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第 12 話 冒険者ギルド 3

 目の前で繰り広げられる舌戦、時々美人さんの拳あり、にいい加減付き合いきれないと本格的にバックレ方を検討し始めた時、今まで全く感じる事のなかった大きなプレッシャーが、いきなり上階から降り掛かってきた。

 正面扉からまっすぐ二階へ伸びる階段の一番上、カウンターを含む一階ホールを見下ろせる位置に、そのプレッシャーの塊は立っていた。

サーチで軽く覗いた時に、上の方にあった一番大きな力の波動。結界の中にいたためか全く隠していたのか、その場に来るまで一切気づかなかった(忘れていた)。

(人間?だよね、ここに居るんだから……)

 と、思うくらい人間離れした肉体。地球にはいないだろう3メートルに近い身長とそれに見合ったような身体。獣人、それも熊か何かと言われても納得してしまうようなご面相。

 もしかして、この人が……?

 思考を巡らせていた最中、その濁声が降ってきた。


「お前たち、随分と面白いことしているようだな。ほら、誰も仕事をしとらんと、お前らの出し物見とるぞ」


 兇悪な笑みを浮かべ見下ろすその姿に、ギクシャクと動き出すギルド職員たちと、壁際に後ずさる冒険者(荒くれ者)たち。

 その場のしゃがみこんでいるのも何人かいる。クリーンが必要みたいだね……。


 オイ、味方脅してどうするの?って、雰囲気のまま、ゆっくりと階段を降りてくる。


 漫才を繰り広げていた二人は、誤魔化しきれないのがわかっているのか、神妙な面持ちでカウンター内に立っていた。


 大男(きっとギルド長(ギルドマスター))は、カウンターに入ることなく何故か俺たち(ゴリマッチョ含む)の方に近づいてきた。見下ろされるところまで来ると、尚更身体の大きさを感じる。さっきはワザと出していたのか今はあの魔力の波動は感じないが、その身体の大きさだけで十分なプレッシャーが感じられる。


 彼は何故か俺を見下ろし一つ頷いた。俺はステータスカードの数値に見合うように、外から見える魔力量等も偽装しているはずだから、心配することは無い筈なのに、その瞬間なんだか背中がヒヤリ、とした。


 俺から視線を外し、もう一人の巻き込まれゴリマッチョを見たようだ。ゴリマッチョの張り詰めた緊張感が、何も使わずとも伝わって来る。


「Dランクのニールブ、迷惑をかけたな」


 ゴリマッチョ改めニールブは、ギルマスが名前を知ってくれていた事に涙を流さんばかりに感激しているが、これは、彼の記憶の賜ではなく……。


 厄介な事にこの人、鑑定か何かそれなりのスキルを持っているようだ。ゴリマッチョと目を合わせた瞬間、魔法を使った時ほどあからさまでないが何かが動くのを感じた。


 これはサーチと言うより気配察知かな、俺少しレベルアップしたのかも……。


 ゴリマ……ニールブが感激しながら退場?した後、彼は改めて俺を見やると、視線はそのままにカウンター内の二人に三階の会議室に行くように命じた。


 そして俺にも、ついてくるように言うのだった。

(目立ちたくなかったのにな……)

「……はぁ〜……」


 思わず深いため息が出てしまった俺に、また兇悪に見える笑みを浮かべながら、


「ギルマスに声をかけられたら、さっきのゴリマ……ニールブのように普通は喜ぶものだがな……面白い……」


 クククっと、笑い声をあげながら二階に上がっていった。


 こうなれば逃げ出す事も出きないか、ステータスカードもどこにあるかわからないし今の俺ならそのうち偽造位できそうだけど、流石にどこにあるかわからない残していったステータスカードを消滅させる事はできない。このまま素直についていき、シラバックレル所はバックレようと決めて、ローブをより深くかぶり直し重い足取りで階段を登った。


 三階まで上がると、ザ・秘書という感じのお姉さんが立って待っていた。こちらの世界でも出来る女の雰囲気は同じ様な物らしい。


「奥から二番目の扉の部屋にお入りください」


 そう言ってエスコートでもする様に一歩前を歩いて行く。


 まだ見習いにもなっていない様な俺にも、ものすごく丁寧だ。薄ら寒く感じるほど……。


 扉を開けると既に三人とも机を囲んで座っていた。正面の上座所謂長老席に長老が座っていて、彼を挟む形でお兄さんとお姉さんが座っている。互いに顔を逸らして視線が合わない様にしている。


 秘書さんに何か言われる前に、一番扉に近い席に勝手に座った。

 俺のステータスカードはファルケお兄さんの手から、ギルマスの手の中へ渡っていた。

 彼はステータスカードを一瞥するとテーブルの上へとそれを滑らせた。


「さてと……、こいつらが迷惑かけたな。これでもこの東支部のエースでな。信じられんかもしれんが、もう直ぐこのアホがSランクと言うのも本当だ」

 ギルマスは、右手に座っているファルケさんに目を向けながらそんな事を言う。


「リーリエも良い年…いや丁度良いお年頃だからな、いつまでも危ない冒険者ではなく、花嫁姿を見せてもらいたいと思ってな、儂の手伝いを兼ねてギルドの職員になってもらったのだ」


 こんなに迫力のあるギルマスでもあの殺気は怖かったのかな、リーリエさん?の目力半端ない……。


 秘書さんがお茶を配ってくれたので、皆一息つく。俺も気付かずに緊張していたのか喉が渇いていた。


 謝る為だけに俺を呼んだわけじゃないはずだ。それならばゴリマ……ニールブもこの場にいなければおかしい。

 では何故?

 俺の偽装・隠蔽はバレていないはず。

 まさかただの『勘』で呼ばれたんじゃ……イヤイヤまさか?でも……。


 思わず、確かめる様にローブの布越しにギルマスの顔を盗み見ると、彼はずっと俺の方を見ていたのか、目線が合った。

 そして、この短時間で目にするのが三度目の兇悪な笑みをニヤリと浮かべた。


「そうだと言ったら……どうする?」


 そう一言言うと、四度目の笑みを浮かべるのだった。


 まさか?心の中が読めるのか?そんなスキルがあるのか?だったら俺のステータスだってだだ漏れか?

 こめかみからツーっと汗が流れ落ちた。


 そんなローブの下の俺の様子がわかるのか、段々と真っ赤になるギルマスの顔。

 そしてついに我慢できなくなったのか、肩を揺らし始めたと思ったらガッハッハと豪快に笑い始めた。


 そのギルマスの笑う姿に俺だけではなく部屋にいる全ての人、秘書さんも含めて、びっくりして固まったのだった。


「クッ……。笑った笑った。いくら儂でも、心の中は読めんよ。今何歳だ?17歳か。経験の差だよ。別名ハッタリとも言うがな」


 そう言ってまた豪快に笑い声を上げる。


「儂はファルケの気と人を見抜く『勘』だけは信じていてな」


 そのギルマスの言葉に、ファルケさんが何か言い返そうと少し腰を上げかけた所で、正面に座っていたリーリエさんが、ファルケさんの顔面に何か(魔力の塊の様な物か?)を飛ばして黙らせた。


 そんな目の前の攻防も何事もない様子でギルマスは話を続ける。


「見た目の通り、こいつはパワーファイターでもなければ、優秀な魔術師と言う訳でもない。まぁ、剣はソコソコ使うが達人か?と問われれば、そうだと胸を張って言える程でもない。そんなこいつが冒険者として超一流の仲間入りが出来る程に成れたのは、ここに居るリーリエのお陰も多分に有るが、それを置いておいてもあまりある程の、動物並みかそれ以上の気を見る力。それと同じ位の人を見極める力。それは総じて『勘』としか言えないものだが、それが人並みはずれて優れていたお陰で、今もこうして生きているし、Sランクに手が届くまでに成った、と儂は思っておる」


「リーリエのお陰…」の所から、リーリエさんは勝ち誇った様な表情でファルケさんを見下ろし。ファルケさんは褒められ慣れていないのか、真っ赤な顔のまま照れ隠しかソッポを向いている。


「だからな、面倒くさがりで、進んでやるのはナンパ位のこいつが、同性のそれも全くタイプの違うド新人……アー…冒険者チェリーだったか…を、後継者育成候補として選んだ、その動物的勘で選んだ奴に儂が興味を持たない訳がなかろう?リーリエも興味を持った様だし……まあそれが冒険者としての興味だけなら尚更ポイントアップと言う所だな……」


「はぁ……」


 それ以外どう返事をすれば良いのか。俺は今日、週一の休みに冒険者の登録をしたかっただけなのに、変なの(ファルケ)に目を付けられただけじゃなく、その親玉(ギルマス)にまで目を付けられた。それと、美人さんと言えども食べられたくはない……。


 確かに冒険者に成りたいと思ったのは、剥奪を使うため、魔獣が居る北の森に入る為だ。でも、冒険者に成るのに色々面倒臭い事が起こるなら、冒険者に成らずとも北の森に入る事ができれば良いだけなのだ。


 これじゃあ、初めにボツにした全面偽装別人コースかな……。でも、こいつら、ただの『勘』の一言で、正体あばきそうだしなぁ……そうなるともっと面倒臭い……。


 ポーカーフェイスのつもり下で、色々考えを巡らせていると、そんな様子を面白そうに眺めていたギルマスが、ただ一言、


「諦めろ!」


 と、ウインクしてきた。



ギルドの話し中々終わりません!

主人公だけだと説明ばかりになって辛いし、登場人物が増えると勝手にお喋りが始まって話しが長くなる。書いているのは楽しいけど話しが進まないのは困りもの……。

で、まだギルドから出られません!

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