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僕たちの約束  作者: 翔香
第3章 真実
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第49話 明らかになる過去

最近、私スランプ状態です。

執筆がなかなか進みません。

でも、小説を書くことは止めませんよ(~o~)

――10月22日

受け渡しまで、あと3日――



 目を開けると、見覚えのない景色が目に映った。此処がどこなのか理解するのに、数秒要した。



「そっか。此処は家じゃないんだ・・・」



 ため息を吐き、ソファーから降り、部屋を出た。











「あ、おはよう。智くん」



 刑事課に顔を出すと、瀬良が優しく声を掛けてくれた。寝ていないのか、顔には疲れの色が出ていた。



「おはようございます。何かすみません。ご迷惑をお掛けしました」



 智は頭を下げた。



「全然いいんだよ。こちらの事は気にしなくてもいいんだから。あ、そういえば」



 瀬良は、思い出したような顔をし、デスクから何か出してきた。



「これ、見てごらん。智くんの家を調べさせてもらったら、重要な証拠が見つかったよ」



 智は驚きのあまり、目を大きく開いた。すぐに渡された用紙に目を落とした。



『部屋の廊下を調べた結果、犯人は靴下を履いておらず、足跡を採取することが出来た。調べたところ、高峰尚子の足跡だという事が判明した』



 その下に、高峰の足跡の写真が張り付けられていた。



「高峰・・・高峰が花輪と疾登を?」



 瀬良は頷き、デスクにもたれ掛った。



「高峰は、恐らく佐名木を連れ出し、花輪ちゃんと疾登くんまでも連れ去ったのだろう」



 瀬良は淡々と話した。



「ところで、気になることが1つあるのだが・・・」



 突然、神妙な顔つきになったので、智は少し戸惑った。



「何がですか?」



 そう訊くと、瀬良は1つ頷き、口を開いた。



「智くんは、小さい頃にご両親を殺されたんだよね。犯人はまだ捕まっていない」



 そこはあまり触れられたくなかったのだが、智はそうです、と答えた。



「私が思うには、その事件の犯人は高峰だと思うんだ」



 それを聞いて、智は眉間に皺を寄せた。



「それは、おかしいと思います。僕たちが小さかった頃、高峰の事なんて知らなかったのですから」



 瀬良は息を大きく吐き出し、ポケットに手を突っ込んだ。



「だが、智くんが知らなかったとしても、君のご両親が知っていたかもしれないだろう」



 そう言われてみれば、その様な気もしてきた。



「智くんのご両親は事件が起こる前、何か悩んでいる様子はなかったかい?」



 智は記憶を辿っていった。しかし、思い当ることは1つも無かった。



「いえ、その様なことはありませんでした」



 きっぱりと言った。



「そうか。ならいいんだ」



 智は、その言葉に何が深い意味が込められているのか気になったが、訊かないようにした。

瀬良はデスクから身を離し、軽く肩を回した後、こう言った。



「じゃあ、そろそろ打ち合わせでもしておこうか」










 智はソファーに座った。目の前には瀬良と田崎が並んで座っていた。



「受け渡しまであと3日だ。心の準備もいるだろうから、なるべく早く打ち合わせをしておいた方がいいと思ってな」



 智にとって、この方法は賛成していた。受け渡し前日に言われても、緊張して何も頭に入ってこないような気がしたからだ。



「じゃあ、これを見てくれ」



 瀬良から2枚の用紙を渡された。1枚は受け渡し場所の明石工場の設計図。2枚目は、受け渡しの手順が書かれてあった。



「明石工場は、自動車の部品、リアドアや、フロントドアなどを製造する工場だ。小さな工場だから、あまり大規模な自動車メーカとは取引されていないんだ」



 智はこの話を聞いた後、また頭痛に襲われた。呻くほどではないが、何か大事な事を忘れていると確信した。目を閉じ、深呼吸をすると、頭痛は治まった。



「じゃあ、まずは受け渡しをする場所だ。これは、犯人から指定されていないから、こちらが決めておいた方がいいだろう。設計図を見てくれ」



 智は設計図に目を落とした。



「受け渡し場所は、この赤い丸で囲まれた所で行う」



 瀬良は赤丸を指さした。そこは、製造場所で1番広い所だった。場所の名前は記されていないので、正式名所は分からない。



「受け渡し方法は、今の所、花輪ちゃん、疾登くん、佐名木を返してもらってから金を渡す。まあ、犯人は必ず金を先に渡せ、と言うだろうがな。でも、なるべくそれは避けてもらいたい。どうしても駄目だったら金を先に渡す。とりあえずはこの方法で行こう。直前で変わるかもしれない」



 智は刑事ドラマと同じだな、と思った。



「あ、それと、智くんにはこちらからの連絡が聞こえるように盗聴器を付けてもらう。我々は現場には行かないという約束だからな」



「でも、近くで待機してもらっているんですよね?」



 念のため確認しておいた。



「ああ。何かあってからじゃ遅いからな」



 それを聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。



「まあ、大まかな事はこれだけだ。あとは盗聴器で我々が指令するから、それに従ってもらえばいいだけだ」



「え、そうなんですか?」



 もう少し細かな事まで言われると思っていたのだが、案外単純なものだった。



「これだけだ。あまりごちゃごちゃ言われても、いざ本番となるとすぐに忘れてしまうものだ。次何をするか考えている間に、下手したら殺られるかもしれないからな」



 その言葉で、智の緊張が倍増した。



――下手したら殺られる――



 この1言が胸に重く圧し掛かった。



「そんなに緊張しないほうがいい。こんなことを言うのは無責任だと思うが、気楽にいけばいい。さっきも言ったが、余計な心配をしてると、犯人の思い通りになるぞ」



 智は深く頷いた。その時、また頭痛が襲った。先ほどよりも激しい。智は頭を抱え、うずくまった。



「大丈夫か、智くん!」



 瀬良が智の顔を覗き込んだとき、また残像が出てきた。それを見た智は驚きと同時に、疑問が残った。



「智くん、大丈夫か?」



「僕、分かりました。前から明石工場っていう名前に引っかかってたんですよ。何処かで聞いたことがあるって。やっと答えが出ました」



 今までずっと黙っていた田崎が身を乗り出して訊いた。



「野々神さんと明石工場には、何か関係があるんですか?」



 智は深呼吸をして、戸惑いの表情を見せた。



「どうした?」



 瀬良は不思議そうな顔をする。

 智は1呼吸置いて、ため息交じりに言った。



「明石工場は・・・僕の親父が働いていた工場です」



 それを聞いた2人は、お互い顔を見合わせた。



「それは、本当かい?」



 瀬良が確認した。



「はい。でも、何故犯人はよりによって親父が働いていた工場を受け渡し場所として選んだのか、それが分

からなくて」



 智は俯き、目を閉じた。



「智くん」



 瀬良の声で、顔を上げた。



「正直、我々も戸惑っている。智くんのお父さん知り合い、会社仲間・・・その中に犯人がいるかもしれない。それとも、お父さんとは関係なくて、智くんのお母さんと関係がある人物なのか。全く見当がつかない。受け渡し当日まで情報を集めてみる。智くんのご両親と関わりを持っている人を調べて、そこから犯人を絞り出してみる」



 田崎も頷いた。



「すみません。今さらこんなことを・・・」



 智はまた俯いた。



「いや、むしろいい情報になったよ・・・ところで、智くん、君にも情報を提供してくれないか?分かる範囲だけでいいんだ」



 智は小さく頷いた。



「よし、じゃあ、今から調べよう。田崎、お前も手伝ってくれ」



 田崎は返事し、自分のデスクに向かった。



「智くん、こっちに来てくれるかな」



 瀬良に手招きされ、智は瀬良のデスクに案内された。



「まず、智くんのご両親の名前を教えてくれるかな」



 瀬良は、情報を書き込むためのアイコンを開いた。



「お父さんが真人、お母さんが紗由です」



 瀬良は慣れた手つきでキーボードを打つ。



「じゃあ、これからご両親の知人関係を教えてもらえるかな。知ってる限りで大丈夫だから」



 そう訊かれても、容易に答えられるものじゃなかった。お父さんの会社仲間の名前も憶えてないし、お母さんの会社仲間の名前も全く記憶にない。何しろ15年前の話だ。そんなに事細かく憶えているはずがない。とりあえず、お父さんとお母さんの親友の名前は憶えている。祖父母の名前も言おうと思ったが、あまり関係が無いような気がして、言うのを止めた。



「お父さんの親友、大伴栄太さんと、お母さんの親友、坂木友恵さんくらいしか憶えてないです。会社仲間の名前も全然思い出せません」



 瀬良はそうか、と呟いて、ため息を吐いた。



「そんな昔の事は憶えてないよな。すまん、無理をさせたな」



 智は首を振った。



「こちらこそすみません、お役に立てなくて」



 智は瀬良に頭を下げた。



「いや、いいんだよ。調べればいくらでも出てくるからな。少々時間はかかるが、田崎にも手伝ってもらっている事だし」



 智はこの言葉から、瀬良が言いたいことを読み取った。



「僕も、手伝います」



 この言葉が欲しかったのか、瀬良は朗らかに笑った。



「ありがとう、助かるよ」



 智も笑顔を作った。



「それじゃあ、今から会いに行くか」



 誰に会いに行くかは、検討がついていた。



「はい」



 2人は、刑事課を後にした。

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