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僕たちの約束  作者: 翔香
第1章 僕たちの約束
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第4話 疾登の悲劇

 みんなが少し落ち着いた後に、智たちの家で調査をしている佐名木さんに真実を告げた、と言った。




「そうか。大変だったろ」




 そう言って智の頭を優しくなでた。その動作はお父さんとお母さんもやってくれた。それを思い出したら、また涙が出てきた。




「泣くなよ。お兄ちゃんだろ」




 智は小さく頷いて涙を拭った。




「よし、それでこそお兄ちゃんだ。あ、それと明後日から施設に行くことになったんだ」




「施設・・・ですか?」




「そうだ。必要最低限の物だけ持っていくんだぞ。」




「分かりました」




 智は急いでおばあちゃんの家に戻った。








「花輪、疾登」



 二人は同時に智の方を向いた。花輪はさっき泣いていた顔とは正反対で、ニコッと笑って興味深そうに聞いてきた。多分無理をしているのだろう。みんなを元気にさせるために。疾登は、俯いたままだった。




「明後日から施設に行くことになった」




 花輪が首を傾ける。




「お父さんやお母さんがいない人が行くところだよ」




 すると、急に花輪の顔から笑顔が消えた。




「ごめん。言い方が悪かったな」




「いいよ。もう、どうにもならないんでしょ」




 そう言って俯いてしまった。




「ごめんな。花輪」




 花輪は小さく首を振った。




「じゃあ、もう準備するか。ほら疾登。何かしゃべれよ」




 疾登はまだ俯いていた。そこで、やっと疾登の異変に気が付いた。




「大丈夫か?顔色悪いぞ」




 疾登の息が少し荒い。次の瞬間、急に疾登が倒れた。




「お、おい!疾登!しっかりしろ!」




 花輪も慌てて疾登のそばに来て声をかけた。智は急いで救急車を呼んだ。










 智と花輪は病室で疾登が目を覚ますのを待っていた。

 


 疾登の手を握りしめたまま1時間程経った時、突然疾登がうなりはじめた。しばらくして、疾登は目を開けた。




「疾登。大丈夫か?ずいぶん苦しそうだったけど」




 すると、疾登は智の腕を掴んで言った。




「兄ちゃん!俺、さっきの夢で見たんだ!」




 疾登は興奮して、智の腕を掴んだ。




「と、とりあえず落ち着け。疾登」




 疾登は、大きな深呼吸をした。落ち着いたところで「何を見たんだ?」と聞いた。




「俺、父ちゃんと母ちゃんが殺されている夢を見てたんだ。そうしたら、犯人の顔が見えたんだ」




 夢なんだからそれが本当の犯人とは限らない。それに、実在するかもわからない。しかし、一応、犯人の特徴だけ聞いた。




「特徴は、ちょっと太ってて背が高くて、髪は坊主でマスクをかぶってた。とても悪そうな顔つきをしてんだ」




 意外とはっきりとした特徴だった。もうちょっと聞きたいことがあったが、疾登はまだ熱があるので明日詳しく聞くことにした。




「疾登。もう今日は休んだ方がいい。続きは明日聞くよ」




「分かった」




 そういって疾登はベットに横たわった。智と花輪は静かに病室を出た。





 








 翌日。智と花輪は疾登がいる病院に向かった。病室の扉を開けて中に入った。疾登は窓の外をじっと見ていた。




「疾登。おはよう」




 智は優しく声をかけた。




「ああ。おはよう。来てくれたんだな」




 そういって疾登はにっこり微笑んだ。




「おう。それで昨日の話の続きを聞きたいんだけど・・・」




 そう言うと疾登は真剣な顔になって言った。




「分かった。ゲホッ」




 疾登が急に吐血した。智はびっくりして疾登の背中をさすりながら言った。




「大丈夫か!今、先生呼ぶから!花輪!そこのボタン押してくれ!」




 花輪が急いで緊急時のボタンを押そうとした時、疾登が急に笑い出した。智と花輪は、訳が分からずただ口を開けたまま突っ立っていた。




「まんまとひっかかったね。二人とも」




 智は首を傾げながら言った。




「どうゆうことだよ?」




「ドッキリだよ!」




 その言葉でやっと意味が分かった。疾登は、智と花輪をだましたということが。




「お、お前!よくもだましたな!」




 智は疾登を脅すように言った。花輪も続けて言った。




「そうだよ疾兄!びっくりしたじゃん!」




「ごめん、ごめん。でも、俺の演技上手かっただろ?」




 全然反省してない疾登を見て、怒りを通り越して呆れた。




「疾登。それどこに売ってんだよ」




 智は疾登に聞いた。少し興味がわいたからだ。疾登は隣のベットでゲームをしている男の子に、指をさして言った。




「亮太君がくれたんだよ。昨日友達になった」




 智は亮太君を見た。すると、亮太君は微笑んで頭を下げた。疾登は満面の笑みを浮かべて「大成功だな」と嬉しそうに言った。亮太君も笑って「そうだな。」と言った。




「そうだ!疾登。今日、熱は測ったか?」




 智は思い出したように言った。疾登は「測ったよ。熱なかった。」と言った。智は安心して言った。




「そうか。良かった。じゃあ、今日退院できるな」




 疾登は笑って「良かった」と言った。反対に、亮太君はさびしそうな顔をしていた。それに気が付いた疾登は優しくこう言った。




「連絡先を交換しよう。そうしたらお互いの声が聞けるだろ」




 それを聞いた亮太君は早速自分の携帯番号を紙に書いて疾登に渡した。疾走も自分の携帯番号を紙に書いて渡した。そして、疾登は「退院したら一緒に遊ぼうな。」と言った。亮太君は大きく頷いた。しかし、その後、亮太君が一瞬悲しい顔をしたように見えたのだが、気のせいだろうか。




「よし、じゃあ帰る準備しよう」




 智はそう言うと疾登は準備に取り掛かった。亮太君も手伝ってくれた。

 準備が終わり、疾登は亮太君に声をかけた。



「絶対、退院したら遊ぼうな。また連絡するから。」

 


 智と花輪は亮太君に頭を下げて、病室を出て行った。

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