第3話 真実を告げるとき
「あ、お兄!どこ行ってたの?」
二人は仲良く座って待っていた。
「ちょっとな」
力なくそう言うと花輪がどうしたの?と顔を覗き込んできた。智は言うタイミングはここしかないと思い、二人の目の高さまでしゃがんで言った。
「お父さんとお母さんが・・・病気で倒れたんだ」
「え・・・」
「父ちゃんと母ちゃん・・・無事なんだよな?」
その言葉を聞いてまた涙がにじみ出てきた。
「兄ちゃん!何とか言えよ!」
「・・・ああ。無事だ」
「そっか。ごめん。急に怒鳴って」
智はいいよと優しく微笑んだ。すると、花輪が智の倍の笑顔で言った。
「じゃあ、今からお父さんとお母さんの病院に行こうよ!」
「それは・・・だめだ」
花輪は何でというように首をかしげる。
「そ、それは・・・あれだよ。どこの病院にいるのか分からないんだ」
そう言うと、花輪は俯いてしまった。
「それで今日は家に入れるの?智兄」
「ああ、今日は無理っぽいからおばあちゃんの家に泊めてもらおう」
幸いなことにおばあちゃん家が近かったのでその日はおばあちゃんの家で一夜を過ごした。
「お兄!疾兄!起きて!」
智はうっすら目を開けた。ここはどこだ?あ、そうだ。おばあちゃんの家に泊まってるんだった。
「ああ、おはよう」
もう8時を回っていた。疾登はもうちょっと寝かせろ、と言って全然体を起こさない。
「ねえ。お兄、疾兄。一緒に遊ぼ!」
今日は土曜日なので、学校は休みだ。いいよ、と言おうとした時、部屋におばあちゃんが入ってきた。
「おはよう。さあみんな、朝ご飯食べよ。お腹すいただろう」
おばあちゃんは優しく言ってにこっと笑ったが、自分の子が殺されたのが辛かったのだろう。少し無理して笑っていた。
「うん!お腹すいた!お兄、疾兄、朝ご飯食べよ!」
智はうんと言って頷くと疾登を無理やり起こした。
「いただきまーす」
そう言って朝ご飯にかぶりついた。花輪は遊ぶことを忘れたようだ。
おばあちゃんの作った朝ご飯はとてもおいしかった。朝ご飯が終わって、僕は二人を部屋に呼んだ。真実を話すためだ。
「お兄、どうしたの?難しい顔して」
花輪が心配そうな顔をして言った。疾登も、花輪と同じ表情で智を見ている。
「・・・昨日さ、お父さんとお母さんが倒れたって言ったよな」
「そうだけど、それがどうしたんだよ」
疾登が聞いてきた。智は申し訳なさそうな顔をして言った。
「・・・実は、あの話・・・全部嘘だったんだ。ごめん・・・」
智は、涙を流しながら告げた。
「じゃあ父ちゃんと母ちゃんは・・・」
「お父さんとお母さんは・・・殺されたんだ」
「そんな・・・嘘だろ・・・」
疾登はその場に崩れ落ちた。花輪はまだ理解ができてないのか、突っ立っている。そんな花輪に、智は優しく話しかけた。
「花輪。もう、お父さんとお母さんはいないんだ」
語尾が震えたのが分かった。やっと状況が分かったのか、花輪は急に泣き出した。
「そんなのいやだよ!お兄!お父さんとお母さんに会いたいよ!」
智は首を左右に振った。目から次々と涙が零れ落ちた。
足音が聞こえたが部屋には入ってこなかった。おばあちゃんの足音だった。気を使ってそっとしておいてくれたのだろう。
三人はそのまましばらく泣き続けた。
ここら辺の話は、暗くなってしまうかもしれませんねぇ。
でも、頑張って笑いを入れていこうと思ってます!