第 11 話 冒険者ギルド 2
俺が揃えて出した申請書(?)とステータスカードを見てニッコリ微笑むと、イケメンお兄さんは申請書はそのままに、カードだけもってバックヤードに下がっていった。
フとまわりを見回すと、仕事の手を止めた受付のお姉さん達が、ポーっとした表情を浮かべてイケメンお兄さんの後ろ姿を追っていた。
そんなお姉さん達の様子に文句も言わず並んで待っている冒険者。中にはお姉さんと同じような表情で見つめているヤローまでいる。
「かっこいいなぁ……流石Sランク。俺もSランクになればああいう風になれるかなぁ……」
どう見てもあのお兄さんの様にはなれそうもない、ザ・漢という感じのフルアーマー姿の巨漢の呟きが聞こえてきた。
あのお兄さんはSランクなのか?このカウンターが空いていたのは。冒険者登録するものがそう居ないのもあるが、皆んながSランクのおにいさんを遠巻きに見ていたからなのか?だとしたら、俺ってチャレンジャー……?
ネルケに勝手に解析を使ってから、人間の敵対する奴以外にはいきなりの解析は掛けない様にしていたから、お兄さんのランクや情報はわからない。サーチも建物に入ってから使ってないからね。
魔法使いっぽくなかったけど、Sランクって言うなら魔法に対する耐性くらいありそうだし、解析を掛けてもバレないと思うけど下手な興味を持たれたくない。それにあの様な見た目細マッチョで、魔法主体ではなく体力腕力でSランクにまで昇りつめるような脳筋タイプには、理屈ではなくて『勘』の一言で何もかもぶち壊されそうな、それこそ『勘』がする……。
少し浮ついた感じもするざわつきの中、俺のステータスカードを持ったお兄さんが戻ってきた。
「まだオレ Sランクじゃねぇよ。だからこんな所で事務仕事なんかやらされてるんだよ。何でも、Sランクになるにはギルドの仕事が何たるかを知るための研修が義務付けられていて、これを終了しないとランクアップは認めないんだと。これを知っていればAランクのままで良かっただけどね」
なんだか言葉遣いは美しくないが、姿はピンスポットでも当たっているみたいに、一人輝いて見えるイケメンお兄さんが、優雅に俺の目の前に。
「と言う訳で、君を担当させてもらいます、ファルケです。本日は登録を東支部でして頂きありがとうございます。窓口業務は初めてですので至らない所が多々あると思いますが、私もランクアップの為頑張らせていただきますので、私の為にも頑張って下さい。今日この場で登録をしたのも何かの縁、出来るだけ短期間で君が唯の新米見習い冒険者から新米でも凄腕冒険者?と呼ばれる位に鍛え上げようと思っておりますので、オレ専属の冒険者として本日、今からよろしくお願いします?」
にっこりとイケメンスマイルで有耶無耶にしようと言うオーラを振りまいているが、ちょくちょく変な言葉が混じっていたような……。
俺が心の中で首を傾げていると、イケメン……ファルケさん?の後ろに気配無く近づいて来た、これまたすっごい美人が手に持った紙束で、スコーンっとファルケさんの後ろ頭を殴った。
「イッテーっ‼︎」と、後ろ頭を抱えてやけに痛がっているファルケさん?……。あれ、唯の紙束だよね?あれ?後ろ頭から赤い何かが見えたような……アッお姉さんが魔法使った、何か呟いていたから詠唱ありだね……。なんて、目の前で起きたオソロシイ流血事から少し目をそらしたくて、下らないことに思考を逸らしている間にも、目の前の出来事は続いているのであって……。
「なにバカなこと言っているのよ‼︎オレ専属の冒険者ってナニ⁉︎クソみたいな事言っていないで仕事しろ‼︎」
美人さんがクソ!とか言ってはいけません。腰に腕を当て仁王立もどうかと……。
「ナニしやがるんだよ!鬼女!お前が婚活するから冒険者辞める!とかいうから、パーティー解消したんだろうが!それでピンでも依頼受けやすいようにランク上げする為に、したくもない後継者育成とか言う課題やんないといけないんだよ、ボケ!」
お兄さん……それをウ◯コ座りで頭抱えて、下から目線で睨んでも格好つかないっす……。それに後継者育成って?
「誰れがボケじゃ!あんたみたいな脳筋が、どう見ても魔法使いの子供を後継者とか、あんたの後継者って言うならあそこにいるゴリマッチョぐらいがお似合いよ!」
美人さんは片方の手は腰に当てたまま、俺の背後をさっきの凶器となった紙束でビシリと指し示した。
さっきまでそれなりに騒ついていた一階ロビーは、いつの間にか水を打ったような静寂の中、全員の視線が俺の背後に注がれた。俺も釣られるように背後に目をやると、美人さんの言う所のゴリマッチョ、フルアーマーの兄さんが自分の顔を指差し固まっていた。
「イヤだよ!ナンデ自分よりデカイのの面倒を見ないといけないんだよ!それにオレは
決めてたの、今日オレが付いたカウンターに一番初めに来た冒険者チェリーをオレの弟子にするんだと!」
すっくと立ち上がったファルケさんは天に向かって拳を突き上げた。……それより冒険者チェリーって何?弟子って……いつの間にそんな話になってるの……。
手を突き上げたままのポーズで自分に陶酔している(様子の)ファルケさんに、美人さんは問答無用にまた例の紙束でで殴り掛かる。二度目のそれは流石にAランクには通用せず、真剣白刃取りよろしく、ファルケさんはハシっと受け止めた。が、それはフェイクで、同時に美人さんはピンヒールも勇ましく彼の下半身に回し蹴りをかましていたのだった。
ズダーン!と人一人が倒れたにしては、随分と大きな音がフロアーに響いた。
回し蹴りの存在を知った瞬間、俺は思わず目を瞑ってしまったので、インパクトの場面は目撃できなかったのだが、その衝撃はカウンター越しの俺にも感じられるほどで……。
二人だけのパーティーというのはあまり聞かないから他のパーティーメンバーも居たと思うけど、二人とも前衛なのかな。美人さんは後衛、魔法使いタイプだと思ったけど、人は見かけによらないものだ、この世界には魔法の身体強化とかが存在するのだから、華奢な女性でもファイターではないと言い切れないのかもしれない。
「二度までも、ナニしやがるんだ、暴力鬼女!人のこと脳筋脳筋言うが、お前こそ直ぐに手が出る、足が出る、の脳ミソ直結脳筋行動だろが!」
瞑っていた目を開けると、あんなにすごい音を立ててすっ転んだのに、全く怪我をしてない様子でファルケさんが立ち上がっていた。
「私は知っているのよ。あんたがそこの柱の陰から入り口を見張っていた事を。この子以前にも、今日登録に来た子はなん人かいたのに、それをスルーした事を。その子が入ってきた途端、目の色変えてその席に着いた事を……。何か邪な気持ちが……」
おぉ〜……。
美人さんの最後のその言葉が聞こえた瞬間の、重く低く地を這うようなどよめき……。こっちの世界にもあるの?で、やっぱりマイノリティー……?
「嫌、いや、イヤ‼︎…ナッ何言って…!違うって。邪ってナニ⁉︎オレは純粋に弟子にしたいと思っただけで……」
真っ赤になって拒否っても、説得力無いなぁ。俺まで巻き込まれ?もう帰りたいけど、ステータスカードまだ返して貰って無いし……。
「脳筋の弟子は脳筋でいいのよ。彼は私が面倒見るからあんたはゴリマッチョにしときな!」
「なんだよ結局お前も病気が出ただけで、自分好みの男の子ゲットしたいだけだろうが。誰がお前みたいなオバさん相手にするかよ」
「あんたこそ、今まで私が気づかなかっただけで、実はそっちの業界人だったなんて、もうすぐSランクが笑えるわ!」
「お前こそ自分の歳考えて相手選べよ。それこそそのゴリマッチョぐらいがお似合いだろう」
いつまでこの夫婦漫才(?)を見せ続けさせられるのだろう……。周りの様子を意識すると、まるで四人芝居の舞台のように、俺と舞台に引きずり出された様なゴリマッチョ以外、随分と遠巻きで二人の様子を伺っているのがわかる。
「俺、冒険者チェリーじゃねえし…Dランクだし…それに、女の子大好きだから!そっちの趣味ねぇから!」
俺以外の誰にも聞こえない音量で、それでも魂の叫び!するゴリマッチョの姿に、思わず涙しそうになる俺だった……。
誤字脱字やおかしな文章等気づいた時に直しています。
話の進行上問題なければコソッと直してしまいます。
読み直す度にあるんですよね〜。




