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僕たちの約束  作者: 翔香
第1章 僕たちの約束
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第5話 計画を立てる時

「やっと外の空気吸える~!」




 そう言って疾登は、大きく深呼吸した。




「でも、良かった。たいしたことなくて」




 花輪は安心した顔で言った。智も声には出さなかったが良かったと心の中でつぶやいた。




「よし、二人とも。急いで家に帰って準備するぞ」




 そう言って三人は手をつないで走って帰った。



 三人家に帰ってすぐに、明日に備えて必要なものだけを箱に詰めて深い眠りについた。





 








 翌朝、三人は家の前に立っていた。智は静かに呟いた。




「この家ともお別れになるな」




 疾登と花輪は小さく頷いた。すると、急に疾登が言った。




「最後に記念写真撮ろうよ。いいだろ?兄ちゃん」




 智は頷いた。




「やった!よかったな、花輪」




 花輪はにっこり笑って大きく頷いた。智はちょうど佐名木さんがすぐ近くにいたので撮ってもらうように頼んだ。




「じゃあ、撮るぞ。ハイ、チーズ!」




 出来上がった後の写真を見ると、みんな無理して笑顔を作っていた。




「みんな、そろそろ行くぞ」



 佐名木さんが優しく声をかけてきた。三人はゆっくり立ち上がり、車に乗り込んだ。




 




 車の中では三人は一言もしゃべらなかった。施設に着いて車から降りると、佐名木さんが三人に向かって力強く言った。




「絶対犯人捕まえるからな!」



 疾登と花輪は下を向いたまま施設に入っていった。智は小さく頷いて二人の後を追った。






「野々神智くんと疾登くん、花輪ちゃんだよね?」



 施設の先生が三人の背の高さまで腰を下ろして言った。智は「はい」と言った。



「これからよろしくね。ここにいる皆と仲良くしてね」



「はい」



 そう言って三人は部屋の隅に座った。すると、一人の女の子が花輪に「一緒に遊ぼ!」と話しかけてきた。花輪は智を「遊んでいい?」という目で見つめている。



「行っておいで」



 そういうと花輪は嬉しそうにその女の子と手をつないで走って行った。続いて疾登も遊びに行った。なぜか智だけ誘われなかった。でも、智は一人のほうがいいのでその件はあまり気にしなかった。

 その間に家族みんなで仲良くしている映像が頭の中で浮かんでは消えていった。そうしているとまた、お父さんとお母さんを殺した犯人が許せなくなった。智は、疾登と花輪にある約束をしようと心の中で決心した。





 








 その日の夜。智は疾登と花輪を話があると言って施設の外に連れ出した。



「お兄、話って何?」



 花輪が不安げな顔をして聞いてきた。



「いいか?俺が今から言うことをよく聞いておけ」



 二人が小さく頷いた。



「大人になったら絶対、犯人見つけてぶっ殺す。約束だ。いいか?三人だけの約束だぞ」



 疾登と花輪は力強く頷いた。


















 智はアルバムをゆっくり閉じた。疾登は悲しそうな顔をして言った。




「亮太君と一回だけでもいいから、遊びたかったな・・・」



 亮太君は疾登が退院してから、ちょうど1ヶ月後に亡くなったと連絡があった。それを知った時、疾登が1日中ずっと泣いていたのを、今でもはっきり覚えている。葬式の時も、ずっと涙を流していた。

 この重苦しい空気の中一番に口を開いたのは、智だった。



「なあ。昔、三人でした約束覚えてるか?」



 疾登と花輪は、当たり前だというように頷いた。智はそっかと言って真剣な顔で言った。



「絶対、犯人見つけてぶっ殺そうな」



 二人は大きく頷いた。しかし、今から犯人探しに行くぞって言っても何の手がかりもない。頭を働かせていると、ある一つの結論にたどり着いた。



「疾登、花輪。今から警察署に行くぞ!」



 警察署とは、佐名木さんがいる国立警察署のことだ。二人はなんで?と首をかしげる。



「ほら、突っ立ってないで行くぞ!」



 智は二人の手を無理やり引っ張って警察署に向かった。










「佐名木さん」



 智は佐名木さなぎさんの背後から声をかけた。



「お!智くんじゃないか」



「どうも。」



 智は深く頭を下げた。



 佐名木さんとは、あの事件からずっとお世話になっている刑事さんの事だ。背は高めで、黒縁眼鏡をかけている。年は、53歳だと言っていた。



 智は、佐名木さんに問うた。



「あの、今日来たのには理由があって・・・」



「なんだ?」



 疾登と花輪も次の言葉を待っていた。



「昔、疾登が夢で見た犯人の似顔絵を描いている紙を、コピーすることはできますか?」



 昔、疾登が夢で犯人の姿を見た、と言っていたと佐名木さんに報告すると、佐名木さんは気にかかったらしく、疾登に言われた通りの似顔絵を描いたのだ。



「そんなめんどくさい事しなくても、俺がちゃんと覚えてるよ」



「三人で手分けして犯人を探すんだ。だから、コピーしないと俺と花輪には犯人の顔が分からないだろ」



 智がそう言うと、二人の目が点になった。佐名木さんも同じような顔をしている。



「だめ・・・かな?」



 智が三人に確認すると佐名木さんが言った。



「そ、それは危険だよ、智くん。そういうことは警察に任せていいんだよ」



「でも、まだ捕まってないじゃないですか!もう、耐えられないんですよ!」



「お兄!言いすぎだよ」



「兄貴!落ち着けって」



 二人が智の腕を掴んで言った。やっと自分が興奮していることに気付いた。智はすぐに佐名木さんに謝った。



「そうだよな。もう12年か・・・ごめんな、頼りにならなくて。ちょっと待ってろ、今コピーしてくるからな」



 そう言って佐名木さんは落ち込んだ顔でコピー機の向かった。智は言い過ぎたなと、いまさら後悔した。智はコピーした用紙を持った佐名木さんにもう一度謝った。



「いいよ、こっちこそごめんな。犯人捕まえることができなくて」



 智は首を振って深く頭を下げた。疾登と花輪も頭を下げていた。



「がんばってな。俺も頑張るから」



 佐名木さんは優しく言って智にコピーした犯人の似顔絵を渡して仕事に戻っていった。三人は礼を言って家に帰った。

今回は少し中途半端なところで終わってしまいました。

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