第 25 話 大広間
何を警戒しているのか知らないが、戦闘侍女さんがやたらぐるぐると俺を連れ回して目的地と思われるこの城の中で一番空間を取っているように見える広間に連れて行かれる。
王城の中のマッピングはすでにケイが以前の俺の記憶や女神すら凌駕する知識とのアクセスやらなんやかやからほぼ完成してあるので、何処を連れ回されても現在位置ははっきりわかる。その地図にサーチした結果も加え、多重階層の地図の上を移動していく自分の光点と先に見える沢山の敵を表す赤い光点。目の前にディスプレイがあれば、ほとんど地球でゲームをしていた世界そのままだ……。
少し現実世界から思考が乖離しそうになった所で目的地に到着した。
広間に入る扉にも階級があるようで、もちろん俺は王族達が登壇する雛壇から一番遠い後ろの扉から入室する。開け放したままの扉から広間に入る時には、またいつものほんの少しの抵抗感を感じながら、扉の上に取り付けられている魔石の確認をかませるほど全く注目されることもなく、一番後ろの壁にもたれ掛かり室内のお貴族様達を観察することにした。もちろんケイの力も借りて……。
この広間も以前体験した謁見の間に近いセキュリティが施されていると思われるが、流石にこの部屋全てを網羅する何重もの高位結界を張り続けるのは難しいと見えて、部屋の後ろのこの辺りは軽い魔法阻害障壁が張られているくらいだ。前の方に行くほど俺の目には何層もの紗が掛かるように結界が濃く張られていく様子が見える。
以前俺の目に触れた重鎮達は入室していない様子で、マップで確かめれば違う階の一部屋に固まっているのがわかった。勇者達(笑)もいる。
どの位レベルが上がったのかステータスを覗いてみたい気もしたが、距離も結構離れているし、この城の魔石による魔法阻害は俺には全く関係なく魔法を使うことができるレベルではあるが、魔法使用の察知能力が有るものがどれ位いるのかわからないから、みつかると面倒くさそうなのでやめておく。奴が巫女姫の聖(性)勇者とかになっているのを見るのも嫌だしな。
この世界には正確な時計が無いので時間にはルーズなのかもしれないが、結構な時を突っ立ったま待たされた。ここに招待されているのはこの国でそれなりに身分のあるものだと思われるが、自分以上の身分(ここでは王様)に招待されているからか、文句も言わず近くの人達と談笑をしながら待っている。
サーチや鑑定でも流石に心の中まで知ることはできないから、腹の中と表情まで同じかどうかわからないが……。
俺のようにローブを着た姿の魔法使いも所々に見られるが、そのローブはキラキラと刺繍や魔石が縫い込まれているようなものがほとんどで、俺の何も施されていないローブはこの城に勤めている下っ端な魔法使いと思われているのだろう、時々向けられてくる視線は路傍の石に向けられるものと変わらない。
こんな広間の一番後ろの方に居る俺の周りの者達は招待された中でも身分で言えば低い方であるはずだがこの通りである。
この辺りの会話に耳を傾ければ勇者召喚の話は全くなく、このイレギュラーな王城招集が何の目的で行われたものであるのかの探り合いが殆ど。身分もどっこいどっこいならば、情報収集能力も同じような者が探り合っていても何の成果も得ることはできないだろう。
結局は自分の小さな自慢話に終始して、ここでもドングリの背比べを繰り広げている。
暇が持たなくなったので、周りに注意をしつつ少し詳しいサーチの輪を広げて行く。
この広間から離れて赤の光点も無視して青の光点を探す。この広間の中の前の方に居る青い光点の人はサーチするまでもなくギルマスだろうなぁ〜。まだ俺には気がついてない模様。
王族や赤の光点が固まっているのが部屋と同じ階に、黄色の光点と寄り添うように点滅している青い光、あれがパルメだろう。とすれば、今日は皇太后陛下に着くと言っていたのだから、すぐ横の黄色の光点は皇太后陛下だろうか。皇太后陛下と言うくらいだから今の王の母親なのだろうに、この微妙な距離感は何なのだろう。今の王は実子では無いのか?パルメからそんな話聞かなかったと言うか、王家の話なんて全くしなかったし……。王族なんてそんなものなのか?……。
おっ!光点がうごきはじめた。もうそろそろ始まるのかな。
数人づつが固まり一瞬で消えると、この広間の階の転送室であろう所に現れる。
そんな様子をぼんやりサーチしていると、広間の前方の方から先触れからの報せが伝言ゲームのように伝えられて来る。
その声を聞いた者達は、決められた位置があるように前から順々に並んで行く。それはまるで久しぶりに見る高校の朝会の時の様子によく似ているような気がした。
俺も壁から背中を離し、扉側の一番後ろの列に並んだ。そして、気配を消す……。
結構な人数、50人以上100人未満が(ケイに聞けばわかるけどそこまで重要じゃないしね)並び終わり、そう間を置くことなく王族以外の重臣だろう人々が入室してきた。
一番後ろに立っていても何をしているのかがわかる、まるでコンサートホールの舞台のように見える雛壇の下段にこちらを向いて並ぶ重臣達。雛壇の一番上の舞台には豪華な椅子が6脚並んでいる。そこに静々といっそう煌びやかな衣装を纏った人々が入ってくる。
誰だかわからないといけないし、少しぐらい探ってもいいよね。
一番先頭を切って入ってきたのは、姫巫女(笑)より幼く見える。このグラオザーム王国の美人三姉妹……の一番下の姫だろう。一番上はもう嫁に行っているらしいし。…あぁ確かに第三王女様だ。そして次はお馴染みの第二王女様。
少し間を空けて、姫様達より幾分か年増のご婦人。王妃様か?いや、称号は王妃ではなく第三王女の生母となっている。このご婦人以外妙齢の女性はいない、正式な王妃はこの場にいないようだ。
そして、この場所での主人公である王。この前の謁見の時よりよりいっそうキラキラした衣装を着けての登場だ。
その後に続いたのがパルメの元主人である皇太后陛下だろうか。あまりこのような場に出てくることがないのか、今まで見られなかったざわざわとしたさざめきが聞こえる。
先ほど抱いた疑問、王の生母なのかどうなのかは称号を見てもわからなかった。ただクラオーザム王国皇太后と表示されるだけだし。ただ年齢を確かめると(女性に対して失礼か…)王と10歳しか離れていない。まぁ、なさぬ仲なのはたしかだろう。
その後は、どうも覇気が見られない皇太子。称号の注釈に第四王子とある。
……第一、第二、第三王子どこに行った……。
「……」
この国の恐ろしさをかみしめている間にも、セレモニーは進んでいる。
まぁ、ボーとしている間も俺の並列思考であるケイが、起こっている事象を認識しているけどね。ただ、そのせいか心の中の一人ツッコミが増えている気がする。
マイクのような者は使っている様子は見られないので、風魔法の一つか結構離れている司会者(宰相閣下らしい…ケイの解説)の声がよく聞こえる。
「……皆々も知っている数百年前の悪夢が再びこの大陸に襲いかかろうとしている。悪魔の使いたる魔族が、女神から温情により与えられた大陸に満足することなく、恐れ多くも我が大陸へその傲慢たる魔の手を伸ばそうとしている。これは、姑息なことでその名を轟かすリューグナー共和国に、その身をもって潜入し我が国のため尽くして下さっている第一王女様からの貴重な情報により知り得たものである。あの国は女神様のご神託に逆らい魔族とも貿易をし、その富のみを求めるハイエナのような国である事は皆が知っている通りであるが、今この時もその目こぼしができる範囲を超えて、ついに魔族の手先としてこの大陸に覇を唱えようと行動を起こつつあると、姫からの命を賭けた通告で知る事となったのである」
咳き一つ聞こえない中、朗々と宰相の声だけが響いている。が、ここから見える範囲の者達の顔には知っている事を聞かされているというより、初めて聞く事に驚いているような様子が見えるのだが、それはこのあたりにいるのは下級の貴族だけだからだろうか?。
宰相の言葉に頷きを返しているのは、雛壇の上にいる方々のみのように思えるのは俺だけか?
「魔族及び亜人がこの大陸に存在する事を良しとしない女神様の教えを守る、宗教の守護者たる我がグラオザーム王国が、魔族どもの先兵と成り下がったリューグナー共和国に鉄槌を下す。」
この広間の前方と後方で、宰相の言葉に対する温度差が大きい気がするのは、宰相の発言に関する理解力の差なのだろうなぁ。
下手をすれば、第一王女の嫁ぎ先がリューグナー共和国の元首のところだった事を知らない者もいる位のようだ。
リューグナーとこの国の関係は、今次々とケイのアクセスによってその真実を理解している最中だ。今まであえてこの国の歴史のような事や事件や事実は、実際耳にした事しか知り得ないようにして来た。この大陸に在る国の事も、ネルケから聞いた知識以外はあえて表に上げない、つまりケイからの解説を聞かないようにしていたのだ。
だって、何でも知ってしまったらつまらないだろう?ケイは世界の真理レベルまでアクセスできる能力を持っているのだから、俺が尋ねない限り答えないように言ってあった。まぁ何もかもすべてを知るにはまだ俺のレベルが足りていないが、この国の実情や真実を知る位は取るに足らないとはケイの弁だ。
だから、こんな所に連れ来られて、ただただ面倒ごとに巻き込まれそうな今、何も知らずに巻き込まれるのは余りにも無謀だし腹がたつから、流石にケイからの真実を聞くことにしたのだ。
宰相の話している第一王女の政略結婚の事実も、魔族の侵攻の事実も無いと言う事を……。
24話で10万字超えてました!
ダラダラ長い?まだ冒険してないぞ!




