第5話 星魔の過去
このお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
アレは、冷たい雪の降る日の事だった。その日はいつものように剣術の訓練に励んでいた。
「星魔。ここにいたのか。」
父様が入口からボクに声をかけていた。
「父様。どうしたの?」
「宗主が呼んでいる。来なさい。」
「宗主様が?」
疑問に思いながらもボクは鍛錬ようの木刀をもどし、父様についていった。
大広間につくと、宗主様が、こちらに微笑んでいた。宗主様だけではなく、一族の皆がここにいた。
「お待たせしました。宗主様。」
ボクの言葉に宗主様は優しく頭を撫でた。
「星魔。私が呼んだのだから待たせたことなど気にせんで良い。それより、星魔。お主も契約の儀に参加してもらうぞ。」
宗主様の発言に皆が騒然となった。
「ケーヤクノギ?」
「そうか。星魔はなにも聞かされていないのか。
我が一族に伝わる宝剣があるのを知ってるな?」
宗主様の問いにボクは首を縦に振る。
「それは、霊王具とも呼ばれ、精霊の王が作ったと言われるほどの力を秘めた剣だ。しかし、それと契約出来ないなら意味がないのでな。次期宗主が決まらぬ状況の場合、一年に一度、契約の儀を執り行い、契約を交わせたならば、その者が次期宗主となる。
早速始めてみなさい。お主だけだ。」
宗主様に言われた通りに霊王具の前に座り、精神集中する。10分だろうか?1時間だろうか?時間の感覚がわからなくなったとき、
『………。』
声が聞こえた。その声は遠くから細々としゃべっていたため、何を言っているのかよくわからない。それが聞こえた瞬間、ボクと霊王具の間で何かがつながった気がした。
「そ、宗主様。何か、契約出来た気がするんですけど?」
ボクがそう言った瞬間、
「ば、バカな!あり得ない!」
「出任せを言うな!」
周りから、ボクを怒鳴り付ける声に鋭い視線に思わず宗主様の陰に隠れた。
「フム。星魔よ。呼んでみなさい。霊王具が契約を交わしたのなら星魔の呼び声に応じるハズだ。」
優しく言う声にボクは深呼吸を一つして、呼び掛けた。
「来れ。」
大広間に飾られていたその宝具はその一言にボクの元に飛んで来て左手の中に収まった。皆が唖然としている中、宗主様が優しく撫でながら、
「よくやった。星魔よ。先ほども言ったが、契約の儀を成功させた者は次期宗主になる。これより星魔が次期宗主だ。
それと、我が一族は宗主と次期宗主のみに日刀の名を名乗る事が許される。故に今より日刀星魔と名乗れ。」
とそう告げた。