第1話入学試験前編
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「とーちゃく、っと。」
入学試験会場にたどり着いてユニコーンから飛び下りる。その瞬間、ユニコーンは現れた魔方陣の中に吸い込まれた。
「受験生かな?」
その様子を見ていた受付係が問いかけた。
「すみません。受験番号142番。日刀星魔。時間はセーフですよね?」
「受付時間は大丈夫だが、実技試験は既に始まっている。」
そう言われ、手続きを済ませて試験会場に乗り込んだ。
Side???
「フム。今年の受験生は中々レベルが高いですね。」
私は次から次へと魔法を繰り出す受験生達を採点していた。魔法はただ放てば良いと言う訳ではない。状況とは絶えず変化していくもの。その中で正確な手を打っていくのが重要である。
「久住先生。受付からですが、受付時間ギリギリに来た受験生がいます。」
「番号は?」
「142番です。」
そんな受験生を考えるまでもない。
「試験までに来ないなんてダメですね。」
「しかし、受付時間には間に合っているわけですから、受けさせないのは問題が有ります。」
「ノープロブレム!時間ギリギリに現れるような態度のなってない受験生なんてよしんぼ受かったとしても直ぐにドロップアウトするのは確実です。だから、受けさせないのも慈悲です。」
「久住先生。お電話です。」
そう締めくくろうとした時、私と講師の爪魔星夢先生が携帯を差し出した。
「もしもし。」
『久住先生。
館です。
爪魔先生から聞きました。受付時間ギリギリに来たからといって、門前払いなどしないように。魔輪学園は優秀な魔法使いを育成するための学校です。』
校長先生はそう言った。校長先生も爪魔先生も魔輪学園は優秀な魔法使いの為の学校なのに何故それがわからないのか?とはいえ、校長先生から指示があった以上無視は出来ない。ここは私が行って叩き出してやるだけ。私はそう決めて席を立った。
Side星魔
「おー始まっている。」
俺は試験会場を見渡していた。
「星魔。遅いぞ。」
俺の姿を見た女性は俺を一睨みして声をかける。茶色い髪をポニーテールにしている。
「神夜ですか。ちょっと寝坊しちゃいまして。」
そういってから包んで貰った弁当を食べ始めた。
「んん!」
「まったく急いで食うからだぞ?」
神夜は呆れながら手持ちのペットボトルを差し出した。
「サンクス。」
俺がペットボトルを受け取り飲みだした時、
「あぁー!」
すぐ横からそんな悲鳴が聞こえていた。それが誰のものかもわかる。
「お………御姉様にまとわりつく害虫の分際で御姉様と間接キスするなんて。」
茶色い髪のドリルロールの女の子の言葉に神夜は顔を紅くして怒った。
「裕佳梨!オレと星魔はそんな関係じゃ、」
「せいまぁ〜?」
言いかけた神夜を裕佳梨が割り込んだ。
「豚野郎をしたの名前では呼ばないのに、星魔と呼んだということは、そ………。」
「下らないこと言ってると、痛い目に合うぞ?」
「………既に殴っている神夜の台詞ではないと思いますが。」
何か神夜にとってまずい事を口走りそうだった裕佳梨を止めるために正拳をめり込ませていた神夜にツッコミ入れた時、
「受験番号127番魔矢神夜君。」
「お。オレの番だ。行ってくる。」
そういってから神夜は立ち上がった。
Side モブA
誰がモブAだ!そんなことを考えていた時、一人の女性がやって来た。
「君が魔矢神夜ですか?」
「おう。オレが魔矢神夜だ。よろしく。」
フム。女性にしては口は悪いが、態度は悪くない。
「こちらこそよろしく。では、始めよう。」
「Summon!」
『Arm!』
私の言葉に神夜君は魔法を使い武器を呼び寄せた。弓だろうか?しかし、弦や矢を持って無い。
「いくぜ!」
神夜君はそう宣言して弓を引いた。その瞬間、風の矢が構成され、私に向かって飛んできた。それを横にかわしたところ、真横から風の矢が飛んできた。どうやら、いつの間にか横に回り込んでいた神夜君が私に向けて射ったらしい。
「なんとぉっ!」
驚きながらも何とかかわしたが、完全にはかわしきれなかったらしく、鼻のすぐ上をかすったらしい。ダメージを肩代わりする宝玉の表面に傷がついている。
しかし、今のはどうやって回り込んだのだろうか?いくらなんでも距離が離れすぎているように思うのだが?疑問に思いながら周囲を確認したら、風の魔法でいくつかの空間がマーキングされていた。
「成る程、あらかじめ空間にマーキングして、自身を風の魔法でマーキングした場所に瞬間移動する術式か。」
「正解。よくわかったな?」
私の言葉にさしたる動揺も無く正解だと答えた。
「じゃ、ドンドン行くぞ!」
Side 星魔
「これで、御姉様の勝利ですわね?」
「まぁ、良くて辛勝。悪けりゃ敗北かな?」
「アラ?何故ですの?状況は御姉様が優勢ですのに?」
俺の呟きを納得出来ないのか裕佳梨が問いかけた。
「最初の2発で倒せなかったのが痛いんだよ。瞬間移動を知られたら対策を取られるだろうしな。」
この先、どう闘うか?だな。
Side モブA
この子は十分に合格圏内だろうな。前、左右、上から襲いかかるが矢をかわしながらそう思った。常に高速で移動して様々な角度から攻撃する矢。それをかわすのは一苦労だし、あの早すぎる移動には、まともに狙いをつけられない。でも、彼女の弱点も気付いた。速くて連射出来るが矢の一本は威力が高くない。そして、あそこまで近づこうとしないのは、彼女は接近戦が苦手なのだろう。そう分析するとポケットから二つの指輪を取り出した。その指輪には赤色と青色の宝石が輝いている。それを指にはめてから近づく。神夜君は焦りの表情を浮かべて、弓矢を射る。
「発動《Action》!!」
『Explosion!』
爆発の魔法で風の矢を吹き飛ばすそして、
「発動《Action》!」
『Copy!』
その言葉にもう一人の自分を作り突進する。驚きの表情を浮かべて矢を射る。それが分身体に当たり消滅する。
よし!この距離ならかわせない!そう思った瞬間、お腹に何かが突き刺さりその衝撃に私の意識は刈り取られた。