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第 21 話 ギルド東支部 ……ふたたび

 智天使(オネット)の愛を十二分に感じて、ステータス確認は終わった。


 こっちに連れてこられてから一番疲れた1日だったかもなぁ。


 夕食後に待っているだろうネルケによる尋問も精神的疲れを助長する……。


 俺は異空間部屋に入って、もふもふに癒しを求めるのであった……現実逃避とも言う……。



 言えない事があるのはお互い様なので結局その日の夜の尋問は有耶無耶のまま、異空間から出したリンをもふもふする事でお茶を濁し、必要な時にまたお互いが話せるようになった時に話す事で一応のカタをつけた。



 その後も俺たちはこれと言って変わらない日常を過ごし、ただ中々重ならない二人の休みにヤキモキしながら過ごしていた。


 何故なら、俺だけが休みの日に一人で魔獣の討伐依頼に行く事をネルケが頑として認めないからだ。この前の俺の初討伐で俺の実力も十分に知っている筈なのに、友情の在処を引き合いに出してまで、俺が一人で討伐に向かう事を嫌う。


 これが俺を自分の討伐の稼ぎのために利用する目的があってのものだったりしたのならば俺もネルケの言い分など気にしないで討伐に出掛けたのだが、それが純粋に俺の身を案じての事からであるとわかるからそんなネルケのを置いてまで討伐に出る事ができない。今の俺であれば幾らでも気付かれずに出掛けることは出来るのだが……。


 そんな訳で、俺とネルケが連れ立って初討伐の諸々を処理するためにギルドに赴いたのは10日以上過ぎた後の事だった。


 そして何故か俺たちは、グラオザーム王国王都冒険者ギルド東支部前に立っている。


 普段ネルケの使う事が一番多い冒険者ギルド本部は、本部という建前上あまり細かい討伐依頼などの事務処理をしたがらない傾向にある事と、街中の依頼を受ける事が殆どなので実情俺たちが処理してほしい魔獣の買取は受け付けて貰えない可能性がある事。


 その点南支部も東支部も問題はないので、距離的に言って王城から近い東支部に向かう事になるのは至って普通の事だと思う。俺も元々冒険者ギルドの支部は東を利用する気でいたのだし……あのような事が無ければな!


 俺の中では甚だ不本意な、《ギルマスに目をつけられちゃったよ》事件。あの後一度もギルドに足を運ぶ事がなかったから俺の扱いがどうなっているかわからないが、忘れていてくれそうも無いだろうし…それこそ俺一人なら何とでもできるからいいけど、ネルケが一緒だし…何を言われても拗ねられても、一人で先に処理しに来ていればよかった……。


「ハァ…」


 東支部前の道端で、大きくため息をつきながら頭を抱えてしゃがみ込んだ俺を


「大丈夫だよ、冒険者って見た目はあれだけど、根は優しい人が多いんだから」


 と言いながら、心配して撫ぜてくれるネルケのその優しい心がイタイ…。


 そう言えば、この支部で冒険者登録した事を言ってなかった。勿論その時に起こった様々な事も…。


 俺がここで頭を抱えているのは勿論ギルドに気後れしているからではない。ギルマスがギルドに居るのは諦めるとはしても、残りの二人の存在が無い事を祈っていた事も虚しく入り口の近くで出迎えるように存在する二人、兄貴と姉さんの魔力をサーチで察知してしまった事と、それに近付いて来る強大な魔力、ギルマスに気付いてしまったからで…。


「居なくていいのに…来なくていいのに…」


 こんな怪しいローブ姿で出かける事を笑顔で許してくれたネルケを巻き込んでしまう事に、俺のなけなしの良心がシクシク痛む。きっとあの方達は、俺を思い切り楽しむためにネルケを利用する事だろう。ネルケには気付かれる事なく…。


 わかっていても俺は拒否する事ができないだろう、ネルケを友達と認めた今だから……。


 いつまでもこうしてはいられ無いので、怪物たちの待つ扉に向かう…イヤだけど……。


 見つからないなんてことないと思うけど、最後のあがき、ネルケの背後に隠れるようにして扉を潜る。


 こちらのギルドを余り使ったことがないと言っていたネルケは、人は沢山いるのにやけに静かな一階受け付けの様子に小首を傾げている。


 冒険者ギルドの中でも一番お上品だと思われる本部ギルドでも、受け付け辺りはもっと猥雑で煩いものである。入って直ぐのこの場所が人はいるのにやけに静かで、察知のスキルを持っていなくても感じる張り詰めたような空気。


 その上背後にいるはずの俺の気配も感じられなくなっただろう(俺、思わず気配をけしちゃったから…)ネルケは慌てたように振り返った。俺がくっつくように後ろに立っていることが確認出来て逆に驚いた顔をしている。


 ネルケがこちらを振り返ったと同じくして、超接近して来る気配が三つ(勿論気配は消してるけどね…)。


 老若男女関係なく見れば籠絡されそうな笑顔が二つと、どれだけ剛な者でも初見ではちびりそうな凶悪な笑顔が一つ…。


 ネルケの両肩を掴み、振り返れないようにして、三つの笑顔と対峙する。


 凶悪笑顔が口を開いた。


「随分と久し振りだなぁ。待ちくたびれてこちらから出向きそうなこ奴らを抑え込むのも面倒になっていた所だ」


 深く被ったローブの下、無理矢理つり上げた口角も痙攣する。そんな俺の顔を目の前で見せられているネルケの額のシワも深くなる。なぜなら、背後の様子を確かめようと体を捻ろうとするネルケを、力尽くで押さえ込んでできないようにしているのだから……。


 パッと見れば麗しいが、纏う空気は凶悪笑顔と変わらない美人さんが腰に手を当て微笑んだ。


「殿方が淑女を待たせるのはいけないことだわ」


 柔らかいが、少し冷気を感じるその声に、


「そうだぞ、もう30まで時間がないネーさんを待たせるのはいけない事なんだぞ」


 と、空気を読む事のない合の手が……その場の温度が5度は下がった。


 背後のそんな空気に、ネルケの肩も震えた。もう振り返ろうとはしていない。


「ギルマス。訓練場使用許可願います」


 しかしそこにはギルマスの返事を聞く事なく、兄貴の襟首をむんずと掴んで引きずり訓練場に向かう姉さんの背中が見えるだけだった。


「えっ?オレまだワタル(弟子)と話をしてないよ〜!」


 兄貴の段々と小さくなる叫び声を残しながら……。


「…オッホン…あぁ〜ここに居るのもなんだしな。上に行くか…」


 そこに漂っていた微妙な空気を咳払いで一喝すると、いつの間にか背後に控えていたエッシェさんにそう伝えるギルマス。


 俺はそんなギルマスをほっといて本来の目的である魔獣等の素材買取窓口に向かう。


 まるきりスルーされた事に驚いた表情を浮かべる二人に気を使い、俺にこのままでいいのかと小声で聞くネルケを促して、俺はそのまま買取窓口へ足を進める。


 俺は怒っているのだ。兄貴と姉さんが居たら迎えに来そうな事は想像できたし、二人だけなら何とか目立たずにやり過ごす事もできたのだ、そうこのギルマスさえこんな所まで出て来なければな!


 特定の人物のみに放った威圧の意味にまで気が付いたのか、一瞬ばつの悪そうな表情をした後、無言でギルマスとその秘書は自分たちの部屋に戻っていった。そんな時でも秘書は仕事を忘れずに「そちらの用事が終わりましたら迎えに参ります」の一言を俺の耳元で囁いて。


 この状況を理解できていないだろうに、ネルケはただ黙って俺に着いて来てくれている。この空気を読める所は何所かの誰かとは大違いだ。今頃痛い目を見ているだろう人の断末魔がこの床下から聞こえてきそうだ。


 ギルマスに構われていた俺たちに対して暫く嫉妬のこもった視線や、唯単純な好奇心の視線が向けられていた事が分かったが、それもギルマスが姿を消せば収まり俺たちが受付の一番奥、表通りから反対側にある中庭に面した素材倉庫の近くに設けられて買取窓口に向かう事がわかると、興味を失ったように関心が離れていった。


 ギルドのはずれにある事からそう人目に立たないが、念のためホーンラビット数匹と角数本をギルドに入る直前アイテムBOXから取り出し持ってきていた。


 俺とネルケ、背負ってきた袋からそれらを取り出しカウンターに並べた。


 下手な下処理をしたものより何もしないほうが買取価格がいいという事で、アイテムBOXから取り出したそれらは今日の朝のとれたてですよ、と言うくらい新鮮?だ。


 通常常時討伐・採取依頼扱いの魔獣や薬草など何種類かは、一々事務手続きを取らなくてもその本体や討伐証明部位を直接この窓口に持ってくれば、ランクを上げる為に必要なポイントもつけてもらえるようになっているらしい。


「コレで全部かね?」


 俺とネルケのギルドカードを受け取りながら、ここはお姉さんではない年嵩のおじさんの受付さんが確認してきた。


 俺が小さく頭を振ると、魔道具に通したカードを確認して、カウンター横の外に通じる扉を指差して俺たちも共に外に出る事を指示する。カードには名前とランクしか表示されていない筈だけれど、俺がBOX持ちだということがわかる印でも付いているのだろうか、手ぶら状態の俺たちを何処かへ案内する。


 基本このカウンターでは。数がそう多くない小さな魔獣と採取した植物や鉱物の買取のみ行い、大きい魔獣や数が多い時は直接裏の倉庫に持ち込むのだそうだ。なにしろそのような時は普通荷車で運ぶ事になるのだから、俺のようなBOX持ちはそう多くないし。


 状態がいいものも悪いものもまとめて買い取ってもらった。ホーンラビットの本体15匹と角は21本。


 しめて1380GZそこからギルドの手数料など20%引かれて、俺たちの手元に渡されたのは1104GZ(大銀貨1枚小銀貨1枚小銅貨4枚)だった


 買取表が掲げられているわけではないので俺には仔細はわからないが、ネルケが何も言わず受け取っているところを見るとこれが適正価格なのだろう。


 この時はじめて俺は、あのゼ◯ダ服が如何に高額なものだったのかを実感し、また冒険者で身を立てることが如何に大変であるかということや、身分の差そのものが命の重さの格差すら生んでいる事を知った気がした。








随分と間が開いてしまいました……。

中々コンスタントに書けなくて……。

頑張ります‼︎

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