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僕たちの約束  作者: 翔香
第3章 真実
42/55

第42話 激痛

最近、何もやる気が起こらない・・・

夏バテですかねぇ(-"-)

 車に乗ってから30分程経ったとき、ずっと無言だった一輝が声を出した。



「あそこや」



 一輝は、顎で前方の建物を示した。それを見て、智は無意識に笑みが出た。



「懐かしいやろ」



 そこは、智と一輝が中学生だった頃、毎日のように部活帰りで通っていたファミレスだった。



「よく行ってたな」



 一輝は適当に車を止め、車に鍵をかけた。



「昔と変わってへんな」



 一輝は店に入って行った。智も後に続いた。



「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」



 入ってすぐに、女性のウェイトレスが来た。



「2人です」



 一輝は指で2を作った。



「かしこまりました。こちらへどうぞ」



 2人は、喫煙席に案内されたが、どちらとも今は煙草を吸っていないので、禁煙席に移動した。一輝は、ヤンキー時代吸っていたが、サラリーマンになってから体を気にし始めたのか、禁煙したのだ。



「何頼む?やっぱり、昔食べてたステーキハンバーグにする?」



 昔、ファミレスに来たら、2人とも絶対ステーキハンバーグを食べていたのだ。部活帰りだったので丁度いい量だった。



「そうしよか」



 一輝は注文ボタンを押した。



「よう、このボタン何回も押したよな」



「すっごく怒られたの、今でも覚えてるよ」



 店長に、1時間くらい怒声を浴びていた。全然反省していなかったが。

 そこで、先ほど案内してもらったウェイトレスがやって来た。



「ご注文をどうぞ」



 智は、ステーキハンバーグ2つ、と言った。



「かしこまりました。では、ごゆっくり」



 ウェイトレスは、営業スマイルでその場を去って行った。



「最近どうなん」



 一輝は、おしぼりで手を拭きながら智に訊いた。



「どうって、まあ頑張ってるよ」



「嘘ばっかり。ホンマは無理してるんとちゃうん」



 智は、一輝に心を読まれたので少し動揺した。



「何かあったんだったら。話聞くで」



 一輝は優しい声で言った。



「話すと長くなるけど、いい?」



 一輝はゆっくり頷いた。



「あのさ、この前、俺と疾登と花輪でツアーに行ったんだ」



 そこから、智は声を潜めて続けた。



「それで、ツアーの案内人の高峰って奴が次々に人殺していくんだよ」



「案内人が旅行客を殺したんか!?」



 一輝の声が大きかったので、智は慌てて一輝の口を塞いだ。一輝は、片手を挙げてごめん、と謝った。



「そうなんだ」



 それから、ツアーで行ったゲームの話や罰ゲームの話を、全て一輝に話した。



「酷いな、それ」



 そこで、さっきとは別のウェイトレスが、2人分のステーキハンバーグを運んできた。



「美味しそうやな」



「食べれるかなぁ」



 智は、量を見て感じたことを口に出した。



「まあ、無理せん方がええよ。残ったら俺が食べるわ」



 一輝は、もう食べ始めていた。



「ありがとう」



 智も、1口目を口に運んだ。











「あ~。もう、俺無理だわ」



 智は、ステーキ半分を残してため息を吐いた。



「ホンマか。なら、俺が食べるで」



 一輝は、もう完食していた。



「うん。お前、よくこんなに食べられるな。肥満になるぞ」



「俺は肥満にならん体型なんや」



「お前の体、どうなってんだよ・・・」



 智はそう呟いて、水を1口飲んだ。



「智、他に気になる出来事とかあったんか?」



 一輝はステーキを口に運んだ。



「ああ。一輝、佐名木さんって知ってるだろ?」



「知ってるで。ずっと犯人捜してくれてはる警察官やろ?」



 智は頷いて、話を続けた。



「佐名木さん、行方不明になったんだ」



 それを聞いて、一輝はステーキを喉に詰まらせ、激しく咳き込んだ。



「大丈夫か?」



 智は、水を一輝に差し出した。一輝はそれを一気に飲み、深呼吸をした。



「ありがとう。ホンマ、死ぬかと思ったわ。っていうか佐名木さん、何で行方不明になってしもうたん?」



「それが、俺にも分からないんだ。警察も、何の情報も掴めてない。俺、思うんだけど、何で犯人は俺や疾走、花輪じゃなくて、あえて佐名木さんを選んだのか。俺たちを連れ去った方が犯人にとっては都合がいいはずだ」



「確かにな。何か奇妙やな。ちょっと、俺が今思ったこと言ってええか?」



 智は頷いた。



「その、佐名木さんを連れ去った犯人って、智の両親を殺した犯人やと思うんや。まあ、俺の勘やけどな」



 智は、そうかもしれないと思った。今後、佐名木さんを人質にして、俺たちの前に現れるかもしれない。



「一輝、鋭い所つくな。サラリーマンなんか辞めて、警察官になればいいのに」



「今からって、ちょっと遅すぎちゃうの?」



 一輝は小さく笑った。



「ごちそうさま」



「食べ終わったのか?」



「完食」



 一輝は、何も乗っていない皿を智に見せた。



「すごいな」



 智は感心した。



「じゃあ、そろそろ出よか」



 一輝は腹を叩いて、会計所に行った。



「俺が出すよ」



 智は、財布から2000円を出そうとしたが、一輝はそれを止めた。



「大丈夫、俺が誘ったんやからな」



 一輝は自分の財布から2000円出し、200円のお釣りとレシートをもらった。



 2人は店を出て、車に向かった。



「ありがとな。おごってくれて」



 車に乗り、シートベルトを着けた。



「大丈夫やって。じゃあ、次行こか」



「次があるのか?」



 一輝はその質問に返事をせず、車を走らせた。











「智、着いたで」



 智はその声で、ゆっくり目を開けた。いつの間にか眠っていたらしい。



「外、出ようや」



 智は、車から降りて景色を見た。最初、雲で月が隠れたせいで暗くて何も見えなかったが、段々目が慣れてきて、やっと目の前に映っているものが海だと分かった。



「この景色、何回見ても落ち着くわ」



 一輝は、砂浜に寝転がった。智も、一輝の隣に腰を下ろした。



 この海もファミレスと同じで、2人が中学生だった頃、ファミレスに寄った後見ていた、思い出深い海なのだ。



「懐かしいな」



 月を覆っていた雲が流れて月の光が海を照らし、今より美しい景色が目に映った。



「綺麗やな」



 一輝は体を起こした。智は、黙って頷いた。



「この景色、昔見たことあるかも」



 智は呟いた。



「何言うとんねん。俺らが中学生の頃見たやん」



「いや、中学生になる前。もっと前に見た気がするんだ」



 そこで、やっと思い出した。両親が殺される前に1度来たことがあるのだ。家族5人で海岸を走り回ったのを覚えている。

 智の目から、涙が溢れた。泣き顔を見られないように、一輝に背を向けた。



「智、我慢せんでええんよ。泣きたかったら、思いっきり泣けばええんやから」



 一輝はそっと声をかけた。



 智は、その言葉で安心感に包まれ、周りを気にせず思いっきり泣いた。一輝は何も言わず、ずっと智の隣に座っていた。











 智の涙が治まったのは、あれから1時間程経ったころだった。泣きすぎて声が、がらがらだった。



「一輝、ごめんな」



 智は、小さく頭を下げた。



「何で謝るん。俺は大丈夫やから」



 そう言って、智の肩に優しく手を置いた。



「花輪ちゃんや、疾登くんは元気か?」



 一輝は少し間ができた後、話題を出した。



「うん。花輪は結婚するし」



「結婚か!花輪ちゃんも立派になったな。結婚式、呼んでや」



 一輝は自分の顔を指さした。



「どうしようかな」



「えー!ちょっとくらいええやん」



「嘘だよ。呼ぶよ」



 その言葉で、一輝は満面の笑みになった。



「一輝は?会社、上手くやれてる?」



 一輝は、また寝転がった。



「まあまあやな。飲み会とか誘われるんやけど、面倒くさいから行かへんし」



「それは、ダメだろ。社員との付き合いは大事にしないと、後で酷い目に遭うぞ」



 智も、一輝の隣に寝転がった。



「そうなんか。じゃあ、これからは面倒くさくても、飲み会行くことにするわ」



 一輝はため息を吐いた。



「こうやって見ると星、綺麗だな」



 今は雲1つ無いので、綺麗に夜空を見ることが出来た。



「うん。こんなにじっくり見たの、久しぶりやわ」



 一輝は、昔を思い出す様に言った。



 その時、また智の頭に激痛が走った。これまでに経験したことのない激しい痛みだった。思わず、呻き声が出てしまう。



「智、どないしたんや!大丈夫か!」



 一輝が、必死に声をかけてくれる。だが、その声もだんだん小さくなっていく。



「智!しっかりせえ!」



 次第に視界が歪んでいき、何も見えなくなった。



 意識がなくなる前に、残像が見えた。誰かが刃物を持って、両親に詰め寄っている所だった。犯人は何か怒鳴っている様に見えたが、何を言っているのかは分からなかった。両親は、泣き喚いていた。

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