第8話 親友の裏の姿
今回はいつもより早く更新することが出来ました!
では、本文どうぞ。
二人は疾登に記憶喪失になっているということ話した。やはり、ショックを受けたのか、あれから元気がなくなった。
「疾登、大丈夫だって。そんなに落ち込むな。疾登らしくないぞ」
「そうだよ、疾兄。ほら、笑顔、笑顔」
そう言って花輪は疾登の頬をつまんだ。
「そうだよな。俺らしくないよな。ちょっと、そこら辺ブラブラしてくる。」
「そっか。じゃあ、俺らも行くよ」
すると、疾登は首を振って言った。
「いいよ、ちょっと、1人になりたいんだ」
「そっか。じゃあ、気を付けろよ。」
「また、事故とか遭わないでよ。」
花輪が心配そうに言った。
「大丈夫だって、ちゃんと車見て歩くから、って何か俺、小学生みたいだな」
そう言ってにっこり笑って家を出て行った。その笑顔が何となく可愛そうに見えた。
「疾兄、本当に大丈夫かな?」
「ちょっと、心配だな」
それから、部屋は静まり返った。
疾登は、川の上にある橋の上を歩いていた。すると、突然背後から声をかけられた。
「おー疾登!久しぶり!」
どこかで、見たような顔・・・思い出せない。思い出そうとすると・・・頭が・・・
「覚えてるか?疾登。俺だよ、小村和人だよ。ほら、小学校でずっと一緒に遊んだじゃん!」
疾登は頭を抱えて首を振った。
「疾登。本当に覚えてないのかよ」
疾登は小さく頷いた。
「じゃ、じゃあ、小学校で一緒に遊んだこともか?」
「え?」
「おい、疾走。そんなことはないと思うけど、記憶喪失じゃ・・・ないよな」
その言葉にドキッとして思わず小村から目を逸らしてしまった。すると、急に彼は不気味に笑いながら言った。
「じゃあ、この際、ストレス発散でもしようかな!」
その瞬間、小村の顔が豹変した。
「俺はな、みんなの人気者で、先生にも可愛いがられてるお前が、嫌いだったんだよ!憎かったんだよ!」
突然、疾登の後頭部が激しい痛みに襲われた。無意識に呻き声が出る。
「お前の両親、殺されたんだろ。可愛そうにな。もう会えないんだろ」
頭の痛みがエスカレートしていく。
「いい気味だ!」
疾登は息を荒らげながら、その場に倒れこんだ。
「疾兄、遅いね」
もう、外は真っ暗になっている。2人はずっと時計を気にしている。
「そうだな。もう、疾登が家を出てから、2時間も経ってるし。心配だな」
すると、花輪が時計から目を放して言った。
「ねえ、疾兄探しに行こう」
「そうだな」
二人は複雑な気持ちで家を出た。
「疾登―!」
「疾登兄!何処にいるの!」
思い当るところを全て探したが、疾登はいなかった。
「何処行ったのかな、お兄、あれって・・・」
「ん?」
花輪が指を指している方を見ると、人が倒れていた。何処かで見たことがあるような・・・まさか!
「あれって、疾兄、だよね」
「ああ、多分。とにかく行こう、花輪」
二人は走って確認した。思った通り疾登だった。智は疾登を抱きかかえて声をかけた。花輪も必死に声をかけた。すると、疾登の目がうっすら開いた。
「おい、疾登。大丈夫か?」
「疾兄」
「ああ、大丈夫だ」
すると、疾登は、自分の力で起き上がって言った。
「あのさ、1つ聞きたい事があるんだけど」
智と花輪は「何?」と聞いた。
「俺たちの両親って・・・殺されたのか?」
その言葉に智はドキッっとした。花輪は、俯いてしまった。
「なんで・・・分かったんだ?」
「さっき、小学校の同級生だった小村和人に会ったんだ」
智は小村の顔を頭の中で浮かべた。小村は、疾登が小学生のころ、すごく仲が良かった。毎日のように遊んで、いつも疾登が泥だらけになって帰ってくるのを今でも覚えている。
「ああ、疾登と仲が良かった子だろ」
「うん、その子にばったり会って、話を聞いていたら俺のことが嫌いだったとか、お前の両親は殺されてたとか・・・」
「もう、いいよ。それ以上は言うな。花輪見てみろ」
智は疾登の言葉を遮って言った。智と疾登は同時に花輪を見た。すると、花輪は体を震わせて、俯いていた。
「ごめん。花輪」
疾登は花輪の背中にそっと手を置いて言った。花輪は顔を上げて笑って言った。
「いいよ、だって、しょうがないじゃん?」
疾登はもう1度謝って、智の方を向いて言った。
「あのさ・・・俺たちの両親を殺した犯人って捕まったのか?」
智は花輪に「話してやってくれ」という視線を向けた。意味が通じたのか、花輪は小さく頷いて言った。
「犯人はまだ捕まってないんだ。だから、私たちが小さいころに決めた約束を、今、果たすの。お父さんと、お母さんのためにも」
「約束?」
疾登が首を傾げながら聞いてきた。その質問には智が答えた。
「大人になったら、絶対犯人見つけてぶっ殺そうってな。3人だけで施設で約束したんだ。」
疾登は小さいため息をついてから、口を開いた。
「そうだな。絶対、犯人見つけような」
智は、頷いた。花輪は、手を口元に持って行って、温めながら言った。
「お兄、疾兄。もう帰ろうよ。急いでたから、上着着てないから寒いよ」
智と疾登は「そうだな」と言って3人は家に戻った。
次の日、疾登が犯人探しに行きたいと言っていたが、智はそれを拒否して言った。
「まだ、記憶があやふやだから、今日は休んでおけ。でも、その代り、無理をしない程度に思い出しておいてくれ」
その後、花輪に体を向けて言った。
「花輪。今日は一緒に行動しよう」
「どうしたの、急に」
花輪が首を傾げる。
「な、何となくだよ。ほら、最近、不審者とか多いだろ。だから心配だなと思って」
智は花輪から視線を外して言った。少し照れてしまった自分が、気持ち悪いと思った。
「そっか。じゃあ、行こう」
二人は家を出たのだった。