命を賞罰の秤にかけるところも、この世界が元の世界より随分と生命の価値が低い事を表している様で苦い思いがする。


 あぁ、それを言うなら生命の重みの格差かな。きっとこの広間に集まっている人間の全てより、舞台の上では本條(勇者)に色目を使っている姫巫女一人の生命の方が重いのだろうから……。


 誓約の魔法というか呪詛というか、を掛けられ壇上の王族達(役者)が退出するのを拝礼し見送った後、殆どの貴族達はサッサと退出していった。誰も一言も口を開く事なく皆一様に顔色を悪くして……。


 顔色を悪くしたのはこの部屋で空気の様に控えていた使用人達も同じ事で、広間の一番後ろでこれからどうすればいいのか何も聞かされずにこの部屋に放り込まれ、突っ立ている事しかできない俺の事など誰も気に止めてくれない。


 この城から消える事はそう難しい事は無いけど、一応この城は転送室を経由しないと入場できない事になっているし、俺はこの城の中の様子は知らない事になっているからこの広間から出る事も、まぁしない方が無難だろう。


 俺はサーチを使いながら表面的には在所投げに立っていた。


 さっきまで広間の中央あたりにあった見知った気配、そうギルマスは、サッサとこの広間からと言うか既にこの城から気配が無くなっていた。


 流石のギルマスも身分上は男爵に過ぎないし、この場で魔法を使う事も出来ないから気配を殆ど殺していた俺には、いくら獣じみた勘の持主のギルマスと言えども気付く事は無かったようだ。


 どの位待ったのか、この広間の中に俺しかいなくなって暫く経った頃、俺をこの広間に連れて来た戦闘侍女さんが慌てた様子で俺を迎えに来た。


 そのまままた地下から二の曲輪に戻されるものかと思っていたが、流石にこのままお役御免になる事は無く、この広間のある階からは何階か下がった、実務優先ですと言わんばかりの随分とさっぱりとした装飾の廊下を行き着いた先に連れて行かれた。


 この階では一番偉い人が居そうな廊下の突き当たりにある部屋。扉の前には一人近衛騎士が立っている。俺と侍女さんが部屋の前まで辿り着くと、予め予定されていた事なのか誰何される事無く騎士さんが扉を開けた。


 部屋の中は廊下よりもさらにシンプルで、ザッと見た所ではキラキラしい装飾品も飾られている絵画、花の一本も無い。凄く重そうな両肘机の上に整然と積まれた書類が、この部屋が仕事をする為の場所である事を如実に表している。


 その大きな机の向こうにこちらに顔を向ける事無く大量の書類と格闘している男の姿を見付けた。


「向かえに行かせるのが遅くなって悪かったな。この城から居なくなることは出来ないとわかっていたが、探すのはとても面倒臭いのでな、その場に居てくれて助かったよ」


 全く自分が悪かったとは思っていない声音で、一度も顔を上げること無く男は自分の仕事を続ける。


「待たせついでというわけでも無いが、もう少しでキリのいい所まで行くので、そこにす座って待っていてくれ」


 机と俺の間に鎮座している、これも重そうだがシンプルで座り心地の良さそうな大人が三人は掛けられそうな椅子を持っていた羽ペンの先で指し示した。


 気配を消して横に控えていた戦闘侍女さんが、その声とともに椅子の前のローテーブルにどこからとも無く取り出した茶器をセットする。この世界でよく目にする紅茶に似た飲み物で、俺の意識がそう認定したからかその飲み物の名は頭の中で紅茶と変換される。


 勿論今まで目にした中では誘拐されたその日に同じこの城の中で味わった物のよりも良い香りがする。つまり、一番美味そうな香りということだ。


 このような場所で、正体のわからない者から振舞われた者は、口をつけた方がいいのか悪いのか、このような時の作法は知らない。ローブのフードを深く被ったままの顔を少し上げて窺ってみても、この部屋の主人は相変らず机上の仕事に取り掛かったままだし、戦闘侍女さんは能面面のままこちらを見るばかりだ。


 今の俺は意識しなくても目の前に居る人の正体はわかっちゃうんだよね……。


 シャルク・リヒター・グラオザーム 王弟殿下 22才 副宰相 。


 王様とは随分と歳が離れた兄弟だ。まぁいろいろあったんだろうなぁ〜て言う面構えだね。一見優男、その実誰よりも腹黒。この国を影で牛耳っているのは……って感じ。ケイもそれを否定し無い所を見ると、そう外れても無いのかな……。


 心の中のそんな思いを顔には出さず能面戦闘侍女さんに負けない無表情で、喉も渇いていたし、別に毒に気を使うことも無いのでマナーは無視してせっかく用意してもらえたのでお茶を美味しく頂くことにした。


 こんな状況でなければ何倍も美味しく感じるだろう、えらく高そうなお茶を頂く。


「……ホッ」


 思わず心の声が漏れた。この城に連れてこっられる前から仕事していたので、結構長時間何も口にしていなかった。腰を下ろしたのもいつ以来か……。勿論お茶には毒など入って無かった……。


 フードを被ったままであるが、そんな気の抜けた様子で茶を飲む俺を書類を裁く合間に観察ていたらしい王弟殿下は、余りにも緊張していない俺の様子に呆れた表情を隠しもせず、目の前の長椅子に腰掛けた。




 

話が中々進みませんね〜その上筆も遅い……

こんな作品に付き合って下っさっている方々ありがとうございます!

頑張ります‼︎


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