最期の夢
彼女は小さな白い花の咲いている丘いた。
彼は彼女の左手をギュッと握っている。
2人は天気が良かったのでこの丘にピクニックに来た。
「マカロニさん。何かお歌を歌って。」
マカロニは少し考えてから照れくさそうに[マカロニの約束の丘]の2章を歌った。
彼女が一番好きな歌だった。
彼は1章のほうが好きだったのだが、それよりも2章を楽しそうに聞いてくれる彼女が好きだった。
彼は[マカロニの約束の丘]の2章を繰り返し何度も歌った。
彼女も一緒に歌った。
小さな白い花も歌っていた。
それはとても幸福な時間だった。
それから2人は互いに持ち寄った、お弁当を食べた。
「私、マカロニさんの作る玉子焼きがすごく好きよ。」
彼は彼女の作るサンドイッチがすごく好きだった。
耳を切った食パンにバターを塗ってキュウリを挟んだシンプルなものだ。彼女の愛情がたっぷり挟んであった。
切った耳は油で揚げて砂糖をまぶした甘いお菓子にした。
油は危ないので彼女のお母さんが揚げてくれた。2人はとても幸福だった。
彼はこの幸福な時間をハサミで切って無くさないように大切に左のポケットにしまった。
彼女は小さな白い花をひとつ摘んで大切に右のポケットにしまった。
これでけして幸福な時間が損なわれる事はない。安心した2人は少し眠る事にした。
それはとても安らかな眠りだった。
彼女の左ポケットからは小さな白い花の幸福な香りがした。
彼の右ポケットからはいつまでも[マカロニの約束の丘]の2章が流れていた。それは風に乗ってある町のスラム街に細かな雨を降らした。