第40話 久々に
もう40話ですね。
びっくりしましたよ(;O;)
「2人とも、話がある」
智は、2人をソファーに座らせた。
「どうしたの?」
花輪は興味がある様子だ。
「実はな、佐名木さんが行方不明になったそうなんだ」
「は?何でだよ。急に」
「きっと、私のせいだ・・・」
花輪は、頭を抱えた。
「何で?花輪のせいなんかじゃないよ」
花輪は首を振った。
「だって、私の罰ゲーム『大切な人を失う』だったでしょ?だから・・・」
「あ・・・」
智と疾登は同時に声を出した。
「花輪、探せばきっと見つかるよ。大丈夫。佐名木さんは、俺たちを見捨てたりなんかしない」
智は、花輪の肩に優しく手を置いた。
「そうだよね」
花輪は、安心したようだ。
「昼ごはん食べに行こうぜ。俺、緊張してお腹空いちゃった」
疾登が雰囲気を変えるように、少し大げさに言った。
3人は、近くのうどん屋で昼食を済ませた。ついでに、夜ご飯のおかずもスーパーで済ませた。
「いやぁ。夜ご飯、花輪と2人きりで食べるのは気まずいな」
「何だよ。俺がいても、大して話さないじゃないか」
智は携帯をいじりながら、ぶっきらぼうに言った。
「まあ、そうだけど。でも、居るだけでも違うよな」
疾登は、花輪を見る。
「うん。疾兄と2人きりなんて絶対楽しくないよ」
花輪はサラリと言った。
「そんな嫌?俺と2人きりになるのが」
「自分から話切り出したくせに」
智は、ボソッと呟いた。
「何か言った?」
疾登は、智の隣にドカッと座った。
「何でもねーよ」
智は、疾登の肩をポンと叩いて自分の部屋に入った。
「お兄、最近自分の部屋にこもる時間が多くなったね」
花輪は心配そうに言った。
「確かに・・・」
2人は、しばらく智が入って行った部屋を見つめていた。
智が部屋に入った理由は、また激しい頭痛がしたからだ。智はドアを閉め、そのまま壁にもたれ掛った。
「うっ」
あまりの痛さに、頭を抱えた。
その時、また残像が出てきた。それは、100万円札の束が3つほど机の上に置いてある映像だった。
「何なんだろう。この残像・・・」
そう呟いたとき、ピタッと頭痛が止まった。
智は暗闇の中ベットに転がり、携帯電話のアドレス帳から、『越本裕貴』と探し出して、連絡を入れてみた。
2コール程して、繋がった。
「はい」
最近会ってないからか、声が変わったような気がする。でも、10年近くは会っていなかったので、当たり前だと思うが。
「裕貴か?俺だ。智だ」
「おお、智か。どうした?今まで全然連絡しなかったのに」
まずは、憶えてくれて良かったと思った。
「いや、ちょっと頼みごとがあって・・・」
「何?」
裕貴は何かの作業をしているのか、時々雑音が入る。
「あのさ、今も新聞の切り抜きってしてる?」
「ああ、今やってるよ」
雑音は、ハサミで新聞を切っている音だったのだ。
「それ、見せてもらえないかな。ちょっとある事件の情報が欲しいんだけど」
ある事件とは、高峰が起こした『大阪連続殺人事件』のことだ。
「全然構わないよ。いつでもどうぞ」
すんなり了承してくれた。
「じゃあ、明日の朝10時くらいでもいいか?」
今日は、これから一輝と会う約束をしているので、明日に回した。
「うん。俺の家、分かるか?」
智は、頭の中で地図を描いた。高校生の頃、10回は遊びに行っていたので、なんとなく道のりは分かる。
「うん。大体は」
「そうか。じゃあ待ってる」
「ありがとな。また明日」
智は、通話を切った。
時計を見ると、4時20分だった。
智は、少し仮眠をとることにした。
智は、重たい瞼を開けた。時計に目を移した。6時30分だった。携帯を手に取り、画面を見ると、メールが1件届いていた。一輝からだった。内容は、『8時ちょっと過ぎるかもしれない』ということだった。 一輝の『ちょっと』は、大体30分か40分くらいに考えた方がいい。昔、遊ぶ約束をしていて、「ちょっと遅れる」と言ったのだが、1時間くらい待たされた記憶がある。
智は、一輝に会う前に会っておきたい人がいたので、その人に会いに行ってから8時半くらいに待ち合わせ場所に向かえばいいと、頭の中で計画を立てた。
「おお、兄貴起きたのか」
リビングに入ると、疾登と花輪は夕食を作っていた。
「うん。俺、もうそろそろ行くわ」
智は、手に持っていた携帯をポケットにしまった。
「え、もう行くの?」
花輪が驚いたように言う。
「ちょっと寄る所があるからさ」
「何処に?」
「国立警察署。佐名木さんが行方不明になった事を連絡してくれた田崎さんに、ちょっと聞きたいことがあるから」
そう言って、智は玄関へ向かった。
智は2人に見送られ、家を後にした。
「お兄、私たちに隠し事してるのかなぁ」
花輪が隣でボソッと呟いた。
「どういう事だよ」
疾登は、花輪の横顔を見た。
「いや、何となくね」
花輪は微笑んで、台所へ戻った。疾登は、しばらく玄関に立ちつくしていた。
智は、徒歩で国立警察暑へ向かっていた。家を少し離れた所で、背後に気配を感じた。1度立ち止まって振り向いたが、誰もいなかった。そこから先は、気配を感じなかった。
家を出て10分程で国立警察署に着いた。署の前に立っている警察官に頭を下げ、中に入った。智のすぐ傍を通りかかった20代後半ぐらいの男性警察官に声をかけた。
「あの、田崎さんはいらっしゃいますか?」
「田崎さんなら、刑事課にいらっしゃいますよ。ご案内しましょうか」
智は、ありがとうございますと頭を下げ、警察官について行った。
刑事課には、広い部屋に50人は軽く入っていた。多くの刑事が机に資料を置いて頭を抱えて座っていた。その中で、案内してくれた男性警察官が声を上げた。
「田崎さん、こちらの方がお呼びです」
あまりにも大きな声だったので一瞬、部屋が静寂に包まれた。
しばらくすると、奥から30代前半くらいの男性が出てきた。髪は多少乱れていて、険悪な表情をしている。
「あの方が田崎さんです」
そう言い残して、男性警察官は何処かへ行ってしまった。智は礼を言った。
「あの、ご用件は」
電話で話した声と、一緒だった。この人が田崎だ。低くて、根太い声だ。
「先ほど連絡をもらった、野々神智です」
すると、険悪な表情から、柔らかい笑みに変わった。
「そうでしたか。此処では話しにくいので、屋上に行きましょうか」
智は田崎の後を追いかけた。
今回は少し短めでしたね。
すみません。