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プロローグ

2015・12・17 プロローグ書き直しました。

 今日のバイト、配達一発目は、この辺りで目立つタワーマンション32階、Lサイズ二枚とサイドのポテト、シーザーサラダ、サービスのコーラ。

 バイクを置く場所がわからず手間取って少し時間がピンチ。結構な重さの品物を片手に抱えエレベーターへ。


 一階に止まっていたエレベーターはこのマンションのウリ(?)の透明な箱(スケルトン)。外からも中からもよく見える、余り高い所が得意でない俺には辛い乗り物……。


 時間があれば普通のに乗りたいけど、ここから見える残りのエレベーターは全部一階にないみたいで、仕方がないからこの透明な箱に乗り込んだ。


 一瞬下に押し付けられる感覚がした後、スッと音もなく上昇する箱。

 隣の透明はどうも上から降りてきているようだ。

 外を見たくなくて扉の上の階数表示を凝視する。

 一定の秒数で数が増えて行く。


 何となく上を見上げていた目の端で、隣の箱が横に並ぶかなと思ったその時……。

 まるで、隣の透明なエレベーターの床が爆発したかのような強い白い光を放ったように感じた、その瞬間、広がった光がこちらのエレベーターを包み込むように降りてきた所で、俺の記憶も白く飛んだ……。



 自分でも驚くくらい唐突に意識が戻った……。

「……知らない天井だ……」

 思わず呟いてしまったが、見たことがない薄暗く青白い光り。

 随分と高い天井。

 黒い革張りのようなソファーに横たわっている自分……。


 病院のベットに寝かされているようではなく、ましてや真っ白な空間にいるようでもなく……。


『気が付いたようだね』


「⁉︎」


 自分しか居ないと思っていた空間で、やけに近いとこらから知らない人の声が聞こえて、俺は飛び上がるように起き上がると、声がした方向に意識を向けた。


 テーブルを挟んだ正面のソファーに、細っそりとしたシルエットが浮かび上がって見える。

 手を伸ばせば届く距離に居るはずなのに、輪郭をはっきり捉える事が出来ない。

 自分の足下を見れば、ピザ屋のツナギと履き古したスニーカーのままである事がわかった。

 病院でも白い部屋でも無ければ、ここはあのタワーマンションの一室なのか……?


『違う。ここは貴方が思っている白い部屋に近いかな……』


「……えっ……?」


 口に出して話していないはずなのに、返事が返ってきて驚いた。そのうえ目の前の人が

 話しているようでもないのだ。


『いいえ、話しているのは目の前にいる私。ただし念話で……』


 直接頭に響いてくる、これが念話?


『そう。なぜならここでは念話しか使えないから』


 だから思っていることがダダ漏れなのか……。

 しかし、念話しか使えない白い部屋に近い所って、もしかして俺はあの時エレベーターで事故にあって死んだのか?


『う〜ん。半分正解!事故といえば事故。ただし貴方が死んでいるかといえば、ある意味そうではないと言い切れなくもない……』


 念話でも歯切れが悪いて言うのかな?よくわからない……。


『簡単に簡潔に言えば、異世界召喚に巻き込まれたって事』


「…………」


 何だろう、やっぱり担がれているのか……?

 あの状態から考えられるとしたら、エレベーターの故障か何かで閉じ込められて、この人に助けてもらい、怪我も何もないからマンションのなかで介抱してもらったってとこ?

 そんでもって、まだ意識がしっかりと覚醒してないから、念話なんてファンタジックな事を体験している気になっているところ、みたいな……?


『……そう思い込みたいのもわかるし、貴方に落ち度は全くないので、全面的にこちらが悪いのだけど……余り現実逃避している時間もないので、サクサク話を進めさせていただくよ』


 サクサクって……相変わらず輪郭がはっきりしなくて表情をうかがい知る事が出来ない正面の人…?人なのか?が少し笑ったような気がした。


 サクサク進めると言ったその言葉の通り、俺の気持ちに拘泥する事なく、目の前の人…(智天使(ケルビム)のオネットと名乗った…)いや、天使様は、いまの俺の状況と、これからの事を説明してくれた……。


 エレベーターで俺が見た上からの強い光が、所謂召喚陣が発動した時に発した光である事。

 召喚されたのは俺の隣のエレベーター(透明な箱)に乗っていた方々で、陣が発動した時ちょうど同じ階を、向こうは下り、こちらは登りしていたエレベーターが重なった時だったため、召喚陣の範囲に飛び込む形で巻き込まれてしまった事。

 ついでに、いまの俺は魂のみここに居るのであって、体はすでに召喚した異世界に送られてしまっている事を教えてくれた。だからこの空間に長い時間魂だけ留め置く事が出来ないので時間がない事を知った。


 俺と天使様(オネット)の間にあるテーブルの上に、いきなり大きなフタのない箱が出現した。

 よく見るとそれはジオラマのようなもので、天使様は《箱庭》と言った。

 俺が送られる世界がこれらしい。


 そもそも天使とは、俺の世界の概念と同じくと言うか、俺が理解出来るように全ておれの世界の概念に当てはめて説明してくれている訳だが……天使とは、神の使徒(シト)である。使徒と言っても勿論エ◯ァの宇宙からのそれではなく、つまり神様の手足となって働くものの事で、その能力によって階級も有るらしい。


 神様の代わりに世界を管理する管理者が天使であり、その管理者になるための学校の初めての実習に使われる、極々初級の世界の一つがこの《箱庭》だそうだ。

 神の手が加わっている事が少ないほど上位世界に成るそうで、箱庭はその名の通り、全て神の作った種をジオラマの様に組み上げた世界であり、世界としてはまさに教材として存在しているだけの物。ただし、生き物はきちんと命ある物で、我々の地球と同じ様に、命が継がれている世界であると言う。


 異世界召喚と言うのは、俺たちは小説でよく見るものではあるが、地球ではまぁファンタジーな訳だし、現実世界で……何て考えてもいなかったけど、今俺の身に起きている事が事実であるとするならば、有ることは有るらしい。

 ただし、意図して行われる召喚ではなく、偶然起こってしまう異世界移転の方が圧倒的に多いそうだが……。

 何故なら、謂わば一種の自然現象と言えなくもない異世界移転を、無理矢理行なう異世界召喚は、行なう術者の技量や力は当たり前の前提として、行われた世界そのものに随分と負担がかかるものらしい。

 特に受け入れる側の下位世界、(召喚されるものは上から下に落ちるだけでその反対はあり得ないとのことだ)の負担は大きく、一つ上の階層なら未だしも、今回は何階層も違うらしいいので、この箱庭世界が崩壊する恐れがある程だと言う……。


 召喚を行ったのが、この箱庭教材をつかっている、管理者(天使)になるために学んでいる学生ではあるが、一応この箱庭世界の女神に当るので、何とか成立したらしい。


 それでも、正当な手段ではとても無理な事らしく、これから調べが進めば、ただ単に一学生が起こした不正には治らない事に成るかもしれないらしいが、取り敢えず俺には関わる事が出来ない事だ。

 それが充分俺の生きるか死ぬかに関わる大事だとしても……。


 起こってしまった事は例え神にでも戻す事はできない、とオネットは言う。

 つまり時間は戻せない。

 特にこのほぼ一番上階にあるこの世界で起きた事を全くない事には出来ない。

 その時起こる世界の歪みが、この下にある幾つの下位世界(それは地球が存在する世界かもしれない)を壊してしまう事になるかわからないからと……。


 幾ら一つの世界の女神であるとしても、天使になる前の学生の召喚術で有るのだから、幾つか上の世界の力を持つ存在を落とす召喚であっても、その者に大した力を与える事は出来ないはずだ、とはこちらの天使様の弁。


『それも、四名も召喚して……それプラス貴方……五名も自分の世界に引き込むだけで、大した力は与えられない……』


 もうすでに俺の体が送られているこの箱庭世界は、ご他聞に漏れず、剣と魔法の世界、ステータスやスキル、レベルが存在し、生活水準は中世ヨーロッパに準拠、大航海時代前の封建世界に酷似。

 それにヒューマン以外の種族もいるよ、と言う、王道中の王道の世界。

 その中でもこの箱庭と言うか、治める女神が人間族至上主義でその他の民族は排除する風土が異常に強いらしい。

 そしてこの人間族以外の人種に、俺ら召喚された人間も入る可能性が高いらしい。

 勝手に呼んでおきながらなんだ!と言いたいところだが、そんな世界なんだぞと言う心算は大切だ。


 勇者として召喚された四人は未だしも、おまけで落とされた俺はおきまりの白い部屋に行っていないこともあって、『称号 勇者』もないし、その世界の女神の加護もないので、このままで行けば、魔法の世界で魔法を使えないかもしれないらしい……。


 踏んだり蹴ったりだな!


『そこで、私の出番。大した力を与えられないダ女神でない、上級天使の智天使たる私が、貴方に力を授ける。勿論彼方にわからないように……ダ女神以上の力を……』


 魔法を使えるようになるのはありがたいが……。ただより高いものはなし、上手い話には裏があるは、俺の中での真理だ。両親と妹を事故で亡くし、独りきりになって経験した様々な事から至った俺の……。

 だから、幾らそちらに多少の負い目があるからと言ってその世界の神より強いって……。

 何かあるな……?


『主犯である女神こと大天使(アークエンジェル)候補生リュゼはこちらで処分を行うこととして、元々設定されているこの箱庭を女神として統治する時間は現地時間で一千年。設定解除までの残り時間は約三百年。今無理矢理設定を解除すると、召喚時の負荷を含めてたちまちこの世界が崩壊してしまうかもしれない。その崩壊にはこの世界の生きとし生けるものすべての命が含まれる……今すでにあの世界に在る貴方の存在も含めて……』


 だから、取り敢えず余罪の洗い出しもあることから、設定時間終了までは主犯を泳がす事にするらしい。それはこちらの時間でたった数ヶ月の事らしいが……。


『この課題は、いくらその世界の女神と言え直接の統治は出来ない様になっていて、神託という形で、たまに余り具体的でない文言で指示を出す事しかできない。この箱庭の下位世界は余りにも脆弱であるから直接外から力のある者が関わる事が出来ない。つまり外からは誰も、女神も勿論私も直接何かできるわけではない。中に存在する者ならばその限りではないけど……』


 何故だろうか、はっきりと捉える事ができないはずの目の前の天使の顔に、あまりありがたく無い笑顔が浮かんでいる様に見えるのは……。


『あの世界の中に呼ばれたこの世界の人間でない貴方が、女神以上の力を持って、人間至上主義で歪みきっているこの世界の存在の成否を決めて欲しい』


 さっき言っていたではないか、幾ら下位の世界であっても、命自体は全く俺たちと同じ物であると……。そんな、命、何億個もの生殺与奪をおれに与えると……⁉︎

 幾らファンタジーの世界でもゲームじゃないんだ、リセットは効かない!


 ほ〜ら、やっぱり、上手い話には裏がある…………。


 黄昏ている俺の目の前に、ゲームで見た事があるウインドウとよく似た物が浮かび上がってきた。


【 名前 ワタル アマミ 】

【 レベル Lv.1 】

【 年齢 16 】

【 HP 50 】(25に偽装)

【 MP 550 】(50に偽装)

【 種族 異界の人間 】

【 加護 智天使の加護 】(隠蔽)

【 称号 ***の魂 】(隠蔽)

【 称号 異界を渡りし者 】

【 魔法 全属性魔法適正 】(空間魔法適正に偽装)

【 スキル ユニーク 剥奪 】(隠蔽)

【 スキル ユニーク 偽装 隠蔽 】(隠蔽)

【 スキル ユニーク 最適化 】(隠蔽)

【 スキル ユニーク 全世界言語理解 】(隠蔽)

【 スキル ユニーク アイテムBOX 】(Lv.1に偽装)

【 スキル エキストラ 空間魔法 Lv.8 】(Lv.2に偽装)

【 スキル エキストラ 解析 Lv.8 】(鑑定Lv.2に偽装)

【 耐性 状態異常無効 】(隠蔽)

【 耐性 精神攻撃耐性 】(隠蔽)


『始めから全てがMaxだと面白くないだろ?。使えば使うほどスキルレベルは上がるし、新しいスキルを【剥奪】で獲得して増やしたり【最適化】して新しいユニークを生み出したりしながら、貴方の新しい世界を楽しんで欲しい。スキルの内容は【解析】を使えばわかるから、一々説明はしない。……あぁそうだ、召喚された際に貴方が施していた偽装?は全て解け、真実の姿に戻っているよ。そう、髪や瞳の色が……』


 楽しんでって、楽しめるものなのかよ…それこそ命懸けのゲームだ。

 一生懸命内容を咀嚼しようとしている俺の前で、どう見ても日本語に見える文字をいじりながら、サラッと、生まれてこの方擬態している俺には恐ろしい事を言われて、思わず自分の顔を触るが、鏡があるわけで無し、触ったところでわからない。

 ……と言うか、触っているかもわからない……。

 その上、視界や頭の中までも霞がかかってきたような感じがする……。


『白い部屋の方も説明が終わった様だ。彼方に行けば、もう誰も直接コンタクトは出来ない。私も女神も……。ただ女神には神託と言う手段があるが、今回の件でもう何度も行うほど(ポイント)も残っていないだろう』


 一瞬で目の前のウインドウが消えた。ただもう何故か俺の中でそれらの使い方が手に取るように理解できた。


『このまま放っておけば確実に滅び去る世界だ。だから、そう重く考えるな!貴方が巻き込まれ送られた事によって、この世界に存続する可能性が生まれた、そう我々神の使徒(管理者)は考えている。貴方にとっては災難でしかないが、我々はこれも神の采配であると感謝している。だから何にも囚われず、思い煩う事なくただ生きて欲しい。それが神の意志であり、加護を与え……たし…希望であ…か………』


 念話も怪しくなってきて、自分の存在すら掴みきれなくなってきた。

 急速に意識が何かに引っ張られていくように薄くなる……。


『……貴方……進化……会え……』


 パタンと本が閉じられたように、俺の意識もなくなった。



三話あったプロローグを一本に纏めました。

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