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第 2 話 グラオザーム王城の客間

(流石王城、予定外の者がいても直ぐ準備できるんだな)

 予定された勇者以外のもう一着。女神の神託で性別まで報せていると思えないので、多めに準備していた物の横流しだろう。でなくても、ありがたいとは思わないが……。

幾ら異世界人と言えども、王様(笑)にピザ屋の繋ぎで会う訳に行かない事ぐらいわかるのだ。


(この世界の神様より偉い天使様にこの格好で会ったけどな……)


 用意されているのは、白い襟が大きめのブラウスに腰まで隠れそうな長めのチュニック。ズボンは丈が膝下程度か、それに長めのブーツを履くようだ。幅広のベルトは帯剣を兼ねている物だろう。流石に剣は準備されていない。


 隷属魔法を掛けているとは言え、ステータスを確認するまで、いや本当は確認しても俺たちのことは信じられないのではないか?


 さりげなく使った解析で見たメイドさんは、護衛の為でなければ監視役だろう。先程居た騎士達とさほど変わらないステータスをしている。まだこの世界の一般人と言われる者を見ていないので比べる事が出来ないが、翻訳の魔道具を隠し持っている事からも、監視役であるのは違いない。


(下手に話せば筒抜か……。まぁこっちから話すことなんてないけどね)


 むこう(勇者達)は気づいてないけど、こっちは知ってるし、と言っても二年前までの事だけど……。


 本城 勇刀(ホンジョウ ユウト)、17才、日本屈指の本城財閥ご令息。

(今着ている制服があそことは違うから、流石の坊ちゃんもあんな事して居づらくて、エスカレーターには乗らなかったようだな)


 テーブルに近づいて先に紺色のチュニックを取る、残りはモスグリーン。ゼ◯ダのリン◯にそっくりだ。奴と色違いのお揃いはゾッとしないが仕方ない。

 一応顔を向けて紺色の方を着る事の確認を取る。

 奴もモスグリーンの方を見てなんとなく嫌な顔をしたが、こんなのは早い者勝ち、さっさと着替える。


 隣の部屋に消えた女子三人のうち、知っているのは一人だけ、本城と幼なじみと言う志津野 雅(シズノ ミヤビ)。こちらもなんかの流派の家元のお嬢様。俺にしてみれば、同じ穴のムジナ。

 勿論、本城のした事は絶対に許せない事であるが、何も知らなくてしでかしたバカと、結果が予想できるのに止めなかった奴とでは、どちらの罪がより重いのか。

 俺は心許していた分、志津野の事が許せない……。


 意識が隣の部屋に向かったからか、なぜか壁が透けた様に隣の様子が見える、それも音声付きで……。

 その上、部屋の中に四人居る事を認識したと同時に四人のステータスも頭に入って来た。


(コレも解析なの?どこまで行っちゃうのか、俺の身体……)


 隣との壁を凝視しているのも変だし。何より着替え中な訳だし。

 壁に背を向けて座り監視メイドさんにお茶をもらう。

 情報収集の為音声だけは聞いておこう……。


 〈「な、なんか凄かったねぇ〜エリザベスじゃなかった、リ、リ、リス…姫」

  「リスティーナ・メーディウム・グラオザーム殿下よ彩芽。これからの私達の生活を保障してくれる、言うなれば保護者の代表みたいな方なのだから、名前はしっかり覚えなくてわね」

  「…リスティーナ・メーディウム・グラオザーム…リスティーナ・メーディ…」〉


 可愛らしく何度も繰り返しているのが、伊勢 彩芽(イセ アヤメ)。知ったかぶりで意見しているのが志津野雅。

 そしてメイド以外のもう一人が柏木 恭子(カシワギ キョウコ)か。


 〈「どぉ〜してぇ〜!なんでぇ〜!わたしのだけドレスじゃないのぉ〜!」〉


 こっちの部屋はまったくの無音なのに対して、女子部屋は流石だ…。騒いでいるのはただ一人だが……。


 〈「そんなの、誰が見たってアヤがお子ちゃまだからでしょ。いいじゃない服を用意してもらえただけ。カワイイよそのワンピース」〉


(結構辛辣だなカシワギキョウコ……)


員数外の俺の服よりお子様用の服がすぐ準備できた事の方がすごいな、流石王城。


 さっきのお姫様の姿や、騎士の格好や、用意された物から想像すると、この時代の文化レベルは中世後期のヨーロッパのものに近いようだ。それに魔法が入るとどのような物になるのかはまだ判らないが。


 〈「でも良かったね、さっきのお姫様が着ていたみたいなドレスじゃなくて。あんなヒラヒラでぎゅーぎゅーのだとちゃんと動けるか自信ない。コレもア◯バのメイド服みたいで少し恥ずかしいけど、丈が長いだけいいかな。お姫様と同じでも雅なら似合いそうだけど」〉


隣の部屋の会話は続いている。


お子様は靴までぺたんこでおかんむりとか、ドレスの色が逆、腹黒ミヤビ(知ってる)が臙脂では無く黒を着ろとか、女神にスキル の上乗せを『もうひと声!』と強請ったアヤメは、大阪のおばちゃんだとか……。


笑いそうになって、口元を隠した。


 意識を背後に持って行かれていたが、横の廊下の先からエドゥアルドと数名の気配が近づいてきている事がわかった。


 背後から意識を切り離し、準備が終わって目の前で同じようにお茶を飲んでいる本城に意識を向けた。


 こいつは今何を考えているのだろう。

 女神に言われた事に納得してここにいるのか。

 そもそもこいつの女神(リュゼ)と俺の天使オネット、どちらが正しい事を言っているのか。それとも両方正しくないのか。


 俺の視線に気が付いたのか、顔を向けた本城と初めて目が合った。

 俺の瞳の色に気付いたのか、驚いたよに奴は身体を揺らした。

 早々見ないからねオッドアイ……。

 これで尚更俺には気づくまい……。

 お前の知る国枝 航(クニエダ コウ)はもう何処にも居ない……。

 ここに居るのは天海 航(アマミ ワタル)

 異界からの断罪者。








一度差し替えています。

三人称から一人称に変えました。

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